インクルーシブ公園の果たす役割
column vol.1106
3年前、インクルーシブ公園のパイオニアである「世田谷の砧公園」について取り上げましたが
最近は、ますますインクルーシブ公園が増えていると感じます。
インクルーシブ公園とは、障がいを持つ子でも安心して楽しめる多様性を内包(インクルーシブ)した公園のこと。
砧公園は私が小学校3年生まで慣れ親しんだ公園で、今の実家がある鎌倉市のすぐ隣、神奈川県藤沢市にも有名な秋葉台公園がありますし、自宅がある横浜市にも今月、金沢区に小柴自然公園(第一期エリア)がオープンしようとしています。
障がい者専用の公園ではなく、インクルーシブ公園をつくることで、健常者が多様性を学ぶ機会を得ることができる。
そんな期待が集まっています。
そのことを語った素晴らしい記事があったので共有させていただきます。
Yahoo!ニュースの【障がいのある子も安心して遊べる「インクルーシブ公園」の意義と、保護者の思い #こどもをまもる 】という記事です。
〈Yahoo!ニュース / 2023年9月4日〉
つくり手の絶え間ない試行錯誤
…当たり前なのですが、障がいと言ってもさまざまなタイプがあり、しかもまだ認知されていないものも多いわけで…、「誰でも安心して遊べる」公園というのは非常にハードルが高いことです…
…いや、はっきり言って答えはない…、もっと言えば「完成はない」でしょう。
むしろ、「これで良い」とつくり手が思った瞬間にインクルーシブではなくなっていくような気さえします…
常に試行錯誤を繰り返す、そんなマインドが必要なのかもしれませんね。
ちなみに、インクルーシブ遊具を開発する株式会社コトブキでは、試作品をつくる度に、工場などに設置して障がいのある子どもだけでなく、ない子にも遊んでもらって、意見を聞くそうです。
さらには、試作品をもって全国の公園を回るキャラバンも行っている。
これまで東京、大阪、名古屋、福岡などで実施してきたそうですが、多い時だと土日で2000人ぐらいに試してもらい、ブラッシュアップを図っているそうです…(驚)
例えば、色1つとっても色覚多様性や神経過敏の子どもへの配慮が必要になります。
注意が必要な段差は視認性の高い黄色を使い、シルバーのような光る色合いは感覚が過敏な子には痛みとして伝わってしまうので、落ち着いたブラウンを使う。
コントラストも重要で、緑の中に赤色があると色弱の子には茶色に見えてしまうので、色弱の方でも本来の色と同じように認識しやすい青色を基調とするなど、工夫をしているそうです。
そうして健常者と障がいを持つ子がなるべく同じように楽しめるようにしていく。
探求者でなければ、インクルーシブ公園(遊具)はつくれないと思うほどです🙇
インクルーシブ公園はさながら「哲学の広場」
そうしてつくり上げた遊具を通して、子どもたちみんなが夢中になる。
夢中を通して、子ども同士が心を通わせて、お互いを理解し合っていく。
社会は、…というよりも人生は、人と人との心の触れ合いが大きな軸であることを考えると、幼少期にこうした体験をすることは非常に貴重だと感じます。
「さまざまな人がいて当たり前」ということを三つ子の魂で知ることができれば、常に自分軸だけではなく相手との接点で物事を考える思考体質が生まれるからです。
そう考えると、インクルーシブ公園は健常者にとって最高の教育の場になると言えますね😊
子どもも、親も、つくり手もみんなで試行錯誤しながら、「夢中」を生み出していく。
遊びながら「探究心」が磨かれる「哲学の広場」であるとも言えます。
富山県富山市秋ヶ島の「県空港スポーツ緑地」もインクルーシブひろばを整備しているのですが、ここでは単にインクルーシブ遊具を置くだけではなく、イベントを通じてより一層多様性を学ぶ機会を提供しています。
〈NHK NEWS WEB / 2023年9月17日〉
例えば、公園の中を巡るクイズラリーでは「遊具のそばで車いすの子どもが困っていたらどうすれば良いか」といったようなクイズを出す。
「問い」を与えて主体的に答えを見つけてもらうことで、より理解を深めてもらうというわけです。
まさに「哲学」を感じさせてくれる取り組みですね😊
ちなみに、私が専門とする小売業では、障がい者差別解消法が変更され、来年の4月より「合理的配慮の提供」が義務化されます。
〈内閣府 / Webサイト〉
簡単に言えば、さまざまな障がいに適した対応が求められるということです。
このことを通じて、多様性をより一層理解する機会にしていけると良いと思っています。
健常者と障がい者を結ぶ「レゴブロック」
最後は、子どもだけではなく大人にも愛されるおもちゃについてのインクルーシブ事例をご紹介させていただきます。
遊びながら点字を学べるブロック「LEGO Braille Bricks」についてのニュースなのですが、ついにオンラインでの販売がスタートしたそうです。
〈TABI LABO / 2023年9月6日〉
これまでは視覚障がいのある子どもたちの教育を担当する学校や団体にのみ配布されていましたが、より一般化されていくことになります。
このブロックの特徴は点字の文字や数字に対応するスタッド(突起)が付いているのですが、通常のLEGOのピースにも対応しています。
つまり、あらゆる子供が使用でき、健常者である教師や生徒、家族も対等に交流できるLEGOなのです。
この「対等に交流できる」という部分が非常に大事で、インクルーシブは障がいを持った人を「特別に対応する」というのではなく、「違いを当たり前のものとして内包」していくことにあります。
それはもちろん簡単ではありませんが、探究心を持って誰もが楽しめる「夢中」をつくり上げていけたら良いですね😊
本日も最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。
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