【干し柿】軒先に吊るすとできるドライフルーツ甲信越編
結論
新潟県のおけさ柿、長野県南部の市田柿、山梨県の枯露柿。
渋柿の渋みを感じさせなくする先人の知恵が見られる。
特にポリフェノール、ビタミンCが豊富で、おやつにもピッタリ。
干し柿は冬の訪れを告げるスイーツ
寒くなると、柿が美味しく感じられます。正岡子規が「柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺」と詠むなど昔から親しまれています。柿は栄養価が高いことから、「柿が赤くなると医者が青くなる。」と言われています。特にタンニンなどポリフェノール、ビタミンCが豊富です。
実だけではなく、葉も活用されており、紀伊半島では、寿司を柿の葉で包んだ「柿の葉寿司」が名物になっています。奈良県を訪れたときに出会った柿の葉寿司について知りたいかたは、ぜひ、下の記事をお読みください。
干柿の美味しい季節がやってきました。干柿は、渋柿の渋味を抜いて甘くするための知恵です。干すときに生まれる柿のカーテンは11〜12月に見られます。今回は、甲信越地方で出会った干柿について、解説します。
なぜ、干し柿は甘いのか?
渋柿が渋い理由は、タンニンというポリフェノールが豊富に含まれているからです。渋柿は未熟な柿です。動物から身を守るため、タンニンを含んで渋くしています。タンニンが水に溶けやすいため、味覚を感じる細胞に反応して、渋く感じます。
柿を干すことによって柿の表面に酸素を通さない膜ができます。柿の実は人間と同じく、呼吸しています。酸素が欠乏し、アルコールを生み出します。アルコールが酸化されると、アセトアルデヒドができます。アセトアルデヒドとタンニンが反応することにより、水に溶けにくいタンニンが誕生します。
干すことにより、水分が抜けるため、糖分が増します。干し柿の表面に浮いている白い粉は、実から出た糖分です。
なぜ、渋柿でつくるのか?
実は渋柿のほうが甘柿より糖分が豊富です。甘柿も渋み成分のタンニンを含んでいます。タンニンの量が少ないため、生で食べても渋く感じられません。しかし、干しても、渋柿ほど甘く感じられません。
おけさ柿(新潟県)
佐渡島の南海岸にある羽茂地区の名物です。おけさ柿は平たいため、甘柿のように見えます。しかし、実は渋柿です。炭酸ガスやアルコールに漬けることによって酸欠状態になり、アセトアルデヒドを吐き出すことによって、渋みが抑えられ、甘さが引き立ちます。種がなく、濃厚です。しかし、甘さは控えめです。
おけさ柿には、あんぽ柿と干柿の2種類がおみやげとして販売されていました。
市田柿(長野県)
長野県南部、飯田市周辺でつくられています。長野県南部は温暖な気候で、天竜川沿いを中心に柿の生産が盛んです。冬は日照時間が長く、降水量が少ないため、干し柿つくりにピッタリです。大正時代から東京、名古屋など大都市へ出荷されるようになりました。
歯ごたえも感じつつ、ソフトキャンディーほどのやわらかさです、水分とともに糖分も浮き上がります。表面は白い砂糖をまとっています。中は琥珀色です。
枯露柿(山梨県)
山梨県甲州市塩山松里地区で作られている干し柿です。松里地区には、恵林寺、放光寺など武田氏ゆかりがあります。枯露柿は、武田信玄によって誕生しました。戦のとき、食糧としていました。農家の庭先に皮を向いた柿を並べて乾燥させるとき、柿全体に天日が当たるようにコロコロ位置を変えることから、枯露柿と呼ばれるようになったと言われています。
美濃国から蜂屋柿という品種を移植して栽培が始まりました。現在は、「甲州百目」という品種が使われています。カキ一個の重さが「百匁(375g程度)」であることが名付けられました。
シロップ漬けかと疑うほどの甘さを感じました。熟れていて柔らかいです。
今回は、甲信越地方で出会った干し柿について解説しました。干し柿は、持ち歩きに便利かつ栄養豊富のため、おやつにもピッタリです。
参考文献
清水安雄,(2021),ふるさと再発見の旅 甲信越,産業編集センター