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文学。多様性とあいすること。

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短編から中編小説を公開。
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勘違いの仕組み(掌小説)

勘違いの仕組み(掌小説)

 光がみえる。よく目を凝らすと、細い糸が垂れ下がっている。一面は闇。ぼんやりと、その光は浮きあがっていて、ぼくのこころを照らしている。細い糸の先には、みえはしないけれど脊髄。中枢から中枢をたどり、ぼくは呼吸をする。深く、長く。するとさっきまでビリビリしていたからだが楽になり、ようやく、歩きだせる。深く、長く。呼吸をする。光から指令を受けて、ぼくはぼくの生命を感じる。それがぼくの人間のイメージ。から

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となりの鼓動を抱きしめる

となりの鼓動を抱きしめる

 ぼくたちは歩いていました。細く、長い一本道を歩いていました。周りの景色はみえません。遠くもみえません。どこに続いているのかわからないのです。懐中電灯が手もとにありましたが、壊れてしまっているようでつけることができません。どうしようかとぼくたちは迷いましたが、この道を進むことに決めました。なにもみえず、そもそも道なのかもわからない、得体の知れないこの先を、ぼくたちは進むことに決めました。五感はとっ

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