安心起業という選択肢
vol.1334
評価額10億ドル以上、設立から10年以内の未上場のスタートアップの企業を「ユニコーン企業」と呼びますが、
会計・経営コンサルティング企業のKPMGが昨年3月に発表したレポートによると、2018年のアメリカでは、ユニコーンは139社。
それが、2022年には648社に急増しています。
世界2位の経済大国である中国は89社が173社まで増えているのに対し、日本は2018年が1社、2022年が6社と、まだまだこれからというところ。
日本は安定志向が強く、大企業に優秀な人財が集まりやすいと言われていますが、どうでしょうか?🤔
一方、そうした中でも新しい動きが見えています。
それが、「安心起業」です。
出向で起業、ダメなら復職
その代表格の1つが、NTTドコモ。
同社では、グループ社員から生まれた新しいアイデアをもとに、新規事業を創り出すプログラム「docomo STARTUP」を昨年にローンチしましたが、これが出向しながら起業ができる仕組みとして注目されています。
〈ITmediaビジネスオンライン / 2024年11月28日〉
起業までには3つのステップがあります。
さらに、独立のカタチも2つのタイプから選ぶことができます。
(A)の「STARTUPコース」は、ドコモの出資が15%未満なので、社員が創業者として株を持って外に出ます。
条件は、自らベンチャーキャピタル(VC)を回ってリードインベスターを連れてくること。
そうしたことが前提としてある上で、300万円(個人に給与所得として支給)の「STARTUP BONUS」などインセンティブもしっかりつけられています。
何より安心なのが、出向というカタチであること。
雇用保険などはドコモの社員として維持されるので、思い切って挑戦できるのです。
仮に事業が継続できなければ、18ヵ月経ったら、ドコモに復帰することができる。
このことが呼水となり、2023年のCOLLEGEとCHALLENGEには約1500人が参画しています。
ちなみに、CHALLENGEでのアイデア数は573件。
さらに、PMF(サービスが市場に適切に受け入れてられている状態)に達したのは14件に及んだそうです。
こうしたセーフティーネットがある環境の中で、チャレンジできるというのは、経済産業省も支援しています。
その施策の1つが「出向起業補助金」。
2024年度は24社が採択されているのです。
社内起業に300億円投資
ほかにも、ちょっと前ですが、大和ハウス工業が6月に社内起業制度を導入し、300億円の投資枠を設定したことがニュースになりました。
〈日本経済新聞 / 2024年5月8日〉
5万人のグループ全社員から新ビジネスの候補を募り、社員間で事業性など起業の可否を審査します。
明確な投資枠を設けているのは、社員の起業への意識を高めるのが狙いとのこと。
これにより、住宅や物流施設など主に既存事業に関連した有望なビジネスモデルをいち早く見つけ出そうとしているわけです。
目標としては、年間200〜500件ほどの提案を見込んでいるとのこと。
審査を社員間としているのもミソです。
既存の事業の枠組みに囚われたら元も子もない…
自由な発想を生かすため、経営陣は原則として審査プロセスの大半に関わらない方針を決めているのです。
そして、ドコモ同様、業績が改善せず会社を清算する場合も、社員は起業前に所属していた部署に復帰できます。
経営の経験を大和ハウスでのキャリアに生かしてもらうことも社内起業の狙いなのです。
ドコモでは実際、かなり多くの社員が挑戦していましたが、その理由について、経営企画部の原尚史事業開発室長は、このように推察されています。
こうした仕組みは、今後の日本のビジネスシーンの大きな活力になりそうですね。
起業家の3つの心得
とはいえ、起業はそんなに甘くはないでしょう。
その荒波を乗り越えて、事業を継続し、成果を生み出していくには、どんなマインドが必要なのでしょうか?
参考になるのは、『起業 神100則』の著者、新井一さんの「3つの心得」です。
〈lifehacker / 2024年11月28日〉
新井さんは、25年にわたり、起業を目指す会社員をサポートしてきた方。
著書は、延べ6万人以上と接してきた経験に基づいて書かれています。
そんな新井さんが大切であると話す3つの心得とは、こちらになります。
私も経営者の端くれなので、私見を言わせていただくと、やはり(3)の粘り強さというのは特に重要だと日々感じております。
経営の神様と称される稲盛和夫さんも著書『京セラフィロソフィー』の中で、どんなピンチにも、最後まで逃げずに足掻くと仰っていますが、この言葉は日々の自分を支えてくれています〜
こうした最後まで諦めずに試行錯誤するということを、社内ベンチャープログラムの中でも、どう育てていくかがカギを握りそうですね🤔
いずれにせよ、起業家が次々とこの国から誕生することを願って、今日は筆を置きたいと思います。
本日も最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました!