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【小説】チンモチ

 私は河川敷を自転車でサイクリングするのが好きで、ついつい勢い余って思ったより遠くの土地に行ってしまうことがある。今回の話もそれが原因で起きた。
 その日の私は自転車で風を受けながら走るのに夢中で、あまり人気がなく、土地勘のない所まで自転車でたどり着いてしまった。といっても帰りは来た道を同じように戻るだけなので、その事をあまり深刻には考えていなかった。
 問題が起きたのは戻る道中の事。私は尿意を催す自分に気が付いた。しかし河川敷にある公衆トイレまでにはまだまだ距離が遠い。そこで河川敷の草むらで放尿を済ませてしまおうと決め、自転車をこぐペースを落として丁度良いスポットを探した。すると堤防から少し下った所に、風にたなびく背の高いススキで上手く河川敷の道から隠れられる場所を見つけた。
 周りには特に人気はなかったが、いかにも疲れたような表情をして、小休止するような素振りで腰を下ろす。短パンを下ろし、河川敷の法面(坂みたいになっている所)に対して体の右半分を下にする体制になり、放尿をしようとした。しかしある問題が起きた。
 私のチソチソは平常時にもそこそこ長さがあり、あまりにもモチモチな為、下にした右太ももにチソチソがペッタリとくっつく形になり、そのままでは尿が自分の足にほとんどかかってしまうのだ。私は、一方で河川敷で放尿をするという判断を下しながら、もう一方で自分のチソチソを触ったら手を洗いたいなどという奇天烈な衛生観念から、放尿するチソチソに手を添える事にいささか抵抗があった。
 しかしだからといって自分の足に尿がかかってしまうのは本末転倒である。尿も出口を求め、尿道付近で私の判断を仰がんと瀬戸際の尿意を訴えていた。しばらく逡巡したあと、決心してチソチソに手を添えて放尿を始める。寸止めからの開放感も手伝ってか、いつもより気持ちが良かった。
 あともう少しで全ての尿が出し終わるであろう頃、高水敷(坂を下った、水路より一段高い部分の敷地)からこちらへ近づいてくる気配を感じた。背の高いススキが仇になり、自分も相手も互いの存在が直前まで分からなかったのだ。ススキをかき分けて出てきたのは、くすんだ色のジャージを着た60~70代くらいのおじいちゃんだった。私を発見し、彼は驚いて足を止める。視線がチソチソに注がれる。チソチソは、まだ尿道に残っていた尿をチョロロと出している状態だ。そのまま私が全てを出し終えるまで、彼は黙って私のチソチソに目を向けていた。
 尿が完全に止まると、彼も我に返ったのかそそくさとススキの向こう側へと消えていった。私は一人取り残されてしまったような寂しさを感じながら、自分にかからないように注意しながら股間を振って雫を飛ばした。
 「自分のチソチソがモチモチじゃなければこんな事には…」ほかにも考慮すべき事柄がいくらでもあったはずだが、なぜか私の頭は「自分のチソチソがモチモチだったことに対する衝撃と、その事による余計な時間の消費が先ほどの悲劇を生んだ」という反省でほとんど占められていた。
 家に戻りシャワーで汗を流す際、自分の股間を触った。改めて、本当に、すごくモチモチだった。
 

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