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技術史

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物作りの歴史・様々な身の回りの製品の歴史を簡潔に紹介します。
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記事一覧

木材で飛行機をつくる

木材で飛行機をつくる

20世紀初頭に生まれた、飛行機のような高度な機械なら最初から金属素材が使われていたはずだと思われるかもしれない。

しかし、エンジンの出力が低かった初期の飛行機において、機体に何よりも求められたのは、軽量であることだった。木材は重量比で見ると金属と同じくらいの剛性を持っているため、初期の飛行機には、木材が大量に使われていた。
 
木材は木目に沿った方向とそれに垂直な方向とで性質が大きく異なる。成形

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クリミア戦争で国家的事業となった天気予報

クリミア戦争で国家的事業となった天気予報

ヨーロッパでは、すでに17世紀中には気圧が低くなると天気が悪くなり、高くなると良くなることがわかっていました。

1820年になると、気圧の分布と移動がわかれば天気予報が可能になると考えられ、1820年にドイツのブランデスが、1783年の1年間の天気図を作成した。それが、世界最初の「天気図」となります。

1854年、クリミア戦争のさいに、フランスの軍艦が黒海で急な嵐に遭遇して沈没する事故が起こる

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『もののけ姫』と『たたら製鉄』

『もののけ姫』と『たたら製鉄』

古来日本では「たたら製鉄」による鉄づくりが発展していました。たたら製鉄とは、炉内に原料と木炭を入れて火をつけ、「ふいご」で送風して火力を高めて精錬する方法です。
宮崎駿監督のアニメ映画「もののけ姫」は、中世(室町時代のころ)の日本の鉄を作る村が舞台です。威勢のいい女性たちが踏み板を踏むシーンがありますが、あの踏み板は鉄をつくる炉に空気を送る「ふいご」です。実際は大変な重労働なので、女性が踏むことは

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イラストで学ぶ『ロボットの歴史』

イラストで学ぶ『ロボットの歴史』

ロボットとは、コンピュータや特別なプログラムを誘導されて、一連の物理動作を行う機械のことです。ロボティクスの歴史における代表的な出来事を見てみましょう。

イラストで学ぶ『AIの歴史』

イラストで学ぶ『AIの歴史』

近年、生成AIに代表されるように、人工知能(AI)が注目されています。AIの進歩の過程をまとめてみました。

インターネットの始まり

インターネットの始まり

 世界でひとつのインターネットの仕組みは、どのようにして誕生したのでしょうか。
 インターネットができ、世界中で共通して使われるようになったきっかけは、2つの技術が大きく関係しています。

 一つ目は、「ARPANET(アーパネット)」の誕生です。1967年にアメリカで研究が開始され、世界で初めてのパケット通信のネットワークです。この研究から、現在のインターネットで使われているTCP /IPとい

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【古書探求】電撃の過殺

【古書探求】電撃の過殺

 以前もご紹介した、明治期に小学校の教員を経て、科学読み物などを出版した石井研堂の著書「電燈の巻」

 日本の技術が未熟な時代に、電気について理解して、明治期ならでは解説をし、独自の視点の発明品の着想も書かれています。当時の時代背景も垣間見れてとても面白い。
 
 今日取り上げるのは、電気保安についての一説です。
 
「僕の覚えているだけでも、電灯線で殺されたのが、だいぶあります。神田の牛肉店の女

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【古書めぐり】東京電灯 案内冊子

【古書めぐり】東京電灯 案内冊子

 電気エネルギーを使った電灯が日本で初めて点灯したのは明治10年のことでした。この電灯公開をはじめとして、以降さまざまな記念式や開設式に臨時に電灯が使われ、ランプよりはるかに明るい夜の灯火として注目を集めるようになります。
 この機運のなか、明治15年に東京電灯会社が発足し、日本橋の南茅場町の電灯局で、エンジン式の火力発電が稼働しました。当時は1660灯分の電力供給です。

 電気エネルギーは、電

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【技術史】ウィーン万国博への参加

【技術史】ウィーン万国博への参加

ウィーン万国博への参加は、日本の伝統工芸品を出品することと、技術伝習に力点が置かれたのに対して、アメリカ独立100周年のフィラデルフィア万国博への参加の目的は、他国の出品物の研究調査に重点が置かれました。日本の産物と同種でありながら製法の異なる物、日本に産しない物、貿易上競争となる物品などについて精密な調査が行われました。
 
さらに、この万国博の参加の経験にもとづいて、内務省は国内で大博覧会を開

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万博と日本の近代化1

万博と日本の近代化1

1851年、イギリスは世界で初めて万国博をロンドンで開催されました。それは1750年ごろからイギリスで起こった新しい工業社会の時代に入ったことを、世界に示そうとするものでした。

アメリカやインドから供給される原材料を工業製品化し、世界の工場に送り込む。この工業社会のシステムの構築により、イギリスは7つの海を支配していました。
博覧会は一種の見本市として国内の産業の発展に好影響を与えるという一面も

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ワールド・ワイド・ウェブ

ワールド・ワイド・ウェブ

今やなくてはならないウェブの世界だが、誰がどういう思いで、作ったのでしょう!?

ティム・バーナーズ・リーは、スイスのCERN(欧州原子核研究機構)でソフトウェアエンジニアとして働いていたときに、ウェブを作りました。バーナーズ・リーはCERNを歩き回っていて、廊下を伝わっていくニュースの速さに着想を得ました。情報が集まるそういう場所では、人々は会話を小耳にはさんだり、掲示板に貼られたチラシを読んだ

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【技術史】ガソリン事故がきっかけでうまれた~自動車~

【技術史】ガソリン事故がきっかけでうまれた~自動車~

自動車が人間の歴史の中に登場して約1世紀、ほとんどの人間が自動車なしでは生活できなくなってしまっている。この自動車はカール・ベンツという一人の機械好きのドイツ人によって発明された。

ベンツが自動車を考え出すきっかけは、当時めずらしかった自転車だった。当時の自転車は、ペダルが直接前輪についていたため、乗りにくいばかりか、前に進むために大変な力が必要だった。

そこでベンツは自転車にエンジンを取り付

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魔法瓶のルーツは実験器具

魔法瓶のルーツは実験器具

熱はどのように伝わるのでしょうか?物質は高温になると分子の動きが活発になり、低温になると動きが大人しくなります。熱の移動は活発な動きの分子がぶつかることにより高温から低温に伝わります。

イギリスの物理学者、ジェームズ・デュワーは、分子がほとんどない真空に近い状態であれば、熱は伝わらないと考えました。そこで、1873年にガラス容器を2重構造にして、その間を真空にしたデュワー瓶を発明しました。
デュ

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【技術史】注射

【技術史】注射

その昔、薬といえば飲んだり塗ったりするものでした。17世紀にイギリスの医師、ウィリアム・ハーベーが「血液循環の原理」を発見すると、体中に張り巡らされた血管の中の血液が流れることで、体の各部分が必要としているものが届けられ、いらないものが回収される、ということが世に知られました。
 
飲んだ薬が胃や腸から、塗った薬が皮膚から吸収されるのを待つよりも、血管などから直接体内に入れたら効果が早いという考え

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