この町の何処かに
この町の何処かに忘れてきた何かを探している。
そういう日々の送り方をしている。
いつ、どこで、なにを、どのようにして忘れてきてしまったのかもわからない。
そんなものを探しているような気がする。
足下に転がっている。
隙間に挟まっている。
木の葉に埋もれている。
そんなものを見つけては、それは自分のものではないと首を振る。
誰のものかもわからないものを、自分のポケットに入れて、歩き出す。
誰に伝えるべきなのか?
誰に届けるべきなのか?
ポケットの中身は増えていく。
反面。
見つからないものも増えていく。
思い出せないものも増えていく。
この町のどこかに落としてしまった何かを、誰かが拾っているだろうか?