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親の立場の難しさを理解して、親に接しよう。 『ビタミンF』


読み終わった時のグワーってかんじ!!!

それぞれの話の家族の構成を簡単な説明を書いて、いつでも思い出せるようにしよう。本当に傑作だった。僕は家族に愛されている。僕の家族は素敵だ。僕は家族を愛したい。そう思える傑作だった。これを22歳で読めたことを有難く思いたい。ハッピーエンド家族の再構築で終わるのではなく、あくまで再生の可能性を開示するだけの、脆くて儚いリアルなお話。いじめは終わらないし、冷めた夫婦も元に戻れない。心の傷は簡単に癒えない。

表題の「ビタミンF」の「F」は、「Family、Father、Friend、Fight、Fragile、Fortune 」など、各物語のキーワードともなる言葉の頭文字。7つの話の中で表される「取り返しのつかなさ」を取り戻すのではなく、抱えたまま生き続ける勇気をくれる。優しくも、厳しい、オブラートに包まれたこの錠剤は、私たちの常備薬になるであろう。

『ゲンコツ』Father・Fight・Fragile

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あらすじ

同期で会社に入社した雅夫と吉岡の2人。そんな彼らも年齢38歳の中年になり、次第に歳のことが気にかかり出します。「まだまだ38だ」と考えて、飲み会の席で仮面ライダーを演じながら若者みたいにはしゃぐ吉岡と、それとは対照的に「もう38だから・・」と若い頃のようにできない自分を悲嘆する雅夫。ある日、雅夫は、街でイタズラを繰り返す少年グループを注意するために闘いを挑むことになるのですが・・。

物語の最後、少年たちに立ち向かったという事実と、洋輔のためにとった自身の勇気ある行動に気持ちの高ぶりを覚え、無意識にヒーローポーズを決める雅夫。

結局、彼は、握ったゲンコツを相手にぶつけることはできませんでしたが、恐怖の対象でしかなかった少年たちに勇敢に立ち向かえたことで、若い頃の気持ちを取り戻すことに成功したようです。

最後のシーンのヒーローポーズは、もしかしたら、彼が自信を取り戻し、自らを誇らしく思えるようになったことを示す証だったのかも。

伝えたいこと

若さの特権「野心」大人になってもずっと。

「――いつからだろう、歌詞に『愛』とか『自由』とか『夢』が出てくる歌を歌うのが気恥ずかしくなったのは。」

はずれくじFather・Fortune

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妻の淳子が手術で入院し、今まであまり話をしてこなかった息子(勇輝)と2人きりになって不安を覚える父の修一。ある日、道端で「宝くじ売り場」を見かけた修一は、父親との過去に思いをはせるのですが・・。

現実の息子にどんどん不満をつのらせる修一。修一は、息子の勇輝を「はずれ」だとも言います。

自分が息子に嫌悪感を抱くように、もしかしたら自分の父親も、同じように当時の息子である自分に不満を覚えていて、どこかへ行ってしまいたいと思って宝くじを買ったのではないかと想像を巡らせます。

物語の後半、修一は、父が宝くじを実際には1枚しか買っていなかったことを知り、本気で今の日常から逃避しようとなどは思っていなかったのだと気付きます。

そして、そのことをきっかけに、修一の胸に「勇輝ときちんと向き合おう」という気持ちが湧き起こり、息子が通う塾へと足を向けることになります。

「宝くじ」と「はずれくじ」、さらに「2つの父と息子の関係」が対比するように描かれたストーリーは、読み返すたびに新たな発見があって、また、父親の真実に触れて現実に向き合う決心のついた修一が、最終的に勇輝と打ち解け合うという結末も非常に良かったと思います。

「当時の父親は何を考えた?」

この歳になって、お父さんが何を考えてたのか、考えを巡らせるようになってきた。子供は何考えてるかわからない。

息子とうまくコミュニケーションがとれない修一は、今の「自分と息子の関係」を、当時の「父親と自分の関係」と重ね合わせて考えます。

息子と離れたかった。なんでこんな子になっちゃったんだろなあ。親は子供といると、自分の親のことを思い出す。立場が息子から親に移っただけ。親は子供を選べない。それが「はずれ」だったとしても。息子の友達がタバコ吸って、買いに行かされたのを言い返さない性格。息子は素直なのではない、従順なだけだ。親にも友達にも。優しいんじゃない、意志が弱い。妻とは、「言葉の使い方」も「息子に求めてること」も違う。息子は金魚のフンみたい。

父親は好きにすりゃいいと言ってくれた。感謝している。しかし、本音もきけずじまい。「若いころどんな人生を夢見たのか、息子にどんなふうに育ってほしかったのか。」何もきけなかった事を後悔してる。

息子と部下が似ている。

『パンドラ』

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あらすじ

優等生の娘・奈穂美が、万引きをしたことで警察に補導され、さらに彼女がヒデという年上の男と一緒にいたと聞き、気が気でなくなる父親の孝夫。そんな娘の知りたくなかった側面、いわゆるパンドラの箱を開けてしまった孝夫は、娘がそうだったように妻が初めて抱いたのが自分でなかったことや、自分が最初に付き合った忘れられない女性のことなど、開いてはいけない秘密の箱に次々と手を出していきます。妻⇨自分⇨息子と、連鎖的に秘密の箱を開けていく。

最後に父親の孝夫が、オルゴールとともに過去の秘密を封印したことで得られたものは、はたして希望だったのでしょうか?

「お手本を探した、父親として。」

夕食に帰ってきてもしゃべることがない。2日続きの休みが重い。娘と会話ができず、思ったこと。切ない。

娘を女として見ていた。

ブラジャーの模様が透ける。ボタンを閉めてほしい。胸を隠して欲しい。そんな娘に「言いたいことあるなら言って。じろじろ見ないで気持ち悪い。」。酷い言葉をぶつけられたことより、見透かされたことが響いた。

娘・妻を尊重できないが、愛ゆえ憎めない父親の姿

正直、過保護すぎると思った。まだ中学生なんだぞ、義務教育なんだぞ、親の責任なんだぞ。彼氏を殴りたい。不愉快。いつまでも親の思い通りには行かないんだから、と諭されるとムカつく。

「信じてて裏切られたんだぞ、親の信頼と期待を。」妻は「期待って。娘の彼氏まで親が決めるつもりだったの?」

家族のことなど、何もわからない。妻は昼間何してるのか?セックスした相手はおれだけか?悪いのはおれだけか?

別の妻、子供を持つ人生もあったんじゃないか?元カノの電話番号を聞く。家族に秘密を持って見たかった。

「逃げ場所にするなよな、思い出を。」

「おまえは嫌かもだけど、お父さんはおまえと話すのずっと楽しいからな。一生、お父さんはお父さんだからな。」言いたいことなんて結局これしかないんだよ。

親は身勝手だ。ある時期まで早く大きくなれと願い、ある時期からこのままでいてほしいと願ってしまう。親に話せない秘密はいくつあるのだろう。それをいつか話してくれるのだろうか。話す相手は母親なんだろうな。

元カノの電話番号を忘れた。

「親という立場の難しさを理解して、自分の親に接しよう。」

一番はこれ。完璧じゃない子供のように、大人も完璧な訳が無い。なんら変わらない気づいたら歳を重ねていくらか経験が多いだけ。自分勝手で思いやりを持てない時だってある。自分がそうであるように。親に期待をしていたのは自分だった。改めよう。

『セッちゃん』Family・Friend・Fight

あらすじ

娘の加奈子が突然話題にした、クラスのみんなにいじめられている「セッちゃん」という女の子。実は、そんな人間は実際に存在しなく、いじめられているのは加奈子自身で、彼女が自ら「いじめられっこ」を作り出し、他人のように語っているのだと父親の雄介は知ることになります。

波風なく幸せな日常が続いていた家族に起きた突然の災い。
本当のことを問いただすべきなのか、嘘を守ってあげるべきなのか――。

クラス担任の先生からこんなことを聞きます。
「学校で生徒会長に立候補したのは、自分の居場所を失いたくなかったからではないでしょうか。そして、それと同様に、家庭でも自分の居場所を失うまいとしたのではないでしょうか。」

「流し雛」という、不幸を背負ってくれる力のある「ひな人形」を偶然見つけては果たして前を向けたのか?

「誰かを嫌いになるのって個人の自由じゃん。」

実は自分に言い聞かせていた。みんな自分を嫌うけど自由か、と。この話の結論って、もし嫌いでも相手に危害を加える事は良くないと思う。だと思う。

メッセージ 「それでも前に進むしかない。」

「流し雛」を川に流したからといって現実が大きく変わるわけではありません。でも、儀式と呼ばれるものは元来そういうもので、自分の気持ちに区切りをつけること、前を向いてもう一度歩けるようになること、それが本来の役割なのでしょう。

『なぎさホテルにて』

あらすじ

17年ぶりに家族とともに訪れた海辺のホテル『なぎさホテル』。そこは、父・達也が20歳の誕生日を祝ったホテルで、かつての恋人・有希枝と一緒に泊まった思い出の場所でもありました。当時、ホテルでは、未来の指定した日に手紙が届く『未来ポスト』というサービスが行なわれており、達也と有希枝はそれを使って17年後の自分たちに向けて手紙を書いていました。――あれから月日が経ち、手紙を受け取った達也が再び『なぎさホテル』を訪れると・・。

かつての恋人との再会をひそかに期待して、家族とともにホテルにやって来た達也。

実はこれが最後の家族旅行で、妻の久美子とはすでに心が離れていました。

彼は、「妻に悪いところがあるのではなく、自分が今の人生に不満を覚えるようになったから」と内情を語り、さらに、「もしも結婚しなかったら別の人生があったかも知れない」と、今とは違う世界に淡い期待を抱きます。

ディナーが終わってから、部屋でかつての恋人からの二度目の手紙を読んだ達也。

その時になってようやく彼は、自分のとった行動がとても身勝手なことで、妻と子ども2人といる今の家庭がどれだけ幸せなものであるかということに気付かされます。

家族最後の思い出ではなく、新たな出発点となった『なぎさホテル』。

物語の結びに描かれた、思わず笑みがこぼれるような家族4人の幸せなひとコマがとても印象的でした。

「こんなもんかって人生が見えてしまったんだよ。」

俺の人生はこれか、なーんだ、と拍子抜けするような。ちぇっと舌を打ちたくなるような。といって今更やり直しはできない。

最初は「いや違うんだよ、嫌いになったわけじゃない。」けど、段々と全てが鼻につく。一緒にいるだけで嫌悪感を抱くようになった。「人生が見えてしまったんだよ、こんなもんかって。ジグゾーパズルって後半絵柄わかったらつまんなくなる。それと一緒。」

メッセージ「"もしも"は未来への期待」

「子どもの世界で『もしも』という概念がなくなったらつまらなくなるんだろうなぁ・・、でも、大人になってからの『もしも』は、ろくなものが続かない・・。」

▶▶子どもの時の『もしも』は、未来に向けての期待を込めた「仮定」でしたが、大人の『もしも』は、これから起こるであろう未来への「不安」や「恐れ」が現れてしまうことが多いようです。具体例で言えば、「もしも病気に・・」「もしも事故に・・」「もしもリストラに・・」などでしょうか。

『かさぶたまぶた』

後半の怒涛の展開がヒヤヒヤした〜。

■あらすじ

落ち込んだ様子を見せる娘の優香に心配を抱く父・政彦と母・綾子。ある日優香が、学校から課題として出されていた自画像に、自身の心の闇を象徴するかのような邪悪な仮面の顔と、雪だるまみたいなからっぽな顔を描きはじめて・・。

優等生の優香が悩みを抱える原因となった『風の子学園』での出来事。

彼女は、耳の聴こえない子どもたちに『だるまさんがころんだ』を提案。「こんな無神経な自分は優等生にふさわしくない」と自己嫌悪。

そして、自分は邪悪で空虚な存在であるというラベルを貼った結果、その表象として例の絵を描くことになるのです。

一方、優香とは対照的に、楽天家でのんびりした性格の息子・秀明。

ある日、飲み会で酔いつぶれ、友人たちに介抱されて家に帰ってきた秀明は、叱咤してくる父親・政彦に対して「えらそうな口をたたくな」とぶち切れ、部屋にあるものを壊し暴れ出します。

実は彼は、大学を浪人したことを気に病んでいて、それを友人に同情されたことがとてもつらかったのです。

完璧主義で周りの評価を重視し、強さを求め続ける父親に対して、息苦しさを感じはじめた子どもたち。

大人になると世間体を繕うために、虚勢を張って強い自分を演じなければなりません。でも、本当は誰しもが弱い部分を持っていて、そんな『弱さ』を子どもたちの前にさらけ出すことで、父親の政彦は、傷が入った親子の関係を修復していきます。

優香が最終的に完成させて描いた、自画像の『目を閉じて笑う顔』。

その絵のことを、父親の政彦はこう言い表します。

「もしかしたら、閉じられたまぶたは『かさぶた』なのかもしれない・・」

ふとしたきっかけで壊れ傷ついてしまった家族の絆。まだそれは『かさぶた』の状態。完全に治るまでは時間がかかりそうです。

その傷が治る『いつか』に向けて、家族がこのまま前を向いて歩んでいってくれることを願う限りです。

子供より妻がわからなくなる。

うわ、リアルだなあと思った。子供が部屋にこもるようになって、寂しくも気楽でもある。話さなくなって何考えてるかわからなくなるのは覚悟している。けど、妻とは長年いたのに最近わからないことが増えてきた?冗談じゃない。自分が家にいない時に、いろいろなことが起きて、いろいろなことが決まる。

「弱さ」を見せよう。

弱さを隠して取り返しつかなくなった反面教師の例だろう。けど、それは家族のため周りのためを思って父親はやっていた。

「強くない。余裕なんてない。間違ったことをしたくなくて、理想の自分になりたくて、ずっと頑張ってきただけじゃないか。」

それをつっかい棒を心に立てるという表現を何度も使っていた。けど、やっぱ父親は弱みを見せ、子供を決めつけず、完璧でいるべきじゃなかったと思う。

娘は母に泣いて相談してた。何も気づかなかった。後で、妻に娘は「お父さんには言わないで。」と約束していたことを知った。絶対正しいと思って言ったことに対して「お父さんに黙っててって娘が言ったのは、そういうところなのよ!!どうしてそれがわからないわけ?」と言われた。怒りの先の寂しさ。

飲み会の帰り、無理した自分と娘を重ねた。娘も脆かったんだ、本当は疲れてたんだ。つっかい棒を立ててたんだな。なのに、俺は気づけず、力になれず、求められもしなかった。

そして、酔っ払った兄に「父さん、恥ずかしいよ。」これは最低すぎる。
兄「なんでもわかってるって顔してよ!みんなうんざりなんだおまえに!」
母「あなたには言えないわよ。」

『母帰る』 

■あらすじ

妻の百合と娘2人の家族4人で暮らす主人公の僕。

ある日姉から電話があり、父親のことで相談を受けます。実は、僕と姉の2人が家庭を持った頃に両親は離婚。母親のほうが家を出ていってしまったのです。その後、一人取り残された父親が、姉に「母親にもう一度会って暮らしてみたい」とお願いをしてきて・・。

久しぶりに帰ってきた実家で見ることになった父親の老いた姿に、僕は、大人になったからこそ感じる育ての親への何とも言えない感慨を覚えます。

この物語では、次の3つの家族の姿が描かれます。

1. 長年連れ添った伴侶に出ていかれ、もう一度一緒に暮らしたいと考える父親。

2. 優しくいい人だっと思っていた夫が不倫をして離婚し、女手ひとりで子育てする姉。

3. 夫婦仲睦まじく、子どもたちとともに理想的な家庭生活を送る僕。

そんな、三者三様の全く異なる家族のかたちです。

何が幸せかの定義が曖昧になり、多様性がどんどん意識されはじめてきた現代。私たちは、あらためて「幸せ」や「家族」とは何かについて考える必要があるようです。

「息子の結婚を見届けて、母親の仕事を全うした。」

そう簡単には壊れないと信じて、けどなんとも呆気なく家族は壊れてしまう。

幸せも家族も全て違う。

何が正解なんてない。そういうこと!!




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