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10年ぶりに読んだ「ノルウェイの森」がちょっと良すぎた

何か作品に出会ったら、#ちょっと良すぎた と感想でも書いていこうかなと。

意味がなかったとしても、書きたくなるほどに作品と出会えることというのは素晴らしいことにようやく気がつけた気がします。

ぼくは村上春樹作品が好きで。まだすべての作品は読んでいなけれど、もっとたくさんの作品をこれからも読みたいなと思っています。

今回は「ノルウェイの森」についてです。

大学生のときに読んで、それからこうしてだいたい10年ぶりくらいに読みました。

感じたことをただ書きます。一つの見方、生まれた感情を、自分の感じ方の違いとして、それからまたまったく違う何かを考えるきっかけにしてもらえるといいなと思います。

感じた感情はそれ以上でも以下でもない

最後まで読み切ったあと、もう一度、冒頭の第一章を読んでみる。

そう考えると僕はたまらなく哀しい。直子は僕のことを愛してさえいなかったからだ。

そんなこと、忘れたまま読み終えてしまった。

彼女は愛していなかったのだろうか。

そうなのかもしれなかった。だって、ワタナベくん本人がそう言っている。それ以外にないのだろう。感じていることがすべてなのだ。

僕らには言葉があるから、感情を言い表そうとする。

でも感情は感情のままで。あのたまらなく、心の奥の方がぎゅっとして、どろっとして、身体が遠のいていきそうな感覚を、それ以上言葉で表現することはできない。

それを本当の意味で伝えることは絶対にできない。

感じた感情はそれ以上でもそれ以下でもなく、感じた人にしかわからなくて、それでも生きていくんだと思いました。

それでも一緒に、淋しいから生きていくんだと思いました。

その感情を僕らは愛するとか、淋しいとかで言い表すことしかできないけど、それでも身体を重ねて交わらせることができるんだと思いました。

「自分に同情するな」「自分に同情するのは下劣な人間のやることだ」

ああぼくは、自分に同情しながら生きているんだなと感じます。

強くならなきゃいけないんだなと、大人にならなきゃいけないんだなとも思いました。

永沢さんはそれができる強い人でした。

僕らは元来下劣な生き物で、それは何もいけないことじゃなくて、いわゆる普通の人間なんだと思います。

長いものには巻かれて、プレッシャーから逃げたくなって、責任を負いたくない。適当なことを考えて、話して、それぞれ気持ちがいいように生きていたい。

中には物事を達観し、人から一歩引いて客観的にみることができたりして、自分を普通じゃないだとか下劣じゃないだとか思ったり。

そんなどうでもいいことを考えてしまう人間もいるんだと思います。

ぼくはどちらかというと、そっちの人間なのかも知れません。

ぼくはまだ大人になり方を知らないし、ぜんぜん強くもありません。そろそろ20代も終わるというのにあんまりです。

それでもこれからも、普通だとか普通じゃないだとか、下劣だとか強くなりたいだとか。そんなことを考えながら生きていくんだと思います。

直子やキズキくん、明美さんやレイコさんのように、それからワタナベくんや緑のように。それぞれにそういう形で生まれたから、そういう形で生きていく以外にないんだと思います。

それからぼくはそこまでハンサムじゃないけど、よく見て、見慣れてくるといいと思ってもらえるところもワタナベくんっぽいです。

さて、また同情してしまった。強くなりたいです。

完璧に、でも完全に不完全

緑が好きでした。

惹かれあう二人が好きでした。

卑猥な話をして、本当のところをちゃんと言えなくて、それでもたくさんたくさん伝えていて。

そんな彼女のことが好きになってしまいました。緑がワタナベくんを射精に導いた部分では、僕も固く大きくなりました。ほんの少しの間だけです。

ぼくらは完璧になりたいです。完璧がいいもので、完璧が本当の自分だと思っています。

でも完全に不完全です。

完璧になることなんてないんでしょう。

いいや、もうすで完璧であることに気づくことはできないんでしょう。

それはそうであることを受け入れた先にしかないんだと思います。

僕はそれでも、完璧なんだと

所詮は、落ち着けるところにしか落ち着けません。

普通ではなく、でもとても普通なワタナベくんが、落ち着けた場所がきっと緑がいる場所だったんだと思います。それは完全に不完全な場所。普通ではなく、それでも完璧である場所です。

ぼくは愛することを選びたいと思います。

完璧になりたいことも。強く、大人になりたいことも。それから自分に同情してしまうことも、固く大きくなったり、旅に出たくなってしまうことも。

愛のお話です。人生は自分の大事にしたいものを大事にするお話です。

いつか死ぬから、今愛そう。

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