シン・映画日記『ピンク・クラウド』
ヒューマントラストシネマ渋谷でブラジルのSFスリラー映画『ピンク・クラウド』を見てきた。
突如現れたピンク色の雲。この雲に触れると10秒ぐらいで死ぬらしい。
そこで人々はピンクの雲に触れないように引き篭もる生活を強いられることに。
主な登場人物はジョヴァナとヤーゴのカップルと二人の間に産まれたリノ。
基本的にはこの3人の引き篭もり生活を見ていくんだけど、
まあ、リアリズムがないこと。
まず、このピンクの雲に対してニュースでは「どうやらヤバいらしい。死ぬようです」とはニュースとして流しているが、それだけ。
この雲で何人死んだとかどうしようという議論がない。
ピンクの雲に触れて死ぬシーンはあるにはあるが少ない。
一応、引き篭もってはいて人々はピンクの雲に対して恐怖を感じているし、引き篭もり生活に多少の不便は感じてはいるが、
パニックぶりは薄いし、引き篭もり生活もそれなりにこなしていて、それほど困ってる風でもない。
パニック映画という体で取っている割にはそれほどパニックしていなく、むしろ引き篭もっている3人家族の暮らしぶりばかりを見つめるホームドラマになってしまっている。
それも、ブーリー・ラーソン主演のレニー・エイブラハムソン監督作品『ルーム』のようなひっ迫感がないし、
密室劇の会話劇としても『おとなのけんか』や『十二人の怒れる男』、
比較的室内シーンが多い『8月の家族たち』や『紙屋悦子の青春』、『キサラギ』など、ありあらゆる密室劇に劣っている。
一応、途中で夫婦仲が悪くなって、家(マンション?)の1階と2階を使って家庭内別居をしてはいたけど、その程度の揉め事しかない。あと、外に出られないせいで妻ジョヴァナかVRにハマってたり、スカイプやスマホでテレビ電話というシーンがいくつかある巣篭もり生活は見られる。
これ、世がコロナ禍じゃなければそれなりに衝撃があったかもしれないけど、マスクについて多少緩和されてきたにせよ、まだコロナ禍である今よりちょっと大袈裟という程度で大したことないなー、というのが正直な所である。
ラストも「え?それで終わり?」というガッカリなものを見せられ、終始微妙な映画だった。
シネマートの「のむコレ」作品やヒューマントラストシネマの「未体験ゾーン」作品だとしたも下位打線なD級映画だった。
いや、下手すればフジテレビの「世にも奇妙な物語」で放映したとしても「ハズレ回」としてカウントされるんじゃないかな?
要するに、
殺人ピンク雲に対する大喜利でそれほど面白い脚本が書けてなく、
またピンクの雲についても『NOPE/ノープ』みたいに真正面から行けてないなど、
残念要素やコレジャナイ感がムンムンな103分だった。