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「教育活動の実施等に関するQ&A」令和3年2月19日更新(解説1)

 文部科学省ホームページから「新型コロナウイルスに関連した感染症対策に関する対応について」令和3年2月19日に更新されています。長期欠席および不登校に関わる内容を見ていきます。
 まず、ポイントとなる点を抜粋します。

教育活動の実施等に関するQ&A[2月19日更新]

①学校における感染症対策に関すること
②感染者が発生した場合や児童生徒等の出席等の対応に関すること【2月19日更新】
③学校の臨時休業に関すること
④学習指導等に関すること【2月19日更新】
⑤その他【2月2日更新】


感染者等が発生した場合や児童生徒等の出席等に関する対応に関すること


問1 感染不安を理由に休ませたいと相談があった場合の出席停止等の取扱いや、不登校児童生徒が自宅等においてICT等を活用した学習を行った場合の出席扱いについて、どのような点に留意すればよいか。
【2月19日更新】

(感染不安等に係る出席停止等について)
○ 保護者から感染が不安で休ませたいと相談があった児童生徒等については、まずは、保護者から欠席させたい事情をよく聴取し、学校で講じる感染症対策について十分説明するとともに、学校運営の方針についてご理解を得るよう努めてください。

○ その上で、単に児童生徒への感染が不安だからとの理由だけではなく、生活圏において感染経路が不明な患者が急激に増えている地域で、同居家族に高齢者や基礎疾患がある者がいるなどの事情があって、他に手段がない場合など、合理的な理由があると校長が判断する場合には、指導要録上「出席停止・忌引等の日数」として記録し、欠席とはしないなどの対応も可能です。
(「非常変災等児童又は保護者の責任に帰すことのできない事由で欠席した場合などで、校長が出席しなくてもよいと認めた日数」について判断することとなります。)

○ 幼稚園についても同様の取扱いとなります。幼稚園幼児指導要録には「出席停止・忌引等の日数」の記載欄がないため、備考欄に「保護者の責任に帰すことのできない事由で欠席した場合などで、園長が出席しなくてもよいと認めた日」である旨をご記載ください。

○ この取扱いは、前述の合理的な理由がある場合に適用されることに留意するとともに、特に小中学生は就学義務も踏まえ、児童生徒の学びの機会が保障されるよう配慮することが重要です。

○ なお、医療的ケアを必要とする児童生徒等や、基礎疾患等のある児童生徒等の中には、重症化のリスクが高いケースもあることから、主治医や学校医等に相談の上、個別に登校の判断をしてください。

(不登校について)
○ 不登校児童生徒とは、相当の期間(原則、年度間に30日以上)学校を欠席している児童生徒であって、何らかの心理的、情緒的、身体的若しくは社会的要因又は背景によって、児童生徒が出席しない又はすることができない状況にある者(病気又は経済的理由による場合を除く)と定義されており、コロナ禍においても同様です。

○ その上で、不登校児童生徒が自宅等においてICT等を活用した学習を行った場合には、「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」(令和元年10月25日付け元文科初第698号)の別記2に基づき、保護者と学校との間に十分な連携・協力関係が保たれていることや、訪問等による対面指導が適切に行われることなどの一定の要件の下、指導要録上出席扱いとすることが可能です。
※「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」(令和元年10月25日付け元文科初第698 号)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1422155.htm

○ 上記の通知に基づく取扱いは、家庭にひきこもりがちな義務教育段階の不登校児童生徒に対する支援の充実を図り、学校への復帰や社会的な自立を目指すものであることから、不登校児童生徒に限り、上記の通知に示す一定の要件の下で適用されることに留意してください。このため、感染不安を理由に学校を欠席する児童生徒について、たとえICT等を活用した学習を行った場合であっても、ただちに出席扱いとすることは適切ではありません。また、不登校が必要な程度を超えて長期にわたることを助長しないよう、個々の児童生徒の状況を踏まえつつ、学校外の公的機関等での相談・指導を受けることができるようにするなど指導上の工夫が重要です。


学校が対応する長期欠席児童生徒3つの背景

 更新された内容には、次の対応が異なる認識を持っていることが明確になりました。

⑴合理的な理由があると校長が判断する場合
⑵不登校児童生徒
⑶感染不安を理由に学校を欠席する児童生徒

 特に⑶感染不安を理由に学校を欠席する児童生徒については、「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」(令和元年10月25日付け)を挙げて、

通知は、不登校児童生徒に限り適用されるものである
通知は、家庭にひきこもりがちな義務教育段階の不登校児童生徒に対する支援の充実を図るもの
不登校児童生徒に対する支援は、学校への復帰や社会的な自立を目指すものである

 として、文科省の基本姿勢における不登校児童生徒支援の目的が再確認できました。
 さらに

感染不安を理由に学校を欠席する児童生徒について、たとえICT等を活用した学習を行った場合であっても、ただちに出席扱いとすることは適切ではない

不登校が必要な程度を超えて長期にわたることを助長しないよう、個々の児童生徒の状況を踏まえつつ、学校外の公的機関等での相談・指導を受けることができるようにするなど指導上の工夫が重要

 として、不登校児童生徒感染不安を理由に学校を欠席する児童生徒を別にとらえていることも明らかになりました。
 「不登校が必要な程度を超えて長期にわたることを助長しないよう」とあります。ここでいう不登校とは、学校に登校していない状況を指していると思われます。しかしながら不登校児童生徒の定義にはあてはまらないとの理解があるようです。
 「長期にわたることを助長しないよう」にとの懸念を抱いており、あくまで「登校ありき」の学校教育と運営の在り方を見直す姿勢は見られないように感じます。

 では、この全国規模でおこなわれた学校の一斉休業や臨時休業をきっかけに急ピッチで進められようとしているGIGAスクール構想のITC環境を駆使した学習環境の整備およびオンライン授業とは、誰のために、なんのためにおこなわれるのか、そしてどの方向にむかって展開されていくのか。認識を再確認したいと思います。

 その前に、感染不安を理由に学校を欠席する児童生徒が学校を欠席し、学校教育の学習指導要領に基づいた在宅学習を自主的に行い、不登校児童生徒支援に適用して出席扱いにされることや、評価に反映することを求めることは、教育機会確保法においては適用されるのでしょうか。教育機会確保法の目的と理念を次に、見ていきます。


教育機会確保法の目的と理念

義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律(平成28年法律第105号)

目的
第一条 この法律は、教育基本法(平成十八年法律第百二十号)及び児童の権利に関する条約等の教育に関する条約の趣旨にのっとり、教育機会の確保等に関する施策に関し、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、基本指針の策定その他の必要な事項を定めることにより、教育機会の確保等に関する施策を総合的に推進することを目的とする。
定義
第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

学校
 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する小学校、中学校、義務教育学校、中等教育学校の前期課程又は特別支援学校の小学部若しくは中学部をいう。

児童生徒
  学校教育法第十八条に規定する学齢児童又は学齢生徒をいう。

不登校児童生徒
  相当の期間学校を欠席する児童生徒であって、学校における集団の生活に関する心理的な負担その他の事由のために就学が困難である状況として文部科学大臣が定める状況にあると認められるものをいう。

教育機会の確保等
  不登校児童生徒に対する教育の機会の確保、夜間その他特別な時間において授業を行う学校における就学の機会の提供その他の義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保及び当該教育を十分に受けていない者に対する支援をいう。
(基本理念) ※一部
第三条 教育機会の確保等に関する施策は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。
全ての児童生徒が豊かな学校生活を送り、安心して教育を受けられるよう、学校における環境の確保が図られるようにすること。

不登校児童生徒が行う多様な学習活動の実情を踏まえ、個々の不登校児童生徒の状況に応じた必要な支援が行われるようにすること。

不登校児童生徒が安心して教育を十分に受けられるよう、学校における環境の整備が図られるようにすること。


「不登校児童生徒の定義」が、この法律で初めて成立しました。それまで不登校は、児童生徒がおかれた状況を示すものでしたから、その状況に必要な支援という基本姿勢がありました。「不登校児童生徒とは」の定義が明確になったことで、その状況を線引きする根拠ができたことになります。
 不登校児童生徒とみなされるには原則、年度を通して30日以上の長期欠席があげられますが、30日未満であっても、30日を超える可能性を持つ児童生徒の早期対応を言われています。
 そのことから、状況に応じて対策が講じられるのとは、少し違った様相を持って、児童生徒の区分別による対応が細かに規定されることになります。

 教育機会確保法の成立には、不登校支援・夜間中学校の整備、そして外国籍を持つこどもたちの就学支援が含まれています。不登校支援においては、登校刺激を受けることなく、学校復帰を目的としない支援が求められました。そこにはオルタナティブスクールやフリースクール、ホームエデュケーションのような多様な教育体系で学び成長するこどもたちと家庭に目を向けた支援が期待されましたが、学校以外の多様な学習の機会の確保にスライドし、社会的自立を目指すものになりました。


感染不安を理由に学校を欠席する児童生徒と家庭に向けられた視線

 先に確認しておきたいのですが、kokageでは、「学校に行く・行かない」を選ぶ理由について、このように考えています。

学校教育を受けること・学校に登校することは、保護者が第一義的な責任を持って決定することである。

その理由に正当性が問われる必要は無い。

その判断と決定は自己責任論で収められることなく、学校と家庭、あるいは地域によって、こどもを中心として、こどもの暮らしに不利益がおこらないような配慮が求められる。


 感染を不安とすることには、個々人が持つ価値観や思想等によって違いますし、その根拠はそれぞれに持っているものであって、それが正しいとか間違いであるとかを説明したり、証明する必要はないと考えます。
  そして、「不安がある」という理由は尊重されるものです。

 その結果、選択した事柄について、自己責任に問うことで、誰のどこからも支援を受けられないことはあってはならないことのはずです。支援の中身はいろいろです。希望に沿うものもあれば、将来的に必要なところに向かうためのものもあるでしょう。いずれにせよ、それらは支援を受ける側の意思を尊重することは最大限に必要ですし、協力を求めるのであれば、必要な説明をし、納得と了承を得る機会と提供は必要のはずです。それは単純に割り切れるものでは決してありませんし、短い時間で結論が出るものでもないことでしょう。

 その観点からいえば、「感染不安を理由に学校を欠席する児童生徒と家庭」とは、まるで昔の「学校に行かない児童生徒と、学校に行かせることができない保護者」への扱いを受けているかのようです。それは以下の部分から感じ取ります。
 

感染不安を理由に学校を欠席する児童生徒について、たとえICT等を活用した学習を行った場合であっても、ただちに出席扱いとすることは適切ではない

不登校が必要な程度を超えて長期にわたることを助長しないよう、個々の児童生徒の状況を踏まえつつ、学校外の公的機関等での相談・指導を受けることができるようにするなど指導上の工夫が重要

ー文科省Q&A「感染者等が発生した場合や児童生徒等の出席等に関する対応に関すること」より抜粋

 なぜ、ここまで「不登校児童生徒にしないため」というような姿勢がみられるのでしょうか。
 

 感染不安を理由に学校を欠席する児童生徒と家庭にみえる要望

 それは「選択登校制」のキーワードで確認することができそうです。
もっとも注目される要望は「オンライン授業」です。

・オンライン授業とはなにか、そのイメージ像
・学校教育を履修したとみなすことができるオンライン授業とはなにか、文科省平成30年通知
・文科省が考えるホームスクーリングとはなにか、専門委員会による諸外国研究

 これらについては、下記noteでその予測を書いてきました。


 さらに教育機会確保法を根拠に、その要望は叶えられる期待の声が確かにあります。しかし、教育機会確保法によって、その要望を叶えるに適用する根拠が失われています。この矛盾を生んだのが、不登校児童生徒の定義にあるように思えます。

 教育機会確保法は、オルタナティブ教育とそれを活用する児童生徒と家庭の支援には関わりません。その対象ではないからです。
 感染不安を理由に学校を欠席する児童生徒と家庭は、教育機会確保法の対象に適用されません。不登校児童生徒の定義にあてはまらないからです。

 ただし、この姿勢は「国」や「行政」であることもふまえなければなりません。学校現場では、これまでの経緯から、不登校児童生徒との線引きは明確ではないし、それよりも、児童生徒ひとりひとりの関係や、地域性を背景にしたケースバイケースでの対応を余儀なくされることでしょう。全国一律の対応となれば、さらに学校教職員と家庭の状況は困難に陥るかもしれないのです。その信頼関係を築く時間もゆとりも奪われていくからです。


「感染不安を理由に学校を欠席した」ことをきっかけに

 一方、「感染不安を理由に学校を欠席した」ことをきっかけにはじまった不登校や、オルタナティブ教育への転身はあるかと思います。その自由はkokageの発信でご存知の通りです。

 それは大きな決断であることでしょう。学校生活や学校教育を問い直すことになるのですから。

 しかし、不登校と称されるこどもたちや家庭のなかでも、(「不登校ジプシー」としましたが)方向性が定まらず、負担ばかりが重くなっていくケースも見受けられます。
 学校からは、臨時休業(分散登校)や出席停止扱いとなった児童生徒の学習機会の提供とその保障のために、家庭への協力依頼や課題、連絡を密に取り合ってこどもの状況を報告するなどがあると思われるからです。また、要望が、要望通りにいかないと感じることから信用や信頼が薄れていく心地も感じてしまうのではないでしょうか。
 それは皆、かつての不登校と呼ばれたこどもや親たちが受けてきたこと、感じてきたことと似ていると思います。

 その迷いの中で、かつての不登校とよばれた人たちの想いや、在籍校からは不登校には違いないものの、学校教育とは異なる普通教育を選び進めてきた家庭の想いや声の中にも助けとなる部分はあるのではないでしょうか。
 プロセスは違えど、求めるゴールは違えど、なにかしらのヒントを互いに与えることができるでしょう。

 同じ思いを持っているのは確かです。


 こどもたちが しあわせになりますように

 こどもたちが しあわせでありますように


 それを実現するための手段や方法はいろいろです。どれを選ぶのかも三者三様です。でも同じ思いがあるのなら、支え合うこともできるような気がしています。家庭も、学校も、地域も。そして国に対立するものでもありませんけれども、国の方針や政策を知ることで、対策や選択肢も生まれてくることもあるでしょう。

 どこかになにかのヒントがあるかもしれません。そんな気持ちで、またnoteは続きます。


『休校要請から~』シリーズ
休校要請から~その①学習支援サービス無償提供~(2020/2/29)
休校要請から~その②公教育と平等性~(2020/3/8)
休校要請から~その③「休校延長」と「学校再開」の間~(2020/5/22)
休校要請から~その④ 休校特別措置「出席停止」ってなんですか?(2020/6/29)
休校要請から~その⑤ 「休校特別措置」と「不登校支援の在り方」の狭間で(2020/6/29)
休校要請から~その⑥ リモート学習と家庭学習の発展(前編)(2020/9/3)
自由のつかみかた:リモート学習と家庭学習の発展(後編)(2020/9/28)
自主休校は可視化されるのかー児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果(平成30年度・令和元年度)から(2021/2/20)

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全国一斉休校要請が出された2020年2月から 学校のこと 自宅学習のこと オンライン授業のことなどテーマ別にかきつづったnoteまとめマガ…

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