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採用マーケットは消費と投資に #ベンチャー採用AdventCalendar2018
12/6を担当します。寺口です。
普段はワンキャリアというHRベンチャーの経営企画と採用をしています。
初日から事業戦略と組織戦略のリンクやピープルアナリティクスなど実務家の方々の重厚なナレッジシェアが多く大変多くの学びを得ています。
業界が横で繋がり、こういったかたちでシェアされる動きは業界の発展につながっていいなと思います。自身も知りうることを少しでも共有して貢献できればと思います。
▼自己紹介
金融機関で不良債権回収、企業再生、業界アナリスト(素材)、M&A、リクルーターを4年半やった後、webマーケ、人材育成コンサル、研修講師を経て、今はワンキャリアの経営企画室で事業企画と採用に関わっています。
▼INDEX
以下について話します。
採用は費用と投資に別れてきている
個人へのみなし時価総額の適用の必要性
▼採用は消費と投資に別れてきている
これは、11月に経営者と人事部長が集まったコミュニティでLTの機会をいただいたときに使用したスライドの一部です。
要約すると、マーケットバリューの高い個人のキャリア観は消費→投資になっているということ。その中で従来の「消費型採用」を継続すると「投資型個人」から見放されるという問題提起をしています。
詳細は以下で言及しています。
ここでいう消費と投資の違いは、「投じた予算が資産化するかどうか」という解釈で進めていきます。
その前にひとつ。
そもそも人的資産といいますが、BS、P/Lのどこに「人に関する勘定科目」があるかご存知でしょうか。釈迦に説法かもしれませんが、お話している中で知らない方も結構いたので念の為。
現状の一般的な会計ではBSに人的資産のボリュームを測る指標はありません。また資産額がないということはROAの算出も難しいということですね。
※中には、個人の見立てのP/Lを算出することで組織貢献度を定量的に図っている企業もあります。
人的資産の評価額はなかなか難しいのが現状です。人に関するデータは貯められてきましたが、なかなか活用に至っていないというのが現状のようです。
なので、採用に投じた資金が人的資産としてどの程度評価額がついているか、またその資産が評価額対比どれくらい収益化しているのかをリアルタイムで算出するのも難しいわけです。
上記を踏まえて、何をもって資産と呼ぶか。個人の解釈ですが、一旦現状は以下の2つを資産とおいています。
データとブランド
データについて
定量定性で考えます。
・定量データの例
ファネルを構築するうえで必要な数値全般。各エントリーの自社へのエンゲージメント、コンテンツの消費時間(どのコンテンツから流入した候補者がどのコンテンツで志望度が高まり、意思決定に至ったか等)、高評価者のレジュメのハード情報の傾向、CGMサイトでのレーティング等
・定性データの例
採用ターゲットの時期別の併願傾向情報(隠れた競合)、入社者の辞退先と辞退理由、辞退者の入社先と辞退理由、採用活動時や入社後の定性的な口コミ等
もちろん全てのデータを効率的に全て取得するのは難しいですが、上記、結構取れます。例えば競合情報について、(当たり前ですが)今は業界で絞る、みたいな考え方はあまりしないですね。特にハイバリュー、ハイポテンシャル人材はキャリア構築において時間を投資して資産を構築する考えが広まっているので、「この会社の社員になりたい!」みたいな考えの人は減少傾向にある気がします。
なので、採用競合は毎年変化するし、「なんでここと?」みたいなことが実は結構あります。何人かの採用マネージャに競合調査方法と施策をヒアリングすると、効率性に課題感を感じながらもリアルコミュニケーションでの信頼関係構築で今年度の競合の割り出しを行い、対策(競合用の自社の差別化要素のリストアップとトークスクリプト)を現場に落とし込んでいるケースが見られました。また、競合の採用施策についてもwebサイトのクローリングで時間をかけてアナログで取得しているとのこと。すごく考えながらやってらしゃる方が時間をかけているのはもったいない。webでできることはwebにまかせて、リアルでできることに集中できたら、もっと採用活動はクリエイティブになるんじゃないかなぁと思うのです。
これ、実はweb上のデータを解析すればある程度制度の高い仮説はたてられるんですね。基本的にはマーケティングオートメーションでアクティブ率の高いメディア内のユーザー行動解析から仮説をたてるのと同じ考え方です。
ブランドについて
ちょっと表現は稚拙になるのですが、ブランドをどう作るかを考える上で、主語を考えることってヒントになるんじゃないかなと思うのです。
例えば、求人広告や自社の採用ページで
「うちはいい会社ですよ」という。
このときの主語は「We」ですね。
We think we are good company
自分で言うことは大事です。
例えば、WantedlyやTwitter等で
「うちの会社はいい会社ですよ」という
このときの主語は「I」
I think we are(It is) good company(for me)
例えば、メディアに取り上げられるとします。
※人材会社が展開しているメディアにフェアなものは少ないですね。企業からお金をもらって、お金を払ってくれる企業がいいというのはある種仕方がないのかもしれません。そういう歴史だったから。あんまりジャーナリズムみたいなものは他の業界のメディアに比べてHRメディアは進化しにくい構造があったのかもしれません。
「この会社はいい会社ですよ」といってもらう。
会社からすると、求職者へのメッセージは。
It says We are good company
このときの主語は「It」
求職者はその「It」が本当に真実を言ってるか極めて慎重になります。
あとは元々中央集権的であったメディアが分散化しました。
これによってあらたな主語が生まれます。
「He」「She」ですね。
信頼できる「He」「She」の意見の意思決定に寄与する割合が増えている気がします。それは例えば先輩だったり、信頼しているメンターだったり、場合によっては親だったり。
何が言いたいかというと
今まではWeだけで発信していたのが、I、It、He、She等、個がメディア化する中で、
「誰にどのように言ってもらえるか」
という問いを常に持つことが大事なんじゃないかなと思うのです。
つくるメッセージは
We and they say We are good company 「for you」だし
They say It is good company for the peple that〇〇
これがブランド。
様々な立場のステークホルダーにそれぞれの立場から自然に発生する言葉をデザインして、その結果「社会でどのような合意形成をとれるか」が重要になります。
誰に対して何を約束し、誰に何を約束しないのか。
このメッセージの濃度を高めることが、これからますます重要になるんじゃないかなという予言をしておきたいなと思います。
ブランドについてはあれやこれや難しくいうよりもこうやってシンプルに主語を分解して、考えるとわかりやすいんじゃないかなぁと思います。
終わりに
個人の時価総額については10,000字を超えそうなので、別途書くことにします。2018年下半期、HR(特に採用)は混乱と停滞感があったような気がするのですが、きっと「有言実行」「有言無実行」「無言実行」の3者のうち「だれがどれやねん」というのがわかりにくいことが一因だと思います。序章のような文章を書いているので、気になる方は読んでみてください。
個がメディア化する時代に、個人の時価総額(約束を守り続けたことによるマーケットからの期待値)を可視化することで、争いや妬み、マウントがなくなり、建設的に業界が進化することを望みます。
そのための可視化と対話の方法を、次回、書こうと思います。
最後まで読んでくださった方へ
若輩者の意見を聞いてくださり有難うございます。がんばりますので引き続きよろしくお願いします。
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