SIBIPのソーシャルインパクト
タイとミャンマー国境周辺地域のコミュニティの課題解決を目的とした社会起業家を支援するプログラム、2025 Social Impact at Borders Incubation Program (SIBIP)の応募者のビジネスアイディアだけではなく、国境周辺地域を往来していると思いがけず多様な社会性のあるビジネスに遭遇します。
ソーシャルエンタープライズ、ソーシャルビジネス、ソーシャルアントレプレナー、ソーシャルインパクトという言葉を使わずとも、
人や地球、自分と繋がる誰かや何かを想い、行われている取り引き(ビジネス、収益活動)があります。そんな取り引きに触れるたびに心が温かくなります。
「SIBIPが支援するソーシャルビジネスやソーシャルアントレプレナーの『ソーシャル(社会性)』は具体的に決まっていますか。定義ありますか。」と聞かれることがあります。
世界にはソーシャルビジネスやソーシャルエンタープライズの定義は多数存在します。
例えば、グラミン銀行創設者で2006年ノーベル平和賞受賞者であるムハマド・ユヌス博士が提唱する、ビジネスを通して社会問題を解決する新たな経済システムである「ユヌス・ソーシャル・ビジネス」の7原則は以下です。
ユヌス・ソーシャル・ビジネスの目的は、利益の最大化ではなく、貧困、教育、環境等の社会問題を解決すること。
経済的な持続可能性を実現すること。
投資家は投資額までは回収し、それを上回る配当は受けないこと。
投資の元本回収以降に生じた利益は、社員の福利厚生の充実やさらなるソーシャル・ビジネス、自社に再投資されること。
ジェンダーと環境へ配慮すること。
雇用する社員にとってよい労働環境を保つこと
楽しみながら。
また、タイの「社会企業促進法(The Social Enterprises Promotion Act B.E. 2562)」では、タイにおける社会企業の定義を次のように規定しています。
社会企業の定義(第4条)
社会企業とは、以下の条件を満たす事業体を指します。
社会的目的の追求:社会企業は、利益の追求だけでなく、社会的な目的(貧困削減、環境保護、教育支援、健康増進など)の達成を主な目標としている事業体です。社会的利益を重要視し、その活動が社会全体に利益をもたらすことを目的としています。
事業の運営:社会企業は、社会的な目的を達成するために、商業活動や事業活動を通じて収益を上げる必要があります。利益の一部を社会的目的に再投資することが求められます。
非営利的側面:社会企業は営利法人であるものの、その利益は主に事業の目的に関連した社会的な活動に再投資され、経営者や株主への過剰な配当を避けます。
法的な認証を受けること:社会企業として活動するためには、タイ政府から認証を受けることが必要です。この認証を受けることで、社会企業としての地位を正式に認められ、法的に特典を享受することができます。
マレーシアの「社会企業法(Social Enterprises Act)」や「マレーシア社会企業ガイドライン」では、具体的な定義は以下のように規定されています。
社会企業とは、以下の要素を満たす事業体を指します。
社会的使命の達成:
社会企業は、社会的または環境的な問題を解決することを目的としています。社会的な目的(例えば、貧困削減、教育支援、環境保護、障害者支援など)を追求する活動を中心に運営されています。
事業活動の主な目的は、利益追求ではなく、社会的利益の創出にあります。
営利と非営利の融合:
社会企業は営利法人であり、商業活動を通じて収益を上げます。しかし、利益は主に社会的ミッションを達成するために再投資され、株主や経営者への過剰な利益配分は避けられます。
収益は、社会的目的を支援するために使用されるべきです。
認証の取得:
マレーシアでは、社会企業として活動するためには、**社会企業認証(Social Enterprise Certification)**を政府機関から受ける必要があります。この認証を受けることで、企業は社会企業としての認知を得て、政府からの支援や特典を受けることができます。
事業の持続可能性:
社会企業は、商業的に持続可能な方法で社会的目標を達成しようとする点が特徴です。つまり、事業活動が自立しており、社会的使命を達成するために長期的に運営されることを目指します。
マレーシア政府は社会企業の認証を進め、社会的目的を持った事業活動が商業的にも成功するよう支援しています。社会企業認証を受けた企業には、資金調達のサポート、トレーニング、ネットワーキングの機会などが提供されます。素晴らしい!!
上記のように社会企業やソーシャルビジネスの定義は多様です。
SIBIPは、タイとミャンマーの国境周辺地域において、
創業期(アーリーステージ)の社会課題の解決や社会性(ソーシャルインパクト)を目的としたビジネスモデルのある、またはビジネスモデルの構築を目指す意図がある起業家を応援することを目的としています。
タイとミャンマーの国境周辺地域はミャンマーからの避難民、難民、少数民族や先住民族が多く、社会課題が貧困や格差などに留まらず多様で構造的です。
その為、SIBIPでは法的なフレームワークや既存の定義にとらわれず「ソーシャルインパクト」を広く捉え、潜在的な可能性も考慮できるようにしています。
そういうと、「全ての企業には、程度に差はあれど社会性があるとも言えるのではないか」と言われます。
確かにそうだと思います。特に国境周辺地域の社会課題の根本原因であるミャンマーの内紛のように平時ではなく有事においては、村の小さな個人商店が村の人々にとって非常に高い社会性を持つと思います。
では、SIBIPは選考において何を重視するのか。
それは、
起業家の人を助けたい、地球を守りたいという想いがまっすぐか
その取り組みには意義があるか
10年後、20年後、ポジティブなインパクトを起こし続けているか
です。
SIBIPというプログラムを通して実現したいことは、
人を助けたい、地球を守りたいという想いのある起業家
起業家を応援する日本のフィランソロピストの想い
そして起業家とフィランソロピストの想いをつなげていくわたしの想い
が共創し、
この国境周辺地域の人々の尊厳が守られ、活き活きと生活できる社会の構築です。
それが、SIBIPが目指すソーシャルインパクトです。