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【娘におくる手紙】 10か月、はじめて喋ったことば

これは、母から娘への手紙です。
2022年の夏、ひいおばあちゃんの生き写しみたいにそっくりな顔で生まれてきた娘。とうもろこしが大好きなところもひいおばあちゃんそっくり。
まばたきするくらい早く過ぎていく日々を書き留めて、娘が大きくなった時に渡せるよう、手紙にして残すことにしました。



そろそろ、あなたがうまれて10か月。
いま、我が家のお風呂場の脱衣スペースには、あなた用に小さなテーブルが置いてあります。
テーブルの上にバスタオルを敷いて、お風呂に入るときはそこで服を脱いだり、身体を拭いてもらったり。

本当だったら、もう動き回りたくて仕方ないのが0歳10か月だから、テーブルの上なんて危なくて乗せられない。でもあなたはなぜか頑なに寝返りをしない子で、寝かせるとずっと仰向けなので(結構シュールです)、これ幸いとテーブルを使い続けています。

テーブルに乗ったあなたの大好きな遊びは、タオル落とし。
身体を拭いているバスタオルを奪い取って、下に落とす遊びです。
お父さんやお母さんが大げさに慌てて拾ってくれるのが面白くて、何度も何度も、落としては拾ってもらって、を繰り返す。毎日まいにち。

遊んでいるうちに、すべてのものは下に落ちること、そして落とすと楽しいことに気付いたあなた。
万有引力、なんてことばは知らなくても、世界を全身で興味深く感じて、おもしろがって、受け入れていく。
赤ちゃんってまっすぐ純粋だなぁと思いながら眺めています。

楽しさに味をしめたあなたは、バスタオルに飽き足らず、どこでもなんでもとりあえず落としてみるようになりました。
ごはんの時間には、お米もお焼きもスプーンもお椀までも。
ぽんぽんカチャカチャがっしゃんと、次から次へ落ちていくものたち。

叱ってもまだ意味は分からないだろうし、かといって一緒に遊んでしまうとさらに落とすのが大好きになるし。
子育ての迷いどころです。

どうしようかと思いながら、叱りも褒めもせず、いつも「あ~あ、落ちちゃったね」と言って拾っていた母。
(至って平静に淡々と)

毎日ごはんの時間は母の「あ〜あ」の繰り返し。
食べ物や食器を落とす癖は一向になくならないけれど、ものを落とすと自分から「あ〜あ」と言うようになりました。

「あ~あ」

喃語の あー や うー とは違う、妙に悟った言い方。
抑揚も私と完璧に一致。
ほかの時には言わないので、これは確信犯です。
あなたのはじめて喋ったことばに認定しました。
(ことばなのか、真似なのか曖昧だけど、まあいいか。)

いつも、落ちたものと私をかわるがわる見ながら「あ~あ」

多分「落ちたよ」という意味で言っているんでしょう。
いつか、あのときはどんなことを思って言っていたの?と聞いてみたい。
「はやく拾ってよ」と命令されていたらどうしよう。

ちなみに、「赤ちゃんが初めて喋ることば」で検索してみると、
「ママ」「パパ」「まんま」「わんわん」など、王道の愛らしい言葉が並んでいました。

でも、あなたのはじめてのことばは「あ~あ」
愛嬌たっぷり、なんともあなたらしい愉快なことばで、母のお気に入りです。

※追記
あんなに毎日言っていた「あ~あ」も、3週間ほどでまったく言わなくなりました。
「あ~あ」だけじゃなく、お気に入りの絵本に合わせてほっぺたをおさえる仕草も、ぱちぱちと手を叩いたあとに必ずばんざいするのも。

あっという間に見られなくなってしまう姿がたくさんで、
すべてを焼き付けておきたいなと日々思っています。

手づかみ食べに夢中。ただし口に入るのは僅か。ほとんどは床に落ちて、「あ~あ」



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原田 理恵 | 喫茶 手紙寺分室 note 編集長
「誰かの想いを翻訳・編集して磨き上げ、多くの人に伝えていく」が信条。旅と、時間が経って朽ちた風合いや佇まいがあるものがすき。ペンのインクはブルーブラック派。喫茶で最高のクリームソーダを出すのが夢。
Smiles: Project & Company 所属。

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