今井玉木

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吉田修一『パークライフ』を読んだ

 『パークライフ』は電車内で不用意に話しかけてしまった女性と日比谷公園でゆるく関わり合う表題作と、上京して飲料水の配達の仕事に従事し地元を回想したり同僚たちとの関わり、とりわけ望月元旦という男とかなり親密に交流を持つ『flowers』の2編からなる短編小説だ。  2編だけの上、どちらも文庫本で100ページ前後という文字量であることも相まってあっという間に読み終わる。読後感もあまり残らない不思議な短編だ。よってこの感想も作品同様フワフワしたものであることは当然許されるべきであろ

    • 【今更】期日前投票は俺には難しい【投票の雑感】

      ⚪︎概要  当日に予定があった為、期日前投票へ行った。のだが色々とこうクソデカ感情が出てきて、その時感じたアレコレを吐き出したいとの思いから今更ながらこの文章を書いている。 ⚪︎期日前投票と当日投票で場所違うのつらい  投函されていた投票用紙付きハガキには、選挙区に応じた当日の投票所の案内地図が載っていた。しかし期日前投票は選挙区という概念は関係なく、あくまで市ごとに設定された数箇所の投票所の一つに赴き投票する様式だった。  前回投票した際は当日投票だったから、このこと

      • 【ネタバレ注意】ミュージアム映画レビュー【令状は拳銃】

          ⚪︎概要  『ミュージアム』という映画をアマプラで鑑賞した。ガンダムを勧めてくれた友人からおすすめされて観る運びとなった。  主演は小栗旬、主人公沢村久志(以下サワムラ)の妻は尾野真千子、犯人のカエル男は妻夫木聡、主人公の上司に松重豊など俳優陣はそうそうたる顔ぶれである。  原作は週刊ヤングマガジンで連載されていた巴亮介氏の漫画である。漫画原作の実写化は未だに賛否があるが、この映画は割とお金を掛けて作った様な印象で個人的には楽しめた。いくつかツッコミどころみたいな所が

        • 【ネタバレ注意】『機動戦士ガンダムSEEDFREEDOM』映画レビュー【こういうので良いんだよ】

            ◯概要  『ガンダムSEEDFREEDOM』をアマプラで視聴した。アニメ本編はテレビ放映時に視聴していたが、内容は断片的にしか思い出せなかった。そのためYoutubeで公開されている30分程度のまとめをシード・ディスティニー両方見る事で内容を復習した。  2時間越えのアニメ映画はおそらくシン・エヴァ以来で久しく見ていなかったから、最後まで見切れるか不安だった。しかしそんな思いは杞憂で、とても面白かった。  見るきっかけは友人のガンダムオタクからの勧めで、当然勧めてくる

          会社での板挟みがつらいという話

           係長と課長で言う事に食い違いがあり、それを自分なりに処理して日々業務に向かう事を強いられている。結論から言うとつらい。  この文章はその現状を自分なりに整理し、どういった対応をするか見定めるための個人的な雑記である。何なら「対応しない、放置する」という結論になる可能性もある。  本来の役職名や職域は厳密に言えば違うのだが、身バレや会社自体の特殊性などの事情により「係長と課長」に置き換えてる。    ◯実務を管理する係長と課全体を管理するが実務に疎い課長 •係長の取って

          会社での板挟みがつらいという話

          都知事選における適当なメモ その2

           前回と同じ個人的なメモ。  7月7日に行われた東京都知事選挙。結果は小池百合子氏が3選を果たした。  小池氏は291万8015票もの票数を獲得し、次点の石丸伸二氏は165万8363票とはかなりの大差がついた。3位となった蓮舫氏は128万3262票を獲得。  小池・石丸・蓮舫に大半の票が集中し、供託金没収は上記3氏を除く53人にのぼった。 〇大方の予想通り3選目を果たした小池氏  小池氏の当選は順当と言わざるを得ない。衆議院議員、参議院議員、大臣も歴任など政治家とし

          都知事選における適当なメモ その2

          都知事選に関する適当なメモ

           都知事選の話題をよく目にする。明日が当日なのだから当たり前なのだけど。私は都民ではないから投票権を持っておらず、したがってだれが当選しようが関係ない。  しかしそうは言っても東京は国の首都であり、経済規模も強大でオランダのGDPにも匹敵すると言われている。となれば否が応でも世間の注目度は高くなる。私もご多分に漏れずその世間の中の一人である。  この文章は都知事選について個人的な興味関心の赴くまま適当に書きなぐったメモ書きに過ぎない。正しい情報は各種報道機関によるものを参

          都知事選に関する適当なメモ

          【小説】夏、無職、ラジオ体操

           夏、俺は無職だった。当然暇で、だから町内会がやってるラジオ体操に行った。年寄りやちびっ子が行くのが相場なのだろうが、別に年齢制限の表記はなかった。  会場の公園は、遊具や砂場のない正方形の広場といった空間だ。その周りを大小の木々が林立して公園の大半に木陰を作り、その下では風が心地よかった。備え付けのベンチが等間隔に二基並ぶ辺りに簡易テントが設営されて、そこが受付として扱われていた。  受付では上品な喋り方をする妙齢の女性が応対した。ツバの広い帽子とアームカバーをつけて、

          【小説】夏、無職、ラジオ体操

          【日記】8月31日

           喫茶店でコーヒーを待つ間、隣席で談笑するご婦人達に耳をそばだてる。話は旅行計画、健康診断の結果、夏休みの子供達等々……月並みな話題を経て、なぜかヴィーガンの話題に。  「〇〇さんトコのお家ヴィーガンに目覚めちゃって」  「ご家族が代わりばんこに骨折だってさ、やっぱり動物性タンパク質を摂らないとね」  「火葬したら油が足りなくって火が燻りそうね」  最後の言葉が余りに悪魔的で、思わず笑いそうになって、堪える為に窓から空を見上げた。するとまだ18時にもならないのに空が暗くなり始

          【日記】8月31日

          【小説】にゅうにゅう

           仕事帰り、飲食品を買うためスーパーに立ち寄った。諸々を買い物かごに納めた末、牛乳を求めて飲料の並ぶ最奥、鈍い音で唸る冷蔵ケースの前に立つ。  最下段にもっとも安価なものがまばらに立ち並んでいるが、それには構わず少し値が張る――北海道産で飲み口が濃厚、更には鼻に抜ける香りも良いと個人的に評している――物が平時配置されている2段目に目を向けた。  そこには1000mlパックが1本だけ横倒しで、通行客の目につく最前列に置かれている。段の奥側には陳列を待つ、印刷された牛の顔の並

          【小説】にゅうにゅう

          【小説】チンモチ

           私は河川敷を自転車でサイクリングするのが好きで、ついつい勢い余って思ったより遠くの土地に行ってしまうことがある。今回の話もそれが原因で起きた。  その日の私は自転車で風を受けながら走るのに夢中で、あまり人気がなく、土地勘のない所まで自転車でたどり着いてしまった。といっても帰りは来た道を同じように戻るだけなので、その事をあまり深刻には考えていなかった。  問題が起きたのは戻る道中の事。私は尿意を催す自分に気が付いた。しかし河川敷にある公衆トイレまでにはまだまだ距離が遠い。そこ

          【小説】チンモチ