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読書感想文:『悪霊』読了後

ドストエフスキーの『悪霊』を読破した

ロシアで革命組織を作り、『檄文』を世間に知らせようとした貴族たちの物語
(※以下ネタバレあり)

上巻はステパン・ヴェルホーヴェンスキーの語りからニコライ・スタヴローギンの決闘まで、物語が描かれる

下巻はピョートル・ヴェルホーヴェンスキーが革命組織の中心人物となって、様々な事件を巻き起こす

登場人物が病にかかるか、どんどん死んでいく。これ以上報われない物語はないのではないかと思うくらい、誰も救われない

物語の冒頭には、悪霊に取り憑かれた豚が次々と溺死するという、聖書が引用されている(ルカによる福音書8:32〜36)

その箇所を再現したかのような物語になっている

ニコライ・スタヴローギンは周囲によって神格化されているが、過去に少女を襲った罪を背負っている

ピョートル・ヴェルホーヴェンスキーは、スタヴローギンを革命のリーダーに仕立て上げようとするが、失敗し、挙句の果てには次々と関係者を殺害する

キリーロフは、ピョートルの身代わりとしてシャートフの殺害者となるため、遺言書を書いて自殺する

シャートフは、革命組織の密告者と見なされ、妻と再会したにも関わらず、組織のメンバーによって殺害されてしまう

リーザは、兄妹の殺害現場を見に行った所、民衆に「スタヴローギンの情婦」と誤解され、殺害される

など、とにかく登場人物が次々と不幸に見舞われる

一見、ただただ絶望的な小説のようだが、小説にはしばしば神についても語られる

例えば、キリーロフは神を否定し、人(民衆)が神になる思想こそ支持すべきだと主張していた

しかし、リーザが民衆によって殺害されたことを考えると、何だか皮肉な話だなとも思ってしまう

スタヴローギンも、神に裁かれるのではなく、自ら命を絶つことで、自分で自分を裁いてしまった

人神思想が理想とされたが、それを信じた結果、悪霊に取り憑かれ、命を落としてしまうという、何とも示唆的な物語

『罪と罰』『カラマーゾフの兄弟』とは一味違った小説。一読してみてはどうでしょうか


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