Spotifyのバトンを繋ぐ 『ユニコーン企業のひみつ』
「現場向け動画 DX」を実現するための SaaS「tebiki」を開発しているエンジニアの渋谷です。
角谷さんの Twitter に弊社も当選したので、『ユニコーン企業のひみつ』のブックレビューを一足先に書いてみました。献本ありがとうございます!
この本について
本書は Spotify にアジャイルプロジェクトマネージャーとして入社し、その後 iOS エンジニアにキャリアチェンジした著者による、当時ユニコーン企業であった Spotify でのソフトウェア開発についての本です。(※1)
原著のタイトルは『Competing With Unicorns』で、そのまま訳すと「ユニコーン企業に勝つには」といった感じになりますが、
私の上司もチームの代わりに決定しようとはしなかった。「情報が足りないとか、文脈がわからないとか、全体像に疑問があるとか、そんなときは私のところに来てほしい。だけど、これはあなた方が自力で解決すべき問題だ。私は何をすべきかを指示するつもりはないよ」
のように、Spotify で実際にあったであろう会話を交えて、Spotify の開発手法や組織設計について網羅的に書かれており『ユニコーン企業のひみつ』というタイトルに十分答えた内容となっています。
どういう人が読むとよいか
文中では『モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか』や『アメリカ海軍に学ぶ「最強のチーム」のつくり方』といった本が引用として出てきますが、他にも『ピープルウエア』のブラックチームの話のような例など、古今の名著で読んだことのある知見がちりばめられています。
つまり、あくまで Spotify が独自に作り上げたオリジナルなやり方ではなく、先人のこれまでの知見を彼らはこんな風に適用させたよ、という一つの事例として読むのが正しそうです。
組織論の本を読んでみたけど、ウチの会社ではどう活かしたらいいかが分からない…というリーダーやマネージャーが本書を読むと学びが多いはずです。個人的にはこれまでの学びの実践を、この本で追認できたという点でとても良かったです。
一方で、この内容をそのまま自分たちの組織に適用していいかどうかについては議論の余地がありそうです。
Spotifyモデルへの批判について
訳者あとがきにもあるように、一時期 Spotify はもう Spotify モデルを使っていないという話がかなりセンセーショナルに喧伝されました。
時系列を調べてみると、Spotify が1年半の間に3倍の3,000人になったタイミングで、著者が経験した Spotify モデルが上手くワークしていた時期とはズレているようです。(追記あり)(※2)
ここから分かることは、Spotify モデルのアジャイルフレームワークがフィットするかどうかは、組織の構成やタイミングといった外的要因が大きく影響し、また本書にある Spotify モデル以外の内容も同様だということです。
社会学的な問題に立ち向かう
実際のところ、ソフトウエア開発上の問題の多くは、技術的というより社会学的なものである。
―― 『ピープルウエア 第3版』
トム・デマルコの言う通り、本書を手にとった私たちが直面している問題は、組織の社会学的なものであることがほとんどだと改めて感じています。
であるならば、やはり本書の内容をそのままコピーして実践しても上手くいかないことは自明に思います。
だからこそ、今一緒に働いている人たちやこれから一緒に働くであろう人たちにとって「毎朝、仕事にいきたくなるような、全力を尽くしたくなるような、自分らしくいられるような」組織になるにはどうしたらいいか、この本に書かれた方法論を再解釈し、Spotify のバトンを繋いで次に行動していくのは、自分たちの番なのだと改めて思った次第です。
※1)Spotify は 2018/4/3 に上場を果たしたため、現在は定義上ユニコーン企業ではない
※2)Sony が Spotify と提携して「PlayStation Music」をスタートさせたのが 2015 年で、本書にその例が出ているため
追記)組織の構成やタイミングといった外的要因だけでなく、どのように関わっていたかの視点によっても異なるかも、なんですね👀
コメントありがとうございます!
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