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詩・短歌・俳句 2018

短歌 1


コオロギがうごめ姿すがた怖気おじけ付く
夢中むちゅうになってたくさんりしが

大通りバイクをめておだやかに
ぞく通らぬか」と硬派こうはらしき人

書くことの取り返しのつかなさは
守れなかった約束に似る 

解決を求めず行こうその他に
何のしようもないのだけれど

晴れた日に梅の咲く頃公園の
木に見付けしはくびれたる人

去りし人ただ一歩だけ先を行く
何と大きな一歩であるかな

起きた事ただ淡々たんたんと受けとめる
それ以外には出来るすべなし

2018.12.29

いそがしく人を選ばず呼びかける
うれしそうなり血液らぬが

おそるべき出来事ばかり起こるなら
もはや恐れるひまはなかろう

明け方まで猫があらそう声に
あきらめることをもって知る

コケコッコここでもき声かわらずと
ケニアの村で友 感心す

顔に見える便座カバーが切な気で
用を足すたび振り返るなり

悪夢見て目覚めることがないならば
はたたして耐えていけるだろうか

2018.12.24.

り起こす過ぎ行く暮らしの端々はしばし
出ししみする余裕はあらず

過ぎ行けば本当なのかあやふやな
よどむ記憶のかすを集めて

なんだなんだ何をそんなにさわぐのだ
明日になれば過ぎ行くものを 

はっすればただ過ぎ行きて消えていく
そんな気しつつ言葉に頼り

2018.12.22.

駅前のこごえる朝の托鉢たくはつ
有権者ゆうけんしゃらは急ぎ過ぎ行く

考えて考えて事に当たれども
日々に追われて時は過ぎ行く

笑顔にて過ぎ行き人は今いかに
会社なくなり知りようもなく

唐突とうとつ木枯こがらし吹いてうららかな
秋は過ぎ行き冬服を着る

2018.12.19.

「しばれるなぁ」父の話した南部なんぶ言葉
こおBoston肌身はだみにしみる
(2021.11.26.改定)

我が家には手を合わせぬ人多くおり
気にもとめずに暮らしてきたが

通いしはお寺の中の幼稚園
歳重としかさねまた手を合わせおり

熊襲大和南部の人の混ざりし者
家族の話 合わせた我は

2018.12.14.

20年経っても胸でくすぶるは
2年過ごしたマサチューセッツ
(2021.11.26.改定)

東アジアを故郷こきょうしたう人となる
2年のアメリカ暮しのゆえ
(2021.12.17.改定)

2018.12.12.

おもむろに古い記憶がにじむ夜
腹にまってじわり汗ばむ

何もないそれも一つの答えだと
友が言うのをただ聞きし午後

静まった夜はさびしい心地ここちする
騒音そうおんひびまちに育てば

2018.12.11.

映画観て帰る夜道に立ちし女
何の用事か知らぬまま過ぎ

人々はどこへ移って行ったのか
あばら家の街にビル建ち並び

なつかしい駄菓子だがしの店のおやじさん
シンナー売ってつかまったという

ハゼ釣りしドブ川のことはなつかしい
オイルがれてよごれし事も

2018.12.9.

はからずもみ出すままの現実を
メンテナンスして暮らす日々なり

落書きも枯葉もなにも自然だと
思えるときの生活のシミ

出口ない夢はせまりて苦しくて
目覚めてみれば滑稽こっけいなれども

話し合うたびすれ違う物事ものごと
人のくせなりけようもなく

2018.12.8.

からころろからころころと流れ落ち
下水のおとも時にうるわ

旅に出て自分のおろかさみて
1週間の謹慎きんしん気分

長旅ながたびより帰り来たれば我が町が 
おもちゃのようにうつたたず

つらきことばかりと思う日々あれど
写真を見れば笑う我あり

2018.12.4.

俳句 1


次々と人が死にゆく秋の夢

2018.12.2.

短歌 2


げん使い切ろうとザーサイ買い求め
うまくて円を両替し友

酒飲んで幾つかの語と身振りにて
愚痴ぐちを聞いたりセネガルの夜

5分から30分の遅れとの
アナウンスありしボストンの駅

2018.12.1.

歩みゆき疲れてしまい寝たのです
心と体の端々はしばしまでも

振り向いて出してしまった言葉とは
他人のようだ自由にならぬ

ぼんやりとスマホいじりて三日月の
ような目だねと妻に言われる

3人でゴミ置場おきばから運び出した
でかいスピーカー今はいずこへ

針の穴ほどの可能性あるならば
やる価値ありと父親言いし

れ場てこういう演技する女は
男につくすと言いし祖母なり

荒削あらけずるごつごつとした言葉じり
下手へたな手作りこんにゃくの様に

ありふれた日々の暴力止むことなく
続いていると感じるのです

2018.11.30.

夜が明けたらもう一度だけひろい出す
った破片はへんの中からひとつ

ざわめきは静かな調べひびかせる
雑踏ざっとうでそっと耳をませば

いさかいも誤解も何もすり抜けて
洩れる振動そっと添えてみる

裏表うらおもてときにさらりとひるがえ
心落こころおち着けうつろうままに

2018.11.27.

俳句 2


夕立の過ぎてからりと時計とう

晴天せいてん黄葉こうようみて登り坂

花火のスマホ片手に窓を開け

2018.11.21.

短歌 3


急がねばそう思いつつまるまって
なんとはなしにスマホいじる朝

寒い朝とても静かな調子あり
車が通りヒヨドリくも

発火はっかする後のむなしさにしみて
コーヒーれてかなしみてみる

音もなく流れる糸はねばりつつ
今日の心はそこそこ安定

待ってくれよ俺はまだここにいると
必死ひっしにつかむ夢の中でも

2018.11.19.

リハビリに始めたはずがみついて
息継いきつぎぎするもつかれたり

ベランダは枯れみだれつつ実を結び
ふらり家出て帰り来たれば

15年詩を書く事を忘れてい
ふと始め妻の批評にひひょううろたえ

空腹でない食欲は際限さいげんなく
苦しくなってなさ知る

抜殻ぬけがらのような自分をきつけて
灰になっても灰汁あくとるでなし

鬼太郎きたろうはねずみおとこをなぜゆるすと
ふるえるほどにいかりし友あり

殺されたし殺したからなと祖父そふらす
アメリカ行かぬと言ったそのあと

アルビノになるか実験していると
あかりつけずにドジョウ飼いし友

生き残っちまったなぁとつふいた
パイロットの祖父そふ90過ぎ

2018.11.15.

俳句 3


枯葉踏み小便すれば秋心地あきごごち

2018.11.14

対話


あっという間に
5つとしをとる
けれど5年後の
何も分からない
言葉があふれても
月日は 
何もいややさず
人は行き違う
オクラのようにねばる日々
れた体を横たえて

2018.11.13.

短歌 4


だんだんとかすみがかかりからみみ合う
死ぬ事だけがせぬ夢夢ゆめゆめ

上人しょうにんと上人とらがあらそいし
身内みうちまる泥水どろみずおり

ライフルで軍艦ぐんかんに向かい立ちつくす
何とはなしに残念ざんねんな人

汚水おすい出す工場のことがなつかしい
ヘドロの川にこい群れる今

文学は時代錯誤さくごと思う
詩を書けという我の無慈悲むじひ

ヘドロ川堤防ていぼうやぶれベランダで
釣り糸らし怒られた友 

「お前には言ったはずだ」との立て札《ふだ》を
すれば効果こうかありと自慢じまんした友

こわれてるギターとアンプ修理しゅうりして
第九だいくかなでた小6しょうろくの友

激安げきやすのロングコートとサングラス
身に着けた友 店つぶれ泣く

たいらだと何とはなしに落ち着かぬ 
坂道ばかりのまちに生まれて

詩などより絵の才能があるわよと 
のたうつ僕の絵を見て言う妻

万引まんびきをしてはもどして楽しんだ
ギターのピックが自慢じまん友友ともとも

あいそなく注文を取り料理出て
みる味わいとも微笑ほほえ

2018.11.12.

俳句 4


肩寄せて風に吹かれる花薄はなずすき

2018.11.3.

センチメント


あざむいたのか
あざむかれたのか
時はたち
明るみに出て
温もりはこわれてしまった
眠りこけよう
しばらくの間 
力を待とう
分からぬことをいとおしく
分かることをこそばゆく思う
そんな気分だから

2018.10.27.

みさき


流れるように
足音あしおとがする
ときに急ぎ
ときにき止められ
いくつもの穴の上を
とめどなく、とめどなく

エンジンがひしゃげ
動かない
(不穏ふおんおとはするけれど)
燃料ねんりょうだけはふんだんにある
枯れた井戸から
ガソリンがいているから

火がつかぬように
気をつけながら寝転ねころんで
(すでに油まみれなのだし)
うつろい、うつろい
ちぎれたまま
取りつくろうこともなく

2018.10.26.

まち


降り積もったちり
風雨ふううともに去っても
どうしようもなく
残る臭気しゅうきがある

重くはなく軽くもない
深くはなく浅くもない
ただ息詰いきつまおとがする
き消されることのない
けようのないさびしさ

地面をみしめると
沈黙ちんもくが伝わる
とどまることなく続く
静かな交流の時

2018.10.12

そっと


ひずむ言葉のかげ
ほつれる
あらい麻布あさぬの
それとなくいだ
ふくまれるような
くだかれるような
そんな心地ここちがする

2018.9.29

情景じょうけい


突然とつぜんうろたえる
(すずめおびえながらついばんでいる)
みて来たのだ
30年前の孤独こどく

雨が放浪ほうろうへといざな
(がけの下に虫がたかる)
帰ろう
居場所いばしょがあるうちに

(島々しまじまには
どこも家が立ち並ぶ)
おそれることはない
こわいと思うままでいい 

2018.9.26

くつろ


ひやややかなやさしさに
端々はしばしまでもやわらぐ
あえてかくすことも
語ることもない
溜池ためいけのようなおだやかさ

どこにもあり
どこにもない
誰にもあり
誰にもない
辿たどり着いて思い出す
前におとずれた事を

2018.9.15.

歩く


都会の人波ひとなみ
ただ動くものになり
自由だと思った
建物の合間で
どこにも辿たどり着かず
それが心地ここちよかった

時は魚の群れのように
ふくらんだりちぢんだり
らぎながら過ぎた
目が覚めたら行こう
足元あしもとに注意し
ゆったりとみしめて

2018.9.12.


枯れ
ひとしずくも残らない
からの中で眠る
ごぁっごぁっごぁっ
草むらから
声がするまで

川底かわぞこに転がるほね
あまりに白く
もう泣くこともない
そっとひろって
土にめる
新たな始まりを待って

2018.9.10.


やわらかな風が
入り込み
静寂せいじゃくがしげ
思わず外に出る
かじかむ空
ほこりがのぼる中へ

2018.9.7.

一会いちえ


今日に突きささ
つくろいなく
ばらまかれた
感触かんしょくさぐ

もう会えないとしても
また会おう
たがいに不審者ふしんしゃとして
不平等ふびょうどうで
公平こうへい土壌どじょうで

2018.9.6.

預言よげん



僕の事を
神秘しんぴ主義者だと
君は言うのです
気付いてないだけだと 

他の人の言葉なら
気にしないけれど
君に言われると
どぎまぎしてしまう

神秘主義を嫌うのは
かれているからこそ
距離きょりを置こうとしているのかと
自分をうたが

神秘主義的なものを目にして
悪い感じがしないと
やっぱりかと思う

君の預言に
僕はすっかり
からめ取られてしまったのです

2018.9.5.



思いがけず
ぬっくりと出た
へだたったつかあいだ
もれるかけら

しげるる葉の向こう
出ようとする光
心地ここちよく
またせつない

にょろりと
蝉時雨せみしぐれの中
からびゆく
居所いどころを忘れたままで

2018.9.3.

いとな


こわれたものは
そのままにして
眠ろう
たいらにされ
日干ひぼしに
その分、残酷ざんこくになる
いけない、いけない
かくれよう
そして少し休もう

2018.9.1.


コンクリートの橋の下
誰かがふえを吹いていたあたりを
何度もながめてみたのです
その時の僕は
途方とほうにくれていたのでしょう

橋を渡り
川辺かわべに降りると
思いのほかススキがしげ
両側とも背丈せたけしのぐほどで
大きなバッタが
たくさん飛びっていました
そんな場所があることを
それまで知らず
生き生きとしたバッタの力に
目がくらむほどでした
しばしぼうぜんと歩き
帰宅したのです

後で何度か思いつき
その川辺に
行こうとしたのだけれど
方向音痴おんちの僕は
何かにかされたように
たどり着けたことがなく
日照ひでりの中をさまよい
途方とほうにくれるばかりです

2018.8.31.

両棲りょうせいの人


かわきと湿しめ
あわせ持った
あやふやな
にくめない愛らしさ

辛抱しんぼう強い足取あしどりで
ぬかるみながら
れ動き
旨味うまみぎ分ける

水鳥が
いさましく飛び去り
でたらめな光が
交差こうさする沼地ぬまちで

2018.8.30.

心の虫


ちぢんだり広がったり
空間なのか平面か
それとも線なのか

バランスをくずすと
静かにさわぎ出す
そして
そむけて逃げて行く

それでもよくが出る
冷飯ひやめしのなんとうまいことよ

208.8.27.

黄昏たそがれ


素朴そぼくな石にきざまれた
文明のにお
わびしい厚化粧あつげしょう

沈黙ちんもくつつまれて 
聞こえる足音あしあと
すりへらし、へらして
みな窒息ちっそくしそう
僕もその一人

ビルの中の
なめらかな石
がらんとした人混ひとご
さびしい古城こじょうを思い出す

2018.8.23

火花


反逆はんぎゃくむなしい
成功しても
膨大ぼうだいあつみの上に
新たなほこが
わずかにもるだけ
それでも日々
発火はっかする
枯れた土の中からでも

2018.8.22.

渡河とか


かわを渡る決意の
清々すがすがしさ
土からのがれるよろこびに
くらんでしまった
するとベルがった
足がとまった

とだまると
水の気配けはいがきもみる
ぐにゃりと曲がり
支えを失って
体がふるえる
思った事を
悲哀ひあいとともになつかしむ

2018.8.20.

もえさし


何気なにげない午後
ぼんやりと椅子いすすわっていた
突然日差ひざしがなくなり
左頬ひだりほほかべがひっついた
遠くの方から怒鳴どなる声がし
横たわった僕は
動くことを忘れたようだった

記憶きおくは次に
やぶれたふすまの前で
泣きじゃくる
子供へと飛ぶ
あれは僕なのだろうか?
自分の姿すがた
見たはずはないのに

学生りょう廊下ろうかで
腹立はらだまぎれに
素麺そうめんたばゆかたたきつけ
まきらした
風邪かぜ引きのおとこ
これはまあ僕だろう

追憶ついおくの中の
もえさし
しっくりとくる
へだたりのない事実には
辿たどり着けそうもないけれど

2018.8.18.

声なき人


川辺かわべに暮らす人
沈黙ちんもくが力
生活が道をつくる

まよい込んだ路地ろじ
ねば衆人しゅうじん
持久戦じきゅうせんへといざな

さわたよりに
うるおしたら行こう
もうは明けた

2018.8.16.

方々ほうぼう


薄情はくじょうなつかしさ
パサつくにおいや
どよめく車内の心地ここちがする

ざらつく舌触したざわ
酸味さんみの中に
ほのかな甘みがある
とてもいい
虫がざわめく
方々へ
向かう足音あしおとがする

2018.8.12.

へだた


流されて
どこに向かう
冷たい箱の中
それとも
ニジェール川のほとり

そこで何を見る
そこで何を見た
分からない、分からない

井戸の反射に眩み
おもわずり返る
てんとう虫に笑われる
明日をかたるなど

アスファルトのけむり
土埃つちぼこりにお
交わることのない
ひろがる古今ここんいわ

やわらかいんだな
マシュマロのように
らめくひとひら
穴だらけの軌跡きせきで

あわから生まれたものは
泡と消え
土から生まれたものは
土へとかえ
分からない、分からない
親の顔さえ、分からない

208.8.10.

うれ


昨日まで
新鮮だった靴下
タンスの中で
穴の空いた仲間を横目に
実にしっかりとしていた
なのに
新しく5組ほどが入り
擦り切れ者をのかしたら
今は古びて見える
決して見劣りするのじゃない
ただ清新せいしんさは消えてしまった
友を見送った
憂いのせいだろうか

2018.8.9.

不一致


メダカを飼いたい
メダカを飼いたい
と言うのですが
妻は乗り気でなく
一緒に見には行ったのですが
5種類のメダカを見て
あれこれ説明したけれど
妻の目はうつろで
インド産の
小さいフグのかわいさに
見入っているのでありました

2018.8.6

とむら


バナナの皮よ
あんなにしっかりと
やわらかい実をつつんでいた
今はだらしなく
手足てあしを投げ出し
あとはてられて
ゴミ箱の中で
茶色くなるのを待つのみ
いまさとった
お前をんで転ぶ
古典的こてんてきギャグも
とむらいの1つなのだと

2018.8.5.


僕の詩を見せると
真剣しんけん吟味ぎんみして
ばさりと切り捨てる
これいる?
この言葉嫌い
詩じゃない
眠らせときな
どうにも的確てきかくなので
僕はうろたえて書き直す

妻の助けなしに
詩は完成しないのだが
合作者にされるのは嫌らしい
まぁ好きにしなと
妻はしぶしぶ言っただけなのだ
それでこんな詩を
書いてみた次第しだいです

2018.8.4.

スリル


寺の池で生まれた
こいの子供をぬすもうと
2人でしのび込んだ
池の後ろのかべには
窓やドアは見当たらない
あみを手にした
僕らは夢中むちゅうだった
何匹ほどとったろう
そろそろ行くかと
こそりと話していると
たくさん取れたか?
と声がする
り向くと
かべひさしのすぐ下の
ほそ引戸ひきどから
坊主ぼうずがのぞいていた
僕らはあわてて走り去った

2018.8.4.

大丈夫


問題ないと
あきれるほどり返す
答えはやってくる
大抵たいてい思わぬところから

2018.8.3

おのずと


すりつぶして残る
ざらざらとした
表れるモザイク
き出されるがら

ふるい立つ歌声
にごるハーモニー
存分ぞんぶんひびき渡れ
舟まで届く様に

椰子やしかおりの中
流れに身を寄せ
それでも方角は
ひとのぞむ辺りへ

2018.8.2.

何とはなしに


しなるほど実って
落ちこぼれたしずく
いきどおる胸にしたた

遠くを見る
目的はなく
ただながめる
片隅かたすみにうずくまる
たよりなさをかかえて

ひまなふり 
いそがしいふり
楽しいふり
苦しいふり
そんなことする間もない
のっそりと
急いでいるのですから

2018.7.30.

散髪考さんぱつこう


しゃきしゃきと
細胞のつらなりなりを切り
体とのつながりをって
落ちたものは
さっさといて捨て
細かいものは洗い流される
何のおくやみの言葉もない
しらじらしい
細胞にも生命が宿やどるなんて

2018.7.30.

平凡へいぼん


発光はっこうする
今と昔の瞬間しゅんかんが
話をしたり
眠りこけたり

こんがらがって
足取あしどりをながめていた
がさつで熱がこもり
隅々すみずみまで腐食ふしょくした

強風きょうふうはおさまり
屋根の下でうろつく
外出を躊躇ちゅうちょしたまま

2018.7.27.

とむら


地表ちひょうから直ぐに
み込んだ液体
忘れた頃に
き出してくる

20年後の
ほんの20秒程
うるおしてくれればいいが

行きだおれた人
疲れ果てたのか
殺されたのか
くさりゆく

弔おう、忘れずに
ついこの前、200年程の間
20万年分の地層ちそうが
隆起りゅうきしたとしても

2018.7.26

ウサギ


朝行くと
小学校で飼っていたウサギが
5匹ほど子供を産んでいた
軟体なんたい動物の様なそいつらは
板敷いたじきのケージの中に
遠慮えんりょがちに動きながら
転がっていた
僕はわくわくして
ながめていたのだが
呼ばれた先生は
何かつぶやいて穴を
ぐったりとした
そいつらをんで
埋めたのだ
先生は悲しそうにも
怒っているようにも見えた
何もたずねなかった
誰にも言わなかった
ウサギの世話は続いた

2018.7.23

水の音


おぼつかない
花火が上がり
谷間たにまひび

ひと呼吸して
走り、立ち止まる
けむりにおいと
雑踏ざっとうが混ざる

目を閉じて
きここえてくる
水の音
ざわめきの終わり

2018.7.22.

スカンク


アスファルトの幸福
火花をらす
山へ行こう 
わぬ喜びが
硬化こうかはばむ所へ

生業なりわいが何であれ
放浪ほうろうは続く
良いも悪いもない
驚くだけ
恵まれている

血のわだち
らぎの神学しんがく
スカンクにはかなわない
流れと文字を横目に
信号を待ちながら

2018.7.18.

ひび


すかすかのまち
置いてけぼり
出口と思ったら入口
さて始めるか

風のない
熱帯夜ねったいや寝苦ねぐるしい
らがらがと頭を
おどけてはみたけれど

ありがたい
いまだ一寸いっすん先はやみ
音が響く
歌い踊るひろがりで

2018.7.14.


動き出して
否応いやおうなしに押し寄せる
汚水おすい雨水うすいが混淆こんこう
濁流だくりゅうになる

肯定と否定
方角も場所も時間も
全てが入れ替わり
なお語りつがれる奇談きだん

形なく広がり
肉をくさらせる
それでも骨はなめらかだ
水晶製のまがい物だから

2018.7.13.

始まる


はぎれのわるいまち
その場をしのぐ
まあいい
筋違しのいの常識で
団結や不仲をまねくより

事実から具体性を
言葉から意味を
感情から熱を剥奪はくだつして
引き出された
猥雑わいざつなアップデート

始まる
勝手口かってぐちからもぐり込む 
地下室と屋根裏の
どちらでも暮らせるように

2018.7.12.

寝たふり


傷はめ合えば
多少は良くなる
そうならないのは
舐めすぎるから

自己と連帯と無
責任の三角関係は
ののしり合い、疲れ
結束を恋する

びびらずに
逃げるに限る
非難されたら
寝たふりをする
ぐうたらと呼ばれて

石の上に3年もいたら
あたたかくなる前に
足腰あしこしが弱ってしまうね

2018.7.11


掘り下げても
見付からなかったのに
遊んでいてひろった
アンモナイト

紙一重かみへとえをすり抜けて
生き延びた
あやわた
双方そうほうともの末裔まつえい

切れ間にl茂《しげ》る
思いがけない物語
もつれる新旧しんきゅう形見かたみ
じっくりと吟味ぎんみして

み出せば
うねりが伝わり、進む
あやしくはない
当たり前の道

2018.7.10.

かたわらで


喧騒けんそうとは無縁むえんよどみ
どんな熱情ねつじょう甲斐かいもない
そのうちゴーグルをしても
何も見えなくなるだろう

言葉が雪崩なだれを起こす
間違いはけられない
かけらを集めて捨てる
手ぶらが楽だから

にごった大きな川
支点してんを感じながら
かすかな隙間すきまを探す
岩塩がんえんが積まれたかたわらで

2018.7.2

出かけよう


裸のヘビ
裸の雲
裸の犬 
裸のくつ
どれも似たり寄ったり
王政が復興ふっこうしても
はだかの王様はもういない

泥水どろみずがみ込むところに
アルコールをにじませても
ちょっとにおいをぐだけで
先につぶれてしまうくせに

夜の間にい回り
かすかな湿しめり気を残す
かわいくて憎たらしい
はっきりとしないもの
ブルドーザーで地獄を造り
幻は狭間はざまで生き続ける

ぬめりとしてどこにでも
忍び込んでみたら?
ずうずうしくうるわしく
猫のように眠って

出かけよう 
とにかく出かけよう

2018.6.29.

交差点まで


店頭に並ぶ
花々からただよ
野草の香り
アスファルトの隙間すきま
草のにおいと混じる

突然なだれ込む
さまざまな声
進むのも遅れるのも
そのままで
芋虫いもむしとライオンを
比べるのはひんがない

|錆(さ》びた鉄に
刻まれた飾り
いつくしみとさげすみが
溶け合う場所から
離れたい
路地と山道の
交差点の辺りまで

2018.6.27.

らぎ


使いふるされさらされて
忘れ去られた抜殻ぬけがらが1つ
いったいどこへ行ったのかな?

それはちょうなの?
それともカブトムシ?
土の中にいたの?
それとも葉の裏に?

意味ありげに軒下のきした
転がっていたよ
飛び去ったのか 
行きだおれか
見当がつかないな

どこにも行きはしない
隠れてもいない
周りを飛んでいるのに
誰も気付いてくれないの

せみではないの? 
確かにね
蝉なら見慣れみなれているものね
行き倒れなんてそんなこと
電車も車もある時代に?

高速道路を通って
川を渡って行けばいい
私はいつまでも皆の中を
飛び回っていますから

本当は知っているんだよ
みんな忘れているだけさ
見ているけれど見えないし
聞こうとしても聞こえない

えがいてみようと思うんだ
その抜殻ぬけがらのぬしのことを
なぜだろう?
分からない
そうしなきゃって思うんだ

見てもいないし
聞いてもいない
そんなものをどうやって
描こうっていうのかしら?

私はちょうで、蝶はせみで、
蝉はあなたで
あなたは甲虫こうちゅう
蜘蛛くものようにとらえなくても
きっと描けるはずよ

いつのまにかえている
そんな風に
やってみようと思うんだ
できたらきっと見せるから

そうしてね

2018.6.25.

とうげで


はなれると
遠くに見える
えらんだものが
ガラクタとしててられ
ゴミくずから
別の物がひろわれる

気を付けて
浅瀬あさせを歩いて行きなさい
ふかみに手を取られないで

遠くを見て
もとの通りを歩く
てたもんじゃない
またきっとまじわ
丁寧ていねいに進んで行けば

山道やまみちを歩いて
思いがけず海が見える
ちょっとうれしいね

2018.6.24.

きっと


思い込み
まわり道して
立ちまる
言葉にならない
からまるばかりで

かされると
自然と影になる
ひかえめに寄ってみる
ひそむものに
ふれないように

かすんだ向こう
そうつらくはない
きっとうまくやれる
秘密ひみつおそれなければ

2018.6.20.

そこから


せつなにあふれ出し
言葉が開かれる
そこから
必要なものをすくった
残りのわずかなよど
不具合ふぐあい社交性しゃこうせい

口火くちびを切るのは
ありきたりのこと
そこから広がったほのう
燃えさしからただよ
けむりのにおい
取り返しのつかないひび

2018.6.17.

ありふれたこと


身近なものが
まとわりつく
そうか400年前の
あの仕返しかえしかと
ふと思う
ついこの前のこと
猛威もういふるあらくれ者を
手なずけて来たのは

せいぎょ御したいという
ありふれた願い
平穏へいおんにこそ注意がいる
に合わせのしのぎ合いに
らわれてしまうから

2018.6.14.

轍の上で


波立なみだつ水をながめている
とてもいい
かつて老人ろうじんと呼ばれた
そんなこともあったのだから

つらい時を
にが余生よせいを送る 
そんな手触てざわ
かすほどのこともなく
かくすこともない
かすかな甘いにおいいととも
ただこぼれるがままに

2018.5.30.

たまに


雑踏ざっとうで耳をすます
頭をからにして
ときはな
そんなにむつかしくない
ずかしい事でもない

なぜそこに転がるのか
分からないものばかり
らばっているから
通りに出て
話かけるひまがない

息苦いきぐるしかったら
忘れるのもいい
まわりに注意を向け
ゆったりと
水のにおいをかいでみる 

なんとも
どうにもならない
ありきたりの事
でも嫌いじゃない
ただたまに
やるせないんだ

2018.5.23.

気楽に


暴力的な事だ
意見を持つというのは
だから少ない方がいい
どちらにも向けるように
身軽でいたい

なぜ選ぶのかと問われても
答えようがない
手垢てあかのついた言葉が
道をふさいでしまうから

いやだからこそするのだと
言い切るほどの度胸どきょうはないが
せめて気軽に行こう
小さな変化を
見落とさないように

2018.5.11.

本当の事


会わなければ分からない
そのいやらしさ
かわいらしさとか
魅力みりょく的なひとみ笑顔えがお
幾多いくた残酷ざんこくさをとおって来た
そこから残る力
おどろくべき事
見間違みまちがえようもない
本当の事

かれる事はおそろしい
おどろいて距離きょりを置く
そしてじっくりと噛みしめる
息をととの
近づくか遠ざかるかを決める
間違えてはいけない
本当の事を

2018.5.10.

悪くない


従順じゅうじゅんでいよう
えてみても仕方しかたない
やれる事はある
るものはなくても
爪痕つめあとは残る

じり合ったらいい
いっそ体液たいえきまでも
ミトコンドリアが
細胞さいぼうはいんだように
しのびんでみたい

ほんの100年前の事も
よくはわからない
失うものは何もない
行きえばいい
笑われたって気にしない

だまっていよう
さけんでみてもとどかない
歩いていって
迷い込み
ともに笑らえるなら
そう悪くない

2018.5.6.

自然


体の内も外も
自然の他には何もない
あふれ出す過剰かじょうなもの
いばらが外側から
傷を付けるように
内側からも
なにものかが突きあがる
管理に抵抗する頑固者

自然は恐ろしい
それを避けることはできないが
多様なうずは姿を変えるから
ゆっくりと目を閉じて
耳をすませる
なるべく間違えたくはない
陳腐ちんぷなものを
必然ひつぜんと思い込まず
常識にまどわされないように

2018.4.22


精神せいしんとかたましいとか心とか
なんだか
つかみどころがない
だからといって
精霊せいれいを信じるほど
純朴じゅんぼくにはなれない
本当は
肉体だけなのだとしても
とどまることのない体内のいとなみを
とらえきれそうもないし
合理ごうり的な文字の裏には
神秘しんぴ的なものが 
もぞもぞしている
支えよう、それでも
科学に寄りかかり
たまに神頼かみだのみして
のらりくらりと生きて行く
他にしようがないのだから

2018.4.19.


目の前の事に追われ
じたばたすれば
それでいい
成果せいかたと思った事が
百年後に
何を残すか残さないか
見る事はかなわない
今日をおろおろすればいい

悲惨ひささにれて
こわれた自分を横から見ている
そんな心持ち
こぶしり上げて
ついにひっくり返す
そんな時、誰をなぐる?
逃げる、逃げる、逃げる
失われたものはそのままに
自身が
おぞましく化ける前に
かくれてしまう
そしてやり過ごす
百年後の平穏へいおん
知るすべはないとしても
せめて今、ここだけは

目の前の事に追われ
じたばたすれば
それでいい
成果せいかたと思った事が
百年後に
何を残すか残さないか
見る事はかなわない
今日をおろおろすればいい

2018.4.18.

いい


うその中でくつろぐ
時にはそれもいい
本当の事ばかりでは
つらくて仕方しかたないなら

逃げ出すわけでも
ごまかすわけでもなく
ほんのちょっとの休息
またゆっくりと始まる

みじめな安らぎを
うそまことたずさえて行く
めたりしない
気がすむまで
泣いたりして

よごれた川をき止める
そんな事はやめて
海へ出よう
そこで無邪気むじゃき
笑えたらいいね

2018.3.31.

まだ


いくつもの
冷ややかな目に見つめられ
はみだしたものが
とまらなくなる

りつぶされた紙の裏に
浮かび上がる絵
表裏ひょうりを引きちからが
しのびび込む

逃げよう、かくれよう
新しいが出るのを待とう
たたかいはまだ
はじまったばかりだから

2018.3.22.

息づかい


まことうそさらされて
明るみに出されたとしても
ただ息づかいだけが
伝わってしまう
語る言葉がない時には

かがやかしい光は
ものを見えなくする
そっと寄りって
耳をませる
そのぬくもりまで
聞こえて来るように

2018.3.20.

ゆったりと


日がれる
眠りにつく前に
き出そう
かくす事など
何もないはず

夢を見ずに
終わるかもしれない
暗闇くらやみがおとずれる前に
ゆったりと速度を上げて
ほとばしる
じる事もほこる事もない
あるがままの姿すがた

2018.3.18.

自由に


待とう
嵐が過ぎるのを
人は昔から
そんなに変わらないと
そう思える
ちょっとしたコツをつかみたい
皆が少しづつ
楽しくなれるような

みにくさは
そんなにてたもんじゃない
ちょっとした事で味わいは変わる
受け止めたり、受け流したり
遊ぶように転がって
ほんの少しだけ
自由になれたなら

2018.3.8.

自由に


岩にぶつかりながら
流される
思う間もない
ぎ進み
どこかへ向かう事などは

内でも外でも
ぶつかり
からまり
しぶきを上げる
間違えないように
多様な波に
中心などはないのだから

2018.2.21.

(詩・短歌6〜86+俳句、日付はinstagram (philosophysflattail)投稿日)

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