1冊、1800円に込めた想い/文学フリマ大阪に向けて
はじめましての皆さんへ
初めまして。ひかりと申します。noteを拠点に言葉を紡いでいます。
昨年からnoteの定期購読マガジンをはじめ、そこで書いた記事をもとに、
書籍「水晶体に映る記憶」を出版しました。
9/10の文学フリマではM-48でお待ちしています^^
本作りの始まり、出版後の葛藤
私が本を作りたいと思ったのは、zineに出会ったことがきっかけでした。
zineは「個人の趣味で作る出版物」と表現されることが多いですが、
どこかで聞いたzineの説明で
「読者に媚びない表現物」と書いてあったのが
あまりにも魅力的で、ずっと忘れられませんでした。
確かに思い返すと、これまで出会ってきたzineには、
作者の愛しているもの、怒った出来事、誰かとの会話など、
様々なジャンルがありました。
共通しているのは、読者のニーズよりも
「作者の書きたいこと」が大切に書かれていること。
この自由さが、たまらなく好きだったんです。
もし、できるなら。もし私でも書けるなら。
いつか、いつか。自分でもzineを作りたいと思っていました。
妄想してから、くよくよして、2年。
zineを作ろうと決めてから、4ヶ月。
今年4月、初めて自費出版しました。
B6サイズの126ページ。
よくある単行本の手のひらサイズで、6mmの厚さ。
価格は、税込1800円です。
私がこれまで出会ってきたzineの値段に比べれば、2-3倍の価格。
おそらく、かなり高めの値段だと思います。
さらに、私は無名の作家で、著名人からの言葉の帯があるわけでもありません。
zineイベントに本を出す中でも、なんだか値段だけが浮いてしまって、
「値付けミスったかな…」「もっと安くすればよかったかな…」と
正直、何度もそう思いました。
でも、今必要なのは「値付けへの後悔」ではなく、
なぜその値段にしたのか、どんな思いをもってこの値段にしたのか、を
「しっかりと私の口から語ること」だと気づいてから、この文章を書こうと思いました。
(この文章を書こうと思えたのも、友人の後押しのおかげです)
そして、すでにこの本の価値を信じて手元においてくれたお客さんや、本屋さん、一緒に作ってくれた仲間への言葉としても残したいとも思いました。
今春の出版にこだわって、本を作った理由
今年の春は、いつもと違ったと思います。
それは、3年の沈黙の時間が流れた末の、春だからです。
きっと今年は、何かを始めよう!と周りの速度も速まるだろうと予感していました。
春の体感速度は格段に上がるだろう、と。
目まぐるしい速度の中にいると、たまに自分の声が聞こえなくなります。
みんなもしているから、自分も。
もっともっと頑張らないと。
自分が願っていないことすら、頭に浮かんできてしまう。
こういう時に、自分の本当の声を忘れないお守りのような本を作れたら。
そんな気持ちから本作りが始まりました。
1800円という、値段の理由。
たくさんの時間をかけて作った本の価格は、一冊1800円。
決して安い価格ではないと思うし、
初見であれば、なぜ無名の作家の本がこの値段なのか、不思議に思うのも自然なことだと思います。
この価格にした理由は大きく2つあります。
一つは、自分の人生を、大切に切り取った本であることに気づかせてもらったからです。
値付けを決めるときの自分は、弱腰でした。
赤字になってもいいから、安く、安くしようと思っていました。
値段を高くすれば売れないだろうから、
「売れない理由」を一つでも潰しておきたかったのです。
参考にしようと、いろんなZINEを見た結果、大体が1000円以下。
1800円なんてZINEはほぼありませんでした。
儲けようとは思っていない。
ただ言葉を届けたいだけ。
値付けで、この本の見え方は大きく変わってしまうから慎重に。
こういう言葉がぐるぐるとして
頭の中がごちゃごちゃになっていたとき
助言をくれた人達がいました。
本を書き始めた時から見守り、校正をしてくれたパートナーからは
「あなたの人生を安売りする必要はない」という言葉をもらいました。
本の営業先の店舗を探してくれて、共にNOTEで文章を書いていた友人からは
「この値段は、次の作品を期待させると思う。」という言葉をもらいました。
二人の言葉によって、私が文章にこめているものの価値を信じることができました。
私が見てきたものを書いたあの時間は、間違いなく命の一滴を注ぐような時間だった、と。
そして、一緒に本を作ってくれたイラストレーターさんも、デザイナーさんも、校正者さんも、みんなの想いが乗っていることも思い出しました。
ああ、これは私だけの本ではない、と。
その価値を、堂々と値段に宿そうと思いました。
2つ目は、この本に関わってくれた人たちの「心」が込められているから。
この本は、作者である「私の本」と映ってしまうことが多いと思います。
でも決してそんなことはなく、前述したように、一緒に作ってくれた人々が常にいました。
ここでは、みんなの紹介が少しでもできたらと思います。
挿画・挿絵/mioさん
挿画と挿絵を描いてくれたmioさん。吸い込まれそうな瞳の女の子の表紙を見るたびに、澪さんとこの世界観を作ることができて良かったと心から思います。
澪さんインスタグラム
https://instagram.com/miookubo
装丁/尾藤くん
表紙のタイトルデザイン、シンボルデザインなどの装丁をしてくれた尾藤くん。彼の「漢字に意味を宿す技」は絶品で、「あのタイトルデザインが気になって」と言って手に取ってくれた方が何人もいました。
尾藤くんインスタグラム
https://instagram.com/design_kanji
校正・編集/前田くん
校正と編集をしてくれたパートナー。
感性寄りになってしまう私の言葉を、人に伝わるように調整してくれました。理性と感性が調和された文章、絶対に一人では作れなかったです。
https://instagram.com/ryota_craft
書店/ いろどり書房さん、ブックランドフレンズさん
本を書く後押しをしてくれた、店舗を持たない本屋「いろどり書房」のじゅんちゃんと、伊丹の実店舗本屋 ブックランドフレンズのこんぶさん。
初めて会った時に本を出版する話をしたら、原稿を見ていただくことになり、「うちの店で扱うわ!」と言ってくれました。そして、まだ完成していない本を、仕入れる約束をしてくれました。私が、著者として走り出す覚悟を持てたのは、二人のおかげです。
いろどり書房さんインスタグラム
https://www.instagram.com/irotori_book/
書店/韋編三絶さん
西を中心に広げていた本を、東に運んでくれた、韋編三絶のぶさん。北千住で観光イベントを主催していただいたり、たくさんのお客さんに本を届けていただいたりしました。
韋編三絶さんインスタグラム
https://www.instagram.com/nofutaka/
印刷/藤原印刷さん
「心で刷る」というコンセプトで、丁寧に伴走してくださった藤原印刷さん。紙選びから色校まで、最後まで向き合ってくださいました。
本当にたくさんの方々に助けていただき、この1冊が生まれています。
決して自分だけではできなかった本です。
関わってくれた方の何層にも重なった想いを、表す1つの手段として
値段に込めました。
その後の、本の広がり
発売から半年が経ち、今では度々感想をいただけるようになりました。
この感想も、私一人ならば耳に入らないようなことも、
仕入れてくれた書店さんから「こんな感想もらったよ!」と連絡をもらい、知ることができています。
本当に、本当に、有難いです。
またこの本は、日本だけでなく、
ドイツやアメリカ、バリ島にまで届いたそうです。
遠い旅のお供に、この本を選んでくれたことが
本当に嬉しいです。
最後に
ここまでよんでいただき、ありがとうございました。
この文章を読んで、この値段の意味合いが少しでも伝わったらと思います。
そして、この本に関わってくれた人たちに改めて感謝申し上げます。
いつも、ありがとうございます!