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名前を知らない木だから
昔流れていたCMは嘘ではなかった。
「この木 なんの木 気になる木 名前の知らない木ですから」
まさにそのとおり。
台風で折れた枝もそのままの木を、いつも見上げる。
近くには栗林がある。
白樺の群生もある。
ニセアカシアも身を寄せ合うように立っている。
栗は誰かが植えたものだし、白樺もニセアカシアも時々間引かれるのを見ると誰かが管理しているのだろう。
この木の斜め向かい側に大きな朴木があった。
春を待たずに
もうすぐ春が来るという。
春を迎える支度をしよう。
思い立ってカーテンを開けたら、窓枠で蝸牛が死んでいた。
殻だけ残した蝸牛の体は何処へ消えたのだろう?
いつから此処に居たのだろう?
どうして此処に居たのだろう?
冬の終わりを告げる雨は、どこか投げやりに思えてしまう。
折角開けたカーテンを黙って引いたその向こうで、雨が今日も降っている。
蝸牛の殻を付けたまま、今日も春を待っている。
Flower - 花は美しいばかりではない
花がじっとこちらを見ている。
何も言わずに、お前のすべてを知っているぞ…と。
花から目をそらし、花に気がつかないふりをする。
そのすべてを抱いたまま花は散る。
花が散ったことにすら、気がつかなかったふりをする。
やがて、花がそこにあったことすら忘れてしまうときがくる。
ばりばりと屍体を喰らうのは桜の樹ばかりではないんだよ・・・と彼は言った。
そして、その人の庭の花は、まるで獲物を待ち受ける