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aceitunas
ダス・ゲマイネ(太宰治)
いちばん好きな本、をあげるならば、迷わずこれを選ぶ。太宰治の作品のなかで特に有名というわけでもないだろう。印象に残っている強烈なシーンがあるわけでもない。だから私はこの短編と何度もはじめましてをする。
恋をしたのだ。からはじまり、人は誰でもみんな死ぬさ。でおわる。
ちがった。改めて読み返したら冒頭には主人公の状況がくっついている。記憶ちがい。だけど私はこれからも、恋をしたのだ。からはじまり、人は誰でもみんな死ぬさ。でこの作品を覚えていくのだろう。
ともかく最初と最後だけを覚えていて、読むたびよくわからないきもちになる。別段おもしろい話ではない。だけど私は迷わずこれを選ぶ。いちばん好きな本。
出会いは二次創作。当時好きだった漫画のキャラクターが、ダス・ゲマイネの主人公と同じ名前だった。現在の二次創作界隈は、文がうまいひとがとても多いけれど、当時は長いポエムが量産されていたようなお粗末さだった気がする。そんななかで文学と融合されたネット小説は、めずらしく私の心に刺さった。
ダス・ゲマイネの意味を調べてみてほしい。二通りあっておもしろい。過去にメールアドレスに使っていたくらい気に入っている。文学少女気取ってた十代の私。かっこつけマンよーだとは私のことさ。
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