北海道の都市にある温泉で身体を温めた。
結論
函館市→湯の川温泉→アツアツの透明な温泉
帯広市→モール泉→柔らかさも感じられる褐色のお湯
冬の北海道、温泉に浸かりたくなるほど寒いです。今回は、北海道横断旅で入浴した温泉について話します。
函館→湯の川温泉
湯の川温泉は、函館空港の西にあります。函館駅から、函館市電湯の川行きの電車に30分ほど乗ると、湯の川温泉に到着します。湯の川温泉は、函館の奥座敷と呼ばれています。源泉は約20本あり、1分間に20世帯分の浴槽がいっぱいになるほどのお湯が沸きます。宿だけではなく、足湯、銭湯でも温泉を堪能できます。
600年前には存在した温泉
湯の川温泉は、600年前に発見されたと言われています。室町時代、一人のきこりが帰宅途中に小高い丘(現在の湯倉神社付近)で休憩していると、湯気が立っているのを発見しました。湯気の方向へ近づくと、お湯が湧いていました。
きこりは、腕の関節の痛みがひどくなったとき、このお湯を思い出し、湯治をしたところ、痛みが和らぎました。これが、湯の川温泉の始まりと言われています。
1653年、後に松前4代藩主となる松前高広が重病を発祥したとき、母親が夢のお告げを参考にして、湯の川温泉で湯治させた結果、回復しました。
日本最大の内戦と呼ばれる戊辰戦争にも関わりがあります。戊辰戦争では、2年にわたって幕府軍と新政府軍が争いました。箱館戦争では、榎本武揚率いる幕府軍が傷病兵の静養所として利用されていました。
1886年、湯治場が開業し、一般の方も入浴できるようになりました。
湯倉神社で参拝する
函館市電湯の川線の終点、湯の川停留場を降りると、目の前に小高い丘があります。丘の上に湯倉神社が建っています。朱色の鳥居が目立ちます。湯倉神社は湯の川温泉発祥の地とされています。
きこりが、湯倉神社付近の丘から、湯の川温泉を発見したと言われています。お湯に浸かり、関節の痛みが和らいだお礼として、薬師如来を刻み、小さな祠を建てて安置しました。これが、湯倉神社の始まりと言われています。
地元の人々は、お湯は神からの贈り物と信じており、1617年頃、湯座に薬師様を祀りました。
1654年、母の清涼院が社殿を改築し、薬師様と唐金作りの鰐口を献納しました。後に松前4代藩主になる息子の松前高広の難病が湯の川温泉で湯治したによって回復したことに対する感謝の気持ちとして湯倉神社を改築しました。
湯倉神社は大己貴神、少彦名神を祀っています。五穀豊穣、家内安全、健康長寿、商売繁盛、縁結び、安産、子育てなどのご利益があります。
銭湯で入浴した。
今回は、大盛湯という銭湯で入浴しました。銭湯でも、湯の川温泉をかけ流しで堪能できます。底が見えるほどの透明で、45℃を超えるアツアツの温泉でした。身体の表面だけアツアツになり、1分もしないうちに上がりたくなります。何度もアツアツの温泉に入れば、慣れるときがきます。
ほかのお客さんのジャマにならなければ、水を加えて温度調整できます。43℃ほどまで下げて、ようやくゆったり入る余裕が生まれました。
湯の川温泉を活かして熱帯植物を栽培する
湯倉神社から海に向かって20分ほど歩くと、函館市熱帯植物園にあります。熱帯植物園は、湯の川温泉から得られる熱を利用して、バナナなど熱帯植物を栽培しています。
函館でも観られるスノーモンキー
函館市熱帯植物園には、サル山があります。野生のニホンザルは津軽海峡を越えてませんので、函館市熱帯植物園育ちのニホンザルです。
12月1日~5月5日、ニホンザルも温泉に浸かります。函館市は、北海道の中でも温暖の地域とはいえ、冬はニホンザルも温泉に浸かりたくなるほどの寒さです。こじんまりとした温泉にニホンザルが集まります。
函館でも、スノーモンキーを観ることができます。8月に訪れたため、温泉に浸かるニホンザルを観てません。
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帯広駅周辺→モール泉
帯広駅周辺の市街地でも温泉が湧きます。帯広駅周辺のビジネスホテルでも、温泉を堪能できます。帯広市の隣町、音更町には、釧路方面の十勝川流域に十勝川温泉があります。帯広市街地で湧く温泉も、十勝川温泉と同じ「モール泉」という温泉です。
十勝川温泉は、地元の方の間で、江戸時代以前から「薬の沼」として知られていました。現在は、観光開発が行われており、道の駅ガーデンスパ十勝川温泉、ホテルなど、温泉を楽しむことのできる施設が揃っています。
モール泉とは?
モール泉とは、大昔にできた植物由来の地層「モール層」を通って沸いた温泉です。帯広市の北には十勝川が流れています。十勝川流域は、大昔、アシ類が生い茂っていました。アシ類が枯れ、長い時間をかけて、地中深くに堆積され、炭化されながら地層になりました。石炭ほど炭化されておらず、亜炭、泥炭という物質がモール層の主成分です。モール層を通って沸いた温泉は、褐色~黒色に染まります。
温泉が褐色に染まる理由は、植物由来の有機物であるフミン酸、フルボ酸などが豊富だからです。フミン酸、フルボ酸の濃度が濃いほど、深煎りコーヒーのように黒く染まります。
美肌の湯と呼ばれるのはなぜ?
モール泉の色の正体であるフミン酸、フルボ酸は保湿効果があるとされています。さらに、泉質は、ナトリウム塩化物・炭酸水素塩泉です。アルカリ性のお湯のため、弱酸性の人体は、皮膚の表面で中和され、汚れが取れやすくなります。この2つの理由などから、美肌の湯と言われています。
北海道の市街地で観られるが、世界的には珍しいモール泉
モール泉は世界では珍しいです。北海道では、石狩平野、十勝平野で湧きます。エスコンフィールドHOKKAIDO で使用している温泉もモール泉です。釧路湿原、日本最北端の温泉、豊富温泉もモール泉です。
帯広駅周辺では、1000m以上掘り進めると、50℃ほどの温泉が湧きます。一方、十勝川温泉は、600m程度掘ると、55~60℃のより熱いお湯が沸きます。
駅周辺のビジネスホテルでも、温泉が堪能できる
宿泊したビジネスホテルでモール温泉に入浴しました。帯広駅周辺で湧くモール泉は、浅煎りコーヒーのような琥珀色でした。42℃ほどの熱めの温泉です。お湯に包まれているような柔らかさも感じられました。15分ほど浸かり、長旅の疲労も取れていきました。
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北海道の都市部には、今回紹介した温泉だけではなく、札幌市には定山渓温泉、小樽市には朝里川温泉、函館市には谷地頭温泉など、まだまだ数多あります。
公式サイト
参考文献
地球の歩き方編集室,(2023),北海道2023~24 (地球の歩き方W),学研プラス