壊れたスマホが教えてくれた大切なこと
こんばんは。
Teachers代表の中場牧子です。
マインドフルネスを基盤にしたデジタルデトックスのプログラム「Mindful Digital Diet Program =デジエット」づくりをしています。
それで、しばらくの間は「マインドフルネス×デジタルデトックス」をテーマに書いていこうと思います。
プロローグ
先月、子ども(中3男子、高校受験生!)がうっかりスマホを壊してしまいました。まさに、このクラウドファンディングが始まる数日前の、11月下旬の出来事です。
壊したときの状況を詳しく聴くと、歩きスマホをしていて、手からスマホがスルっと滑って地面に落下。スクリーンにヒビが割れたスマホは、それ以降息を吹き返すことはありませんでした・・・。
子どもはそれまで、私がどんなにスマホ時間を減らすように口を酸っぱくして言っても、「手遅れ。無理」の一言。全く聴く耳をを持ちませんでした。
それがある日突然、スマホは自ずから強制終了してしまったのです。
正直なところ、「なんと都合よく展開するものだ・・・シメシメ!」と思いました。クラウドファンディングで脱スマホ対策を扱うということもありますが、一人の母親として、数か月後に受験が控えているというのにいつまでもスマホに張り付いてゲームやSNSを止める気配のない子どもに、業を煮やしていたからです。
いくら「もうスマホは止めなさい!」と叫んでも、聞く耳持たずで馬耳東風。夜に私が寝た後に、友だちと延々とおしゃべりをしていることも日常茶飯事。食卓でも落ち着きなくスマホを取り出す。トイレにもスマホを持って入る。問題集を開くも、10分もしたらスマホを手にスクロールしている・・・。
「当たり前だけれど、高校に合格するまで、スマホはなしね。」
そう穏やかに言い渡すと、子どもはうな垂れつつも、「怒られなくてよかった~」という複雑な表情を浮かべて去っていきました。
さて、スマホが壊れてからのこと。
子どもが言うには、最初の2~3日はつい手がスマホを探してしまい、身体が動いてしまったそうです。そして友達とLINEでやりとりできないことにも不便さを感じている様子でした。だけれど、若さゆえの適応力が功を奏して、すぐに「スマホがない」という状況にも慣れていったようでした。
会話が増えた日常
スマホが壊れる前の我が家では、子どもは「ながら会話」が当たり前になっていました。スマホを片手にゲームをしながら、「ハーイ」と適当に相槌をうつのが日常。かという私も実のところ、自分が忙しいときには、子どもがスマホにくぎ付けになっているのを、むしろありがたいとさえ思うときもありました。
しかし、スマホがなくなって数日後、子どもが次第にたくさんの話をしてくれるようになりました。突然言葉が滑らかに流れ始めたのです。
私自身も、子どもの表情のなかにそこはかと残る幼さや柔らかさに安心感を得て、しっかりと向き合って話を聞けるようになりました。すると、話題が深まるだけでなく、子どもの微細な表情や弾んだ声のトーンから、その朗らかなエネルギーを心地よく受け取って、私自身が癒されている感覚が沸き起こるのを感じました。
勉強への集中力がアップ
スマホがなくなって一週間ほどたったときのこと。それまで打ち捨てられていた数学の問題集を、突然、ガリガリと解いている姿を見かけることが増えたのに気が付きました。
「『チャート式』?・・・一体全体どうしちゃったの?」
と私が尋ねると、煩そうに、素っ気なく、そして若干きまり悪そうに、子どもがこう言ったのです。
「暇つぶししてんの!」と。
そして彼自身が言うには、スマホが使えなくなったことで、勉強に集中しやすくなったのは間違いないとのこと。以前は「ちょっとだけ」とスマホをスクロールし続ける時間が、気づけば長くなり、勉強の手が止まっていることが多々あったそう。そして机の上に置いているスマホがチラリとでも目に入ると気になってしまい、ついついスマホを手にとって通知が来ていないかを、数分おきにチェックしてしまっていたそうです。
そして先日、ついに子どもがぽつりと「スマホがないと勉強はしやすいよね。受験前にスマホが壊れたのは、もしかして、感謝かも・・・」と少し安堵した口調で言いました。
さて、子どものスマホと学業成績との相関関係については、次のような研究があります。
この記事では、スマホの使用時間が長くなるほど、「1時間未満」を境に成績が下がっていく様子を次のようなグラフで表しています。成績(縦軸)は、スマホ使用が「1時間未満」の場合が最も高く、使用時間(横軸)が長くなるほど低くなっているのがわかります。
そして、多くの中高生が平日3時間以上、休日4時間以上スマホを使っているのが現状なのです。
電車の中での新しい発見
子どもの第一志望の高校は、片道で1時間半かかります。
それ故、受験校の説明会や見学会への電車移動中、以前はぼんやりとスマホをスクロールしながら過ごしていた時間が、子どもにとっては「スマホなしの手持ち無沙汰な時間」に変わりました。
しかし、その時間がただの「暇」「退屈」では終わりませんでした。子どもはゆったりと受験用の問題集や一問一答集を眺めながら、私に問題を出してくるようになりました。そして私が解けると「結構、やるじゃん!」と快活な一言。そして私が「う~ん・・・なんだっけ。忘れちゃった。ヒント!ヒント!」と苦笑しながら返すと、「学歴詐称?」と嬉しそうに軽口をたたいてくるようになりました。
そういう時間も、かけがえのないひと時です。スマホを手にしていたときには、忘れていた温かな時間の流れを取り戻した実感がありました。
眠りと安心感
更に、夜はベッドで寝落ちするまでスマホをいじることが当たり前だった子どもが、スマホがなくなったことで「マッサージして」とリクエストするようになったのです。
この変化には私自身が驚きました。
入眠前に延々と繰り広げられていたスマホ時間が、突然スキンシップの時間に変わったのです。からだで冷えている部位に軽く触れながら、一日にあった出来事について、呼吸とともにゆったりと対話をする。すると、いつの間にか、「スー、スー」という規則正しい寝息が聞こえてくる・・・こんなのは、何年ぶりでしょうか?
「久しぶりに眠れるようになった。これって、マッサージ効果かな?」と嬉しそうに子どもは報告してくれたのを、じんわりと私自身が幸せを感じていました。
日本の中高生は、世界的に見ても夜更かしをしているそうです。しかし、これらの状況を作り出しているのは、私たち大人の社会環境や期待であるとも言えます。子どもたちが十分な睡眠を確保できるよう、家庭や学校、社会全体での取り組みをすることはできないものでしょうか。例えば、デジタルデバイスの使用時間を制限するルール作りや、学業と休息のバランスを考慮したスケジュールの調整などに取り組む、というように。
気づいたこと:スマホが「なくなる」ことで「得た」もの
スマホが壊れたときは、確かに一瞬「勉強できればそれでいいかな」と思いました。でも、そこから始まった日々は、そんなものを吹き飛ばすほどの幸せな感覚をもたらしくれました。
家族の時間の豊かさや、子どもの成長を見つめ直すきっかけとなったのです。
もちろん、スマホは便利であり、今の生活に欠かせないツールです。ただ、その便利さが、私たちの日常の中で失われがちな「本当に大切なもの」「心を向けたいもの」を覆い隠してしまうこともあるのかもしれません。
スマホが壊れて動かなくなったことで、思春期の子どもとの距離が大幅に縮まり、日々の中に新しい発見が生まれました。そして、親としての私も「今ここ」に意識を向ける時間が確実に増えました。
エピローグ
子どものスマホが壊れた日から始まった、私たちのちょっとした変化。これらはスマホがない生活の中で生まれた「副産物」でしたが、私たちにとって大きな気づきとなりました。そして子どもは、「高校に入っても、スマホは・・・もしかして必要じゃないのかも。なくてもやってけるじゃん。やっぱ、スマホないと勉強できるしさ。」とさえ言うまでになりました。
それは本当に驚きでした。あれだけ朝から晩までスマホに張り付いていたというのに!
わずか3週間で、ここまで変化するとは想像だにしませんでした。
そして、高校生になってスマホをまた持つようになったとしても、今このときに得ている感覚は、このあとの彼の人生にとって大きな意味を持つと確信しています。
もし、あなたやあなたの大切な人に「スマホのない時間」を試す機会があれば、ぜひ実践してみてください。
新しい発見と幸せの感覚がきっと、あなたを待っていますから。