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創作 幼い恋愛 (悲恋)
彼と私はいつもふざけ合っていた。
廊下を走り、彼を追いかけ、やっと捕まえた時、彼の眼差しが私を見ていた。腕を掴まれていることに気付いてハッと手を隠した彼の戸惑っている姿を初めて見た。
私は、この人が好きだと思い、彼も私を好きだと感じた。
でも、互いに想いを口にすることは無かった。ただふざけ合っていることが楽しくて、その時はそれで良かった。
卒業して、お互いに別の道に進んで、縁が切れたと思っていた。
そんなある日、彼から電話があった。
好きなプロ野球の球団の話を彼はして、私はそれを聞いていた。
おかしなもので、彼の好きな球団を私は知らなかった。そして、
おかしなもので、彼の好きな球団を私は好きになった。
プロ野球ニュースの時間になると、電話が掛かって来て、球団の話をした。
ふたりの電話は、毎日の日課になり、
ある時、彼は言った。
「好きな人いるの?」
「えっ....」
「俺はお前だよ」
「私もキミだよ」
初めてふたりの想いが繋がった。
ドキドキが止まらず、その夜は眠れなかった。
ある日のこと、彼が泣きながら電話をしてきた。
「お母さんが脳溢血で倒れ意識が無い」という電話だった。
私も泣いていた。彼のお母さんが心配で、「死なないで」と祈った。毎日、彼は電話をくれて、お母さんの様子を教えてくれた。
私は辛かった。彼のために何も出来ない自分に腹を立て、お母さんが良くなることをただ祈った。
でも、願いは、通じなかった。
泣きながらお母さんが亡くなったことを知らせてくれた。
電話が終わり、私は自室で泣いた。親が驚いて部屋に来て理由を聞かれ、
「泣かないの、泣かなくていいから」
と言われたことを覚えている。お葬式に参加して、彼は泣かなかったのに、私が泣いて....。
私たちは幼かった。
大切な人を亡くしてしまったことがふたりの関係を変えてしまった。
どうしていいのかわからないまま、付き合い、そして、だんだんふたりの想いがズレていった。
いつのまにか、連絡が無くなり、
私も連絡出来ず、経ち消えてしまった。
大人だったら、どうしていただろう。
私は彼を支えたくて結婚を口にしていたかもしれない。
彼と離れたくなくて、一緒に暮らしていただろうか。
この話はフィクションです。
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