もしもこの世にお金がなかったら?
〜地球村出版・長島龍人著・『お金のいらない国』を読んで〜
この本は一言で言うと、お金のいらない国があったとしたらどんな世界になるかを教えてくれる本です。見知らぬ町に迷い込んだ主人公がある紳士と出会い、喫茶店でコーヒーを一緒に飲むところから物語が始まります。喫茶店を出た後に主人公が「あのう、コーヒー代、お金払いますから、値段教えて下さい」とその紳士に尋ねたところ、「おかね・・・、ねだん・・・、何ですかそれ?」と紳士。そこはどうやらお金のいらない国ということがわかっていきます。紳士との会話やそこでの生活を通して、主人公は今まで当たり前に生活していたお金のある世界を客観的に見ていきます。
その中でも私にとって特に印象的だった3つの考え方を紹介したいと思います。1つは、お金がないとそれに関わる業務や問題がなくなるということ。まず会計業務全般がなくなるのでレシートや領収書を保管して精算処理などしなくて済みますし、確定申告などもなくなり、それらをチェックする人も別の仕事に集中できます。金銭的トラブルもなくなり、貧困からくる犯罪もなくなり、遺産相続をめぐっての人間関係の問題や政治上の汚職問題など、様々な問題が一気になくなります。だからもっと大切な仕事や活動に時間を費やすことができるという考え方です。
2つ目は、お金を貯めることで貧富の差を生みだしている、という考え方。人が物やサービスの売買をして支払ったり受け取ったりしても、世界に流通しているお金の絶対量は変わりません。それはつまり、お金の奪い合いをしているに他ならない。お金を一人が貯め込むとその人のお金の量が増える一方で、その分お金をもてない人が出てくる。お金をたくさんもつ裕福な国があるということは、同時にお金をもてない貧しい国が必然的に生まれるという考え方です。
そして3つ目は、お金をつくるために稼ぐために、必ずしも必要とはいえないものを大量生産、大量消費、大量廃棄をしているということ。売買するときの支払う額と受け取る額は同額なので世界のお金は増えも減りもしない。けれど資源だけが、生産→消費→廃棄、といった一連の過程において減っていき、自分たちが住む地球を傷つけててしまっているという考え方です。
私がこの本を読んで感じたことは、お金は当たり前のように生活にあって、とても便利なものだと、良い面しか見れていなかったということです。持ち運びが容易で保存も容易。欲しいものがあれば簡単にお金を使って交換できたり、素晴らしいサービスも受けることができる、といった一つの角度でしかお金を見れてなかった。でも、『もしもこの世にお金がなかったら?』、と考えてみることで、今まで見えてなかった景色が見れた気がします。
例えば、多くの人にもっと感謝できると感じました。お金を払っているのだからそれ相応のサービスを受けれて当たり前、物を受け取って当たり前といった姿勢ではなく、もっと感謝できると思うのです。とても便利なものをつくって下さり、素晴らしいサービスを提供して下さり、「ありがとうございます」、っと、もっと心の底から言えるようになると思います。
それに、所有欲も手放すことができます。お金なしでいつでも好きなものを誰でも手に入れることができるなら、見栄のためや備蓄のために不要なものを買うこともなくなる。すると、必然的に企業は大量に物をつくることもなくなるので、資源を無駄に減らすこともなく環境にも良い。さらに、本当に必要もものだけが残り、自分が本当に必要なものがなんなのかも分かる。そして人は所有欲から解放されてより自由になれるように思う。お金のため、生活のため、将来のためと、やりたくないことでもやってしまっている、そんな状況から開放され、本当に自分がやりたいことができるようになると思うのです。
この本は、お金によって私たちの世界がいかに大きな影響を受けているか、架空の世界を通して考えさせてくれる本です。これからは、『もしもこの世にお金がなかったら?』と想像してみようと思います。きっと、いつもとは違った景色が目の前に映し出され、見えていなかったものが見えるようになりそうです。『どこかの無人島にお金のない国をつくってみたいっ』と思わせてくれるほど、おもしろく興味深い本でした。そんな、お金のいらない国をつくるのは大変そうですが、そのプロセスはとてもワクワクおもしろそうにも感じます。どうですか、あなたも一緒に、お金のない国、つくりませんか?
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