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スラムダンク個人的10選【前半】
去年の暮くらいに「スラムダンク原論Ⅰ」というスラムダンクについての僕なりの感想文みたいな評論文というのかそういう文章を書いてとりあえず、三井寿が加入するまでの物語についてのいろいろを書きましたが、その続きがなかなか書けなくてどうしようか迷っておりました。で、この前同じく子供の時というか思春期くらいまで猛烈に好きだったドラゴンボールについて「ドラゴンボール個人的10選」というエピソードを独自に10個のカテゴリーに分けてベスト10方式でやるとそこそこ書けたので、スラムダンクもこれに倣って10個のカテゴリーに分けてベスト10方式でいろいろ勝手に書いていこうとなりました。なので「スラムダンク原論Ⅱ」はもうお蔵入りで(下書きはやや進んでましたが、止まっております)、こっちで物語を追う形でやっていきたいと思います(順位別にやっているので話の流れはかなり前後していますが)。では早速物語をどう10個に分けたかを。
第1章 花道登場~柔道部入部騒動
第2章 対陵南高校(練習試合)
第3章 宮城、三井登場~体育館抗争
第4章 インターハイ予選~対翔陽高校
第5章 対海南大付属高校
第6章 海南大付属高校対陵南高校
第7章 対陵南高校(インターハイ予選決勝リーグ)
第8章 全国編~夏合宿
第9章 対豊玉高校
第10章 対山王工業高校~エピローグ
まあ上手いこと10個のカテゴリーに分けられたと個人的には思っております。第6章とかかなり短めだったりしますがやっぱりあの天才仙道と怪物牧の戦いは華があって面白かったので独立したエピソードにしております。思っていたよりかなり長くなったのでとりあえず第10位~第4位までを【前半】として今回は出させていただきます。後半のベスト3はまた間隔を空けず年明けくらいに出したいと思います。ではそんな感じですが早速第10位からどうぞ。
第10位 花道登場~柔道部入部騒動(第1章)
ドラゴンボールでも書きましたがスラムダンクは全編に渡って面白かったのでどれが下とかあまりないのですが、相対的に考えると初めのエピソードがその後の神展開に比べるとって感じですかね。まだ絵のタッチも慣れていない感じがしますし、バスケで行くのか学園コメディ、もしくは不良モノでいくのかどっちつかずな、井上雄彦氏によれば「バスケがウケなかった場合を考えいろいろ保険をかけていた」そうでして、百花繚乱的な物語の伏線といいますか、そんな感じも受けたりします。でもやっぱり初めの湘北高校の体育館でのキャプテン赤木とスーパールーキー流川とのバスケ対決とかは見物でしたね。それまでの軽い感じやギャグ要素がなくなってバスケの本物の動きがあの井上雄彦氏の超絶テクニックからリアルに伝わってきて、それだけでこれまでのスポーツ漫画とは「違う」感が滲み出ておりました。その後やや低調な「柔道部入部騒動」がありましたが、このエピソードも花道がバスケ部に入るアイデンティティーを示してそれを陰で見ていた赤木がしっかりと受け止めるという不器用な男たちのバスケへの情熱が共鳴していく端緒みたいなシーンで感慨深いものがありました。やっぱり10位とはいえ面白いなあ。
第9位 全国編~夏合宿(第8章)
陵南戦に勝って初の夏のインターハイに出場を決めてからインターハイ初戦の豊玉高校戦までの完全版とかでは主に17巻辺りの話になります。ちょっとした小ブレイクみたいな話が続いて結構好きな感じではあるのですが、バスケの試合とかはほとんどないのでやはりちょっと他のエピソードと比べたら弱いかなと思うのでこの順位になっております。まあでも流川が安西先生に「アメリカに行きたい」と直訴するところや安西先生によるかつての教え子「谷沢君」の悲しい過去、これが後の伝説の名試合での桜木花道に対する安西先生の「見てるか谷沢……お前を超える逸材がここにいるのだ」の魂震える名言、名場面への見事な伏線になっていく、そして山王戦の最後試合を決めたのもこの間に花道が安西先生や春子ちゃんや洋平たちの協力の下で身に付けた「合宿シュート」だったり、後の重要な場面の下地になるエピソードが満載でしたね。赤点でインターハイ出れないということで花道、流川、宮城、三井が赤木宅で徹夜で勉強合宿するエピソードもいいなあ。第9位でしたが結構やっぱり美味しい話満載でしたね。さすがです。
第8位 対豊玉高校(第9章)
僕がずっと住んでいる大阪代表豊玉高校戦が第8位です。やたらガラ悪いですね笑。偏見の塊やないかって関西人はちょっとこの豊玉高校の描き方怒っているいる人も多いのではないかって思ってしまうくらいに笑。井上先生は何か大阪で嫌な事あったんかな笑。まあそんな冗談はさておき、面白い試合ではありますが、やっぱり他の名試合と比べるとこの順位ということになります。いきなり宮城と坂倉とのやり合い、新幹線からの因縁、いやインターハイの試合組み合わせ場面からの因縁でしたか、岸本や南といった豊玉の主要メンバーが登場して完全な「悪役」って感じで関西人の僕からしても感情移入の出来ないどうしようもない連中って感じでしたが、試合の終盤、南が流川に対して「エースキラー」と呼ばれる「肘鉄」を食らわせた辺りから深みが増して、読者をグッと引き込ませていくストーリーテラーの秀逸さが際立っております。さすが希代の名作を生み出した井上先生です。ただの不良たちではなく人間味溢れるバスケットマンを描くことに関しては湘北の連中と変わりない魅力を兼ね備えた選手たちへと昇華させてしまうのですから。やっぱり南とかは好きでしたね。勝ちたいがためにかつて翔陽のエース「藤真」を怪我させて退場に追い込んだ過去を持ち、そこから歪んだ、ある意味狂気じみた目つきをして傷を負いながらもプレーし続けて、流川を同じ目に合わせる。しかし流川が片目だけでも南以上に勝利への強い意志を持ったプレーを続けることで動揺し、本当に道を誤るところでかつての恩師「北野監督」の「バスケは好きか」の言葉を思い出して、とっさに流川をつぶすことを避ける。三井のところでも見せた悪への道を最後のところで踏みとどまらせたのは恩師の言葉であったり、バスケへの純粋な想いだったり。ホント、井上先生は人間を描くのが上手い。こういう暗部を描きながらでもカッコよくキャラを立たせる、本物の男、人間を描く描写が僕的にはスラムダンク最大の魅力なんじゃないかなと思ったりします。
第7位 対陵南高校(練習試合)(第2章)
湘北高校初めての対外試合の陵南高校との練習試合が第7位となります。ここではやっぱりスラムダンク影の主役と言っても過言ではない「天才仙道」の活躍がやっぱり一番好きですね。もはやラスボス。とんでもない才能を持っていながら普段は100%ではプレーしない。でもここぞと言う場面ではとんでもない集中力と有り余るバスケの才能で試合を支配するプレーを敵味方関係なく見せつける。僕はこの時点でバスケの経験は小学生の時のミニバスケットしかなく、さらに運動音痴であまりいい思い出とかなかったので、バスケとかあんまり好きではかなったのですが、この「天才仙道」のプレーはたまらなかったですね。華があり過ぎて。いきなりノールックでシュートに行くとみせて後ろの越野へのパスを出すところとか、やられました。中学校の友達運動神経のいい奴らが昼休みにバスケで遊んでいて仙道のプレー真似してたりしてましたね。懐かしい。それくらいあの仙道のプレーは今までほとんどバスケの漫画がなかったにもかかわらず、バスケの本質的な面白さを何も知らない読者にまで伝えるその技量、圧倒的な本物感を描けてしまう井上先生の並々ならぬバスケへの情熱、理解の深さ、凄いです。でほとんど神かって思う仙道の描写の中でもうひとつ注目すべきは花道の才能を即座に見抜く「眼力」です。ほとんどプレーしていない段階から花道を認めている雰囲気もあり、花道が陵南高校のタイムアウト時にスパイ的にいろいろやっているところを田岡や越野に責められ、「赤木君あの男は辞めさせた方がいいぞ」と赤木に田岡が言うのですが仙道は「辞めさせるわけねーさ」と物事の本質を見抜くセリフを残しております。また花道が出ていない段階で「出て来いよ」の仕草を見せるなど、仙道のこの花道に対するバスケ選手としての嗅覚が個人的にはここで好きなところですね。あと流川と花道がふたりがかりで仙道をマークして田岡が「こんなにうれしそうにプレーする仙道を初めて見た」って言うところも、仙道、花道、流川のバスケの才能がぶつかる目に見えない高みを読者にパースペクティブさせる感じがたまらないです。初めての対外試合で読者にバスケットの魅力を伝えることに成功した「スラムダンク」はここから加速度的に名作への階段を駆け上がっていくことになります。ベストテン形式で書いて時系列ではないので話はあっちこっちに飛んで恐縮ではありますが、こう書かずにおれなかったのですいません。
第6位 海南大付属高校対陵南高校(第6章)
きっちり描いてくれましたね、湘北高校以外のこの誰もが見たかった「天才仙道」対「怪物牧」の戦いを。もうこれだけでワクワクが止まらなかったです。このひとつ前のエピソードで王者海南と死闘を繰り広げた湘北。そこでこれでもかっていうくらい「海南が王者である理由」を読者に示して「怪物牧」の凄さを認識させ、そこに「天才仙道」をぶつけて来るこの話の流れも個人的にかなり大好物であります。まさに夢の対決。試合開始前のチップオフで魚住が牧に「今日を限りに神奈川ナンバーワンの看板を下ろしてもらう」「お前にゃ無理だ、魚住」「俺じゃない。うちの仙道がやる」ってところが否が応でも気持ちを盛り上げていきますね。そして試合開始。仙道がポイントガードでキレキレなパスを魚住や福田に出して海難を圧倒する。ここら辺で本当に陵南は海南を倒すんじゃないかって感じで、ここら辺の描き方もまた絶妙ですね。湘北も海南を倒す寸前まで追いつめて最後は花道のパスミスで僅差で負けて、陵南も魚住の5ファール退場で流れが決まって破れる。まあそこは牧や高砂の頭脳プレーがあってさすがの海南だったりする訳ですが。陵南と湘北が海南をあと一歩というところまで追いつめる描写に両チームの底力を示して、尚且つ「王者海南」の王者たる所以をものの見事に描き切る感じがさすがだなと思ったりします。本当にスポーツの醍醐味が分かっていないとこの絶妙なニュアンス、3チームのバランスって描けないと思うんですよ。それは井上先生が本当にバスケが大好きで、NBAとか熱心に本物のスポーツの試合をたくさん見てきたからの無意識の蓄積のなせる業なのかなと思ったりします。試合に話を戻しますと、魚住の退場から海南に追いつかれ、しかし仙道の神がかり的な踏ん張りで試合終了間際の同点ゴール、そしてこの試合最大の見どころでもある「わざと仙道は牧に追いつかせて」「わざと牧は仙道のシュートをブロックしなかった」まさにスラムダンクを代表するスーパースター同士の一瞬の駆け引きが描かれることになります。そのからくりをジャーナリストの相場弥生や翔陽の藤真が解説していますが藤真の「ちっ、お前ら俺のいない所でナンバーワン争いするなよな」ってところに敗者にはなったけど隠し切れないプライドという葛藤といった敗者に寄り添った描写が見られますし、「このとき牧は仙道が自分の地位まで上り詰めてきたことを確信した」っていうナレーション的な挿入も効果的ですね。そして延長戦の末陵南は海南に敗れ、次戦の湘北と陵南勝った方がインターハイに行けるという決戦へと物語は進んでいきます。試合後に牧と仙道が「仙道、湘北は強いぞ」「知ってますよ、牧さん」って言葉を交わすところも何気に好きでしたね。
第5位 対陵南高校(インターハイ予選決勝リーグ)(第7章)
ここからは甲乙つけがたい名試合、名エピソードのオンパレードになります。ほぼ並列みたいな完成度を誇り、20世紀最高の漫画たる所以を示した形になっているなと思ったりします。それでも順位を付けるとまずこの陵南高校とのインターハイ出場を賭けた一戦がここに来ますね。理由はやっぱり陵南高校を一回練習試合で見ていてあの仙道のインパクトがやや薄められているところにちょっと仙道ファンとしては思うところがあったりしますが、試合終盤「仙道 ON FIRE」って小見出しが付くくらい仙道が本領発揮するところがやっぱり面白いですね。何だかんだでスラムダンクで仙道の存在感はやっぱり半端ないですね。本当のスーパースターは流川でも牧でも山王の沢北でもなくこの仙道なんじゃないかって思うくらいに、すべてにおいて華がある感じがします。三井を除けばスラムダンクで一番好きなキャラは僕の場合は仙道ですね。あと魚住が4ファールで追い詰められた後に、後がなくなって覚醒していくところからの陵南の追い上げが始めるところとか、選手の内面が本当に事細かに描かれて、2回目でややだれていた陵南戦を引き締めにかかっていく試合の流れの描き方が、正直ここまで海南や翔陽とか華のある人気試合を描いてきて、さすがに「脳汁」みたいなものがちょっと枯れかかってきたのかなと僕なんかは井上先生に対して思ったりしてしまったのですが、終盤の怒涛の陵南の反撃は見ごたえがありました。そして最後決めたのがまさかの木暮で。ここはかなり意外でしたね。たぶん井上先生も一回は木暮に花を持たそうと考えていて、でもおそらくもう数試合くらいしか描けないと分かっていたから、ここで出してしまおうと思ったのではないでしょうか。実際陵南戦終わったらあと豊玉と山王でスラムダンクの試合は終わりましたから。魂削って描いていたんやなあ、どこまでも自身の内発性だけを頼りにスラムダンクを描き切った本物の天才やったんやなあって井上先生に対して思ったりします。まあそんな感じでこの試合はこの順位になります。
第4位 インターハイ予選~対翔陽高校(第4章)
三井、宮城の加入後の湘北の強さがこれでもかって描かれたここら辺から何か漫画としてのオーラと言いますか、華がとんでもなく上がった印象を受けたりします。この辺り、いや不良のケンカを描いたエピソードから海南高校戦までの流れはドラゴンボールで言うところの「サイヤ人~フリーザ編」に匹敵する無敵エピソードなんじゃないかって思うくらいにグイグイ読者をスラムダンクの世界に引き込んでいきますね。その磁力の半端ないことこの上ない。本当にここら辺大好きです。絵の画力そのものもとんでもなく美しくてスラムダンクの一番好きなシーンのイラストは大抵ここら辺に集中してます、僕場合。めちゃくちゃ絵が綺麗です、ホントに。華しかないって感じがします。漫画芸術の最高峰なんじゃないかってくらいに、ここら辺の井上先生の「絵」は大好きですね。やっぱりドラゴンボールのサイヤ人、特にナメック星での鳥山先生の画力が最高峰に達した感とよく似ていると思います。まあ話に話題を移しますと、宮城、三井の加入後の湘北のほぼ完成されたチームとしての「無敵感」がヤバいですね。僕なんかはほぼ「オールスター」
なんじゃないかって思うくらいでした。赤木、花道、流川だけでも十分強かったのに、その神奈川屈指のポイントガード宮城、元中学MVPでスラムダンクを代表する3Pシューター三井が入ったらほとんど隙の無いチームかなと思ったりするのですが、翔陽がまたいい味出してましたね。名勝負だと思っていた陵南高校との練習試合を軽く超えてきて、ビビりました。センター花形がいきなりフェイダウェイジャンプショットを赤木のディフェンス避けて決める所の「華のあるプレー」で「おおお」って思って、でも宮城の相手の高身長の間をかいくぐるドリブル、パスで新しい湘北の形を示し、花道のリバウンダ―としての素質の開花、三井のマークされながらの終盤での3ポインターの活躍、翔陽の監督権エース藤真の登場、見ごたえばかりのラストにスラムダンクそのままの花道の「ダンク」のシーン。本当に「華」しかない感じの戦いっぷりが加速度的に面白くなっていくスラムダンクの当時の勢いを感じさせます。ここら辺からドラゴンボールに肩を並べ始めましたよね、スラムダンクは。この2作品が少年ジャンプ600万部越えの原動力になっていたのも納得でした。確かこの時期ドラゴンボールは人造人間編でかなりまだまだ面白かったですし、スラムダンクも海南戦とかで人気のピークに達していたし、ホント中学時代とかでしたが毎週月曜日が死ぬほど楽しみでした。ジャンプで「ドラゴンボール」と「スラムダンク」の続きが読めるのが本当に、幸福な時間でした。すいません、おっさんの回顧録みたいになってしまって笑。
第3位からはちょっと長くなりすぎた感じもしたので【後半】で紹介したいと思います。ではまた【後半】で会いましょう。