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第二部までこちらで公開しておりました『春は遠き夢の果てに』、最終章の『秋月夜』篇をアップ…
第三部 秋月夜 一 鮮やかなコバルトブルーの蒼穹が広がっている。樹々の…
一(承前) 心が決まってからは早かった。 まず、家の相続権を持つ、冨男伯父…
二 「ちょっ、ちょっと待って下さい! いきなりそんな事言われても……」 「うち…
二(承前) 簡単な昼食の後片付けを終えて、上がり框(かまち)から中央に囲炉裏…
三 縁側に腰掛けて、庭をぼんやり眺めている。 ここの所色々あったせいか、す…
三(承前) 「いやあ、めっちゃええとこですやん! こら流行りますよ!」開口一番、周囲を見渡しながら、信吾はそう言う。 「でしょ? めちゃ良いとこなの。場所、すぐ分かりました?」 「はい、ちょっと高台なんですぐに。おお、兄きも居てたんかいな。久し振り」 「おお」健吾は、ちょっと顔を上げて見せただけで、そのまま作業を続ける。外では愛想が良いのに、照れがあるのか身内にはつっけんどんなのが面白い。 「助かってるのよ〜、お兄さん居てくれて。畑と庭の手入れから、家の補修や優希
四 家に帰ると、座敷わらしが座っていた。 「ひっ」と叫ぶと一旦外に出て、壁に…
四(承前) 「お、お客さんか」裏口から入ってきた健吾が、いつものように「ええと…
五 エンジ色のスズキに幼児たちを乗せて、山道を走っている。 引っ越しに合わ…
五(承前) 「そうかあ、一人で行ってしもたんやね……」 伊都子と名乗ったふく…
六 この家で暮らしていると、時折、静枝を訪ねての来客がある。関係の深い浅いに…
六(承前) 仏前に向かって端座し、その男性は、かなり長い間手を合わせ、瞑目し…
七 そのままベランダはアキラに任せる次第になり、完成するまでしばらくの間、母屋の方に滞在してもらうことになった。 ちょっとした事情でしばらく大工業は休止していたのだが、一念発起してまた小さい工務店を始めることになっている。肩慣らしにはちょうど良いからぜひやらせて欲しいと、アキラは笑顔を見せた。 彼はまず、道具の手入れから始めた。裏の物置に置きっ放しになっていた祖父の工具を見てもらうと、「うん、良い道具だ」と一言つぶやき、そのままほとんど丸半日かけて、工具の一