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蔵出し映画レビュー『プアン 友だちと呼ばせて』

『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』のバズ・プーンピリヤ(名義はナタウット・プーンピリヤ)監督の新作というより、ウォン・カーウァイ製作総指揮というのが気になって見た『プアン 友だちと呼ばせて』。製作総指揮に関わっているからか、まるでウォン・カーウァイ監督作品のような映像美にバズ・プーンピリヤ作品らしい脚本の巧さで素晴らしいタイ映画に仕上がっている。

予告編を見る限りでは余命もので元カノと会う恋愛ものかな、とだけしか思わなかったが、その元カノが何人もいて、ジム・ジャームッシュ監督の『ブロークン・フラワーズ』のような元カノ巡りロードムービーになっている。しかも、その結果が必ずしも上手く行くとは限らず、こうした部分にリアリティさがある。

後半は主人公ボスとボスの元カノを交えたエピソードに。ボスがバーテンダーというのもあるが、このボスの元カノもバーテンダーで、ここのパートはバー映画、バーテンダー映画の面白さがある。特にバーテンダー映画としてのカクテルはトム・クルーズ主演の『カクテル』よりも遥かに拘りとテクニックがあり、意味深である。

また、バーのシーンを中心とした夜のシーンの色彩や映像美が素晴らしい映画でもある。ネオンや夜景、カクテルの色合いなどを巧く使い、タイやニューヨークの夜がより鮮やかに見える。考えてみればかつての友人や元カノとのやり取りとかかつてのウォン・カーウァイ監督作品で見てきたということもあり、『プアン』は監督とか脚本、原案ではないにも関わらず、ほぼウォン・カーウァイ監督の新作のようである。タイを舞台にして、タイ人の話にしているからタイのスタッフにして、製作総指揮でありながらウォン・カーウァイの影響力がかなりある映画である。

『ブロークン・フラワーズ』のようなロードムービーに『カクテル』以上のバーテンダー/カクテル映画にウォン・カーウァイのような映像美に友情、色濃い沙汰など、まるで複雑なカクテルのようにグラデーションに富んた映画である。90年代のウォン・カーウァイ監督作品が好きなら尚の事楽しめる。


 

 

 

 

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