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有田焼と佐賀県立九州陶磁文化館

先日、佐賀県有田町にある「佐賀県立九州陶磁文化館」に行ってまいりました。こちらでは、有田焼はもちろんのこと、九州各地の焼き物の展示や歴史資料、現代の作家の展示まで観ることができます。

「佐賀県立九州陶磁文化館」は1980年に設立されたのですが、設計した建築家は内田祥哉先生。東京大学の元総長でキャンパスを設計した内田祥三の息子であり、建築構法学の父とも言われている。内田祥哉先生は5年前にお会いしたことがあるのですが、90歳を超えているにも関わらず、危険な工事現場を本当に興味津々で、すたすたと先へ先へ歩いていってしまう姿がとても印象に残っています。好奇心が旺盛な人は、いつまでも若々しい心を持ち長生きするのでしょう。それに、後から知ったのですが、たまたま訪れた日が内田先生の生誕日でもある5月2日でした。

話を戻して、私は「佐賀県立九州陶磁文化館」に行くまでは、正直あまり期待せずに訪れました。しかし、訪れたところ、建築もすばらしく、展示品の内容や展示方法も工夫が凝らしてありとても楽しかったです。


ちなみに、焼き物として国の重要文化財に指定されている「染付鷺文三足大皿」も観ることができます。

染付鷺文三足大皿(重文)
画像元: 九州陶磁文化館HP

昔の焼き物から現代の焼き物まで数百もの展示を観ることができるのですが、その中でも私の目を惹いたのは、とある白磁でした。

その白磁に本当に惚れぼれして、全身に地球をめぐる生命の温かなエネルギーようなものが流れてくるのを感じました。そして、作家名を見てみると、「井上 萬二」と書かれていました。

どうやら、重要無形文化財「白磁」保持者で人間国宝とのこと。
彼の座右の銘が「名陶無雑」。
まさにそんな作品でした。

彼について調べると、また教訓となる言葉を得ることができました。

本当に美しいものをつくるには、自ら高い目標を持って、最低でも10年の修行が必要です。積み上げられた確かな技術、そして、それ以上に「想像」するセンスを合わせ持たなければなりません。技術と想像力、そして純粋に作品と向き合う心をもって、初めて自分の作品になります。今日はどんなものをつくるのか?明確に想像してから作陶に入ると、作品と向き合う中で、新たな想像が生まれます。その想像を直ぐに形にすることが大事です。その想像は、優れた芸術家・陶芸家の作品を見る事でも得られますし、旅に出て、これまでに出会ったことがない文化やカタチから刺激を受けて生まれることもあります。作陶に没頭する時間と、旅に出て多くの刺激を受ける時間、私にとってはその両方が貴重な時間です。
真剣に作陶と向き合って、10年・20年と続けて行くうちに、「土が文句を言わない」という感覚を得ることができます。仕事や恋愛、夫婦などの関係とも似ていて、始めはどうしても「小言」が出てきてしまいますが、お互いに愛情を持って、お互いを受け入れて、そうした時間を継続していくことで、だんだんと「小言」が必要なくなります。作陶も同じで、長い間、土と真摯に向き合っていると、だんだんと、自分の想像通りの曲線を描いてくれるようになります。陶芸家として、「土が文句を言わなくなった」と感じられたら、大したものですし、そうした域に達しないと一人前と言えないと感じています。
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有田焼はその美しさと品質により、すでに江戸時代から世界的にも評価され、当時は「伊万里港」から出荷されていたこともあり、「IMARI」の名で世界中に知れ渡っていた。特に「柿右衛門様式」という、乳白の素地に余白を残して色絵を施すデザインが絶妙な調和を生み出した焼き物が、ヨーロッパで流行し、「余白の美」などと称されたとのこと。

その原料となる陶石が採石されるのは「泉山磁石場」という場所。ここの陶石は品質がよく、単独の陶石だけで純白の美しい焼き物をつくれるのは、世界でこの「泉山磁石場」と熊本県の「天草陶石」だけとのこと。一般的に陶石は、砕いて土を作る時に、他の土を配合しないと品質を確保できないようです。

日本には本当に素晴らしい環境と文化がありますね。

日本全国の焼き物産地を訪れるのが好きですが、この有田町でも車移動ではなく、駅から目的地までしっかり歩いてその町や風土の空気を感じながら散策しました。

今回は新旧の焼き物をたっぷりと観れたので満足でした。

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