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前提の革新
vol.1354
明けましておめでとうございます!
2025年が始まりました。
今年は巳年。
しかも、60年に一度の「乙巳」です。
成長と結実の時期を象徴する年。
また、蛇が脱皮することから、古いものを捨て、新しいものを生み出す年とも言われています。
つまりは、「変化と革新」の一年になる。
確かに世の中見渡すと、トランプ政権スタートなど、変化年を象徴するようなトピックスに溢れているかと思います。
変化対応力が求められるわけですが、実は変化というものは、突発的に生じるということは少ないと感じています。
徐々にその気配を見せ、あるポイントに達すると、急速に顕在化するものの方が多い。
突発的に見えるのは、ほとんどの人がその予兆に気づいていないからだと言えます。
では、その変化の予兆にどのようにしたら気づけるのか?
私は「常に前提を疑うこと」が、その良きトレーニングになると感じています。
「前提」をチェックするPAC思考
まず、ある夫婦のやり取りを見ていただきたいと思います。
奥さんは旦那さんに、こんな風に買い物の依頼を行いました。
「買い物に行って、牛乳を1個買ってきてね。卵があったら10個お願い」
※説明のわかりやすさを優先し、牛乳と卵の数え方を「個」で統一
〈PRESIDENT Online / 2024年12月29日〉
皆さん、旦那さんになったと思って何を買うか頭に思い浮かべてくださいませ〜
はい!
シンキングタイムは、ここで終了です。
では実際、旦那さんが買ってきたものを見てみることにします。
旦那さんが買ってきたもの:牛乳を10個
皆さんの頭に浮かんだ買うべきものと一致していたでしょうか?
ほとんどの方が一致していないのではないでしょうか(笑)
そうです、大抵の方は「何で、牛乳を10個も買ってきたん??」と突っ込んでいるに違いありません。
ただ、PAC思考で考えると、実はこうした勘違いが生まれる原因がよく分かります。
PAC思考とは、クリティカルシンキングを養うためのフレームワークで、物事を論理的に分析し、
隠れた事実を導き出す
のに役立つ思考法。
Premise(前提・事実)、Assumption(仮定)、Conclusion(結論)の頭文字を表しています。
前提に合理性はない
この夫婦の場合、最初の入口である「前提」がズレています。
奥さんは「牛乳と卵が欲しい」と思っている。
一方で旦那さんは「奥さんは牛乳が欲しい」と思っており、卵が欲しいとは思っていなかった。
実際、
「卵があったら」
という言葉は条件についての情報で、正確には「何を10個買うか」ということには言及していません。
それで、旦那さんは
「卵があったら(条件)、牛乳を10個買う」
と捉えたわけです。
PAC思考で捉えた場合は、まず前提として「牛乳と卵が欲しいこと」を伝えないといけません。
ただ、それは多くの人たちにとって「納得できない事実」でしょう。
牛乳を10個買うことなんて常識ではないからです。
「賞味期限とかあるし、よく考えたら分かるだろう」と思うのが普通。
そこでもう1つ、例題を出したいと思います。
ある村が鬼によく襲われ、被害が続出しているとします。
どうやら、その鬼たちの巣窟は鬼ヶ島であることが判明。
主人公はサル、イヌ、キジとともに鬼ヶ島に乗り込み、鬼たちを退治。
さて、村に平和は訪れたでしょうか?
〈PRESIDENT WOMAN / 2024年12月31日〉
正解は、当然「ならない」可能性の方が高い。
普通、自分の村を攻めているぐらいなのだから、他の村だって攻めているでしょう。
そうなると巣窟は鬼ヶ島であっても、他にも拠点があることは予想できます。
ですから、別働隊をつくり(ときに育成し)、守りを盤石にしながら、鬼ヶ島に行くことが判断としてはスタンダードである。
…でも、実は「平和になる」と答えた方も少なくはないでしょう。
なぜなら、桃太郎の物語が頭に刷り込まれてしまっているからです。
「鬼は鬼ヶ島に集結→一網打尽→平和」
という前提と結末が、正解として頭にこびりついていると、上記で挙げたようなリスクを考える間もなく、結論づけてしまう可能性は高い。
そして人生において、ビジネスにおいて、実は何の因果関係もない物語が溢れている。
まずは、自分が思っている前提のほとんどに「合理性はない」と思った方が正しいかもしれない。
それが前提という檻から出られる唯一の方法とも言えるでしょう。
前提とは正義に近い
一方で、ここまでの話からも分かる通り、それは相当難しいことである。
前提を設定することは、さまざまな選択肢を排して、1つのことを信じること。
信じることの、すぐ隣に「正義」という強い意志が存在しています。
「皆さん、地球は宇宙の中心ではなく、他の惑星と同様に太陽の周りを回っているんですよ〜」
と、私が言ったとして、
「えっ!ウソでしょう!」
…と驚く方は、あまりいらっしゃらないと思いますが…
紀元前3世紀頃、アリスタルコスが地動説に近い考えを発表し、16世紀にコペルニクスが地動説を体系的に提唱したり、17世紀にニュートンがケプラーの法則を説明するなど、さまざまな賢者が地動説を確立するまで、それはなかなか信じられないものだったわけです。
人は自分が信じた物語(前提)を正義だと思い、違うものが許せなくなる。
もしくは、自分の前提と違う情報はスルーしてしまう。
ここで冒頭の「変化」について話を戻してみましょう。
実は変化というものは、突発的に生じるということは少ないと感じています。
徐々にその気配を見せ、あるポイントに達すると、急速に顕在化するものの方が多い。
突発的に見えるのは、ほとんどの人がその予兆に気づいていないからだと言えます。
変化とは今までの前提(物語)を壊そうとする怖いものでもあるので、なかなか直視することが難しい。
そして目を背けているうちに、変化の波にさらわれてしまう。
これが「時代に取り残される」というメカニズムなのです。
一方、変化を先読みし、時代をリードしていける人がいます。
そうした人たちの共通点とは、自分にとって不都合な真実にも勇気を持って目を向け、自分の前提を柔軟に刷新できる人です。
きっと、本当に凄い人とは、頭が良い人というよりも「心が柔軟な人」なのでしょう。
自分にとっては理想的な人であり、でも、まだまだ遠い存在にも感じてしまう人でもある。
〜ということで、60年に一度の大変化年の元旦に「前提の革新」を語り、憧れに近づく一歩を歩んでみました〜
また、このnoteアカウントが新しい気づきの巣窟になれるように、これまで以上に柔軟な視点で物事を見つめ、教養を磨き、記事にしたためていけたらと思っております😊
ちなみに今年早々嬉しいことがありました。
何と!フォローしてくださっている方が、12,000人になりました。
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まさにお年玉といえるぐらいありがたいことです。
引き続き有益な記事を書くよう努めて参りますので、
2025年もぜひぜひよろしくお願いいたします!!