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中高年は山野をめざす①
趣味の石像(石仏という呼び方が好きだか、仏教の像ばかりとは限らないのでこの表記とする)を検索していて、山中に巨大な寝釈迦像があるのを知ったのがきっかけだった。
3年前の記事でも触れているが、あれからまだメンタルの調子が悪い。さらに悪化している。更年期もあるし、ユングの中年の危機、サブカル40代メンタルを病むも多分ある。
かかりつけだった心療内科からは大きな病院を紹介され、しばらく通院し、薬や生活環境の改善により一時は回復したものの、ふとしたきっかけでまたぶり返し、一日何もできずうずくまる日々が続いた。
そんな中、昼間からお釈迦さまのように横たわりながらネットを検索していると、群馬県内のみどり市(旧勢多東)の袈裟丸山山中にその像があるという。
「これは呼ばれている!」と思ったものの、まず場所が遠すぎて(片道50キロ!ほぼ栃木)メンタルが充分でないまま車の長時間運転が怖かったのと、果たしてそんな奥深い山を登れるのかという心身の不安さがあったためしばらく気持ちを温めることに。
生活リズムの改善等により少しずつ身体を動かし、運転リハビリもし、現地に赴いたのは10月中旬のことだった。
紅葉にはまだちょっと早い中、車をいつも以上にゆっくりと走らせ、赤城南面の廃病院跡地はどこだったろうかなどと考えつつ、山あいの道を延々走る。
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有名なオールド自動販売器の丸美屋、今年亡くなった星野富弘さんの美術館、草木湖を越え、林道に入る。しかしネットで示されていた塔ノ沢登山口駐車場に向かう途中、土砂により道が埋まっていた。
幸先をくじかれたものの、後続車が来ないことを祈りながら車を路肩ギリギリに停め、そこからなので食えない泥で埋まった道、流れる水を乗り越えてとりあえず登山口を目指して歩く。
比較的軽い気持ちで来てしまったため、大きめのサコッシュが山道を歩くたびに揺れて身体にぶつかる。
坂道のカーブをいくつか越え、もともと車でたどり着くはずだった駐車場に着いた時には既にクタクタになっていた。
当然だが先を見上げればひたすら登り坂。すでに負け戦状態だったがそれでも少し登り、道をふさいでいる大きな倒木に腰掛けて思う。
「無理だ…」
山を舐めていた。そそくさと登ってきた道を下り、その場から車で退散する。
悔しくて悲しかったので、敗残兵一人で桐生市の動物園に寄ってレッサーパンダとペンギンを眺めた。
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かといって体力をつけるために筋トレを始めるというような殊勝な心がけは持ち合わせていないので、翌週、榛名山系の磨墨(するす)岩にある天狗様に願をかけようと、伊香保からいくつものカーブを過ぎ、走り屋たちの聖地・ヤセオネ峠駐車場に。
道路を渡って黒髪山神社の鳥居をくぐり、整備された山道を歩く。
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歩きながら、すれ違った人と挨拶しつつ、その人が持っていた登山用の杖(?)があればもっと楽に歩けるのかななどと思いながら、衰えた身体で息を切らし目的の岩のふもとに到着。
高さは約30メートルとのことである。
そういえば、昔から空間認識(把握)が苦手で、X軸もY軸も距離が分からない。
30メートルの高さと言われても「?」という感じで、子持山の屏風岩の高さも10メートルくらいと思ったら60メートルあるらしいし、身近なことで言えば運転時の車間距離もよく分からない。
検索するとDで終わるアルファベットの人の特徴としてよく見られるそうで、子どもの頃から運動が全般に苦手だったり、物を見て絵を描くのも苦手、字も上手に書けない等々、あれこれ当てはまるのだが、幸い道に迷わないし地図も読めるので山を歩くには困らない気はする。
で、岩を踏みしめ登っていき、最後に頂上へは金属のハシゴを上がる。
岩のてっぺんの開けた空間に出ると、見晴らしが良く榛名富士も綺麗に見える。
「寝釈迦が見られますように」とお願いしようとしていた天狗様は割れて、頭が無くなっていた!
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