読書感想文:『転落・追放と王国』読了後
アルベール・カミュの『転落・追放と王国』を読んだ
元々は『転落』と『追放と王国』に分かれていたらしい
『転落』が思ったよりも長くなったので、独立させたとのこと
『転落』は、元弁護士クレマンスを主人公とした物語
読者は、クレマンスにアムステルダムを案内されながら、その人の話を聞く
昔のクレマンスは、年配に席を譲る、手を貸すなど、立場が弱いとされる者を積極的に助けていた
しかし、ある日からそんな人々を冷たくあしらうようになる
弁護士=人を法的に守る立場にいるも関わらず、クレマンスは「エゴイズム」に目覚め、良心に次々と逆らっていく
『転落』は、そんな堕落してしまった1人の告白小説
一方の『追放と王国』は短編集で、色々な物語が詰め込まれている
その中でも特に印象に残ったのが、『客』と『ヨナ』
『客』は、教師がアラビア人の囚人を引き取る話
教師は囚人に対して、警察に捕まる道と逃げ道の2つを示した
だが、結局囚人は自ら捕まる道を選んでしまう
『ヨナ』は、画家が妻や子どもと暮らしながら、仕事に奮闘する話
友人など、他の訪問者に仕事を邪魔されながら、良い絵を描こうと熱中する
しかし、結局完成したのは、solitaire(孤独)のような、solidaire(連帯)のような文字が書かれた1枚の真っ白な絵
どの短編にも、カミュの不条理が反映されているようだった
どれだけ頑張っても報われない、救いの道があるのに救われない
そんな乾いた世界が好きな人には、おすすめの小説です