判断とはセンス
column vol.1279
仕事を通じて日々思うのが、「判断」することって非常に難しいということ。
その時ベストだと自信を持って決断したことも、後から振り返ると「…もっと、こうすれば良かったな…」と反省することはしばしば…
人にはそれぞれの立場(利害)がありますし、なかなか満場一致ということはない…
だからこそ組織において、人は「自分が判断した」ということから逃げたくなります…
上手くいかなかった時に責任を取りたくないですし、敵をつくりたくないからです。
そう思う方も多いことでしょう。
一方、逆にいえば、「判断し続けることができる人」は、非常に高い能力を持っているとも言えるのではないでしょうか。
優れたリーダーが持つ「判断力」
【ナンバー2がカギを握る】という記事の中でも触れましたが、経営トップの仕事は「経営判断」。
ゆえに、優れたリーダーの条件は高い判断力にあります。
リーダーではなくても、優れたビジネスパーソンという条件でも同じです。
よく優秀なコピーライターは「考える力」だけではなく「選ぶ力」が大切だと言われますが、まさにそう。
ですから、判断する力、判断する勇気を磨いていくと、組織の中で重要なポジションを担っていくというのは間違いなさそうです。
しかし、大事だと分かっていても判断できる人が多くはないということは、どういうことなのでしょうか?
このことについて、非常に素晴らしい示唆を示してくださっているのが、『ストーリーとしての競争戦略』の著者で、一橋大学大学院 国際企業戦略研究科教授の楠木建さんです。
プレジデントオンラインの【タイパ重視のあなたもだ…速読や多読を頑張る人ほど「センスが悪く人間が小さい」と経営学者が語る納得の理由】という記事の中で、このように定義されています。
杓子定規では上手くいかない
判断とはセンス。
スキルではないというのが楠木さんのお考えです。
そもそも、2者の定義をこのようにされています。
判断についてのスキル本もあるので、完全に分けることができない部分もあるかもしれませんが、ただ私も日々数多の経営判断をする中で、杓子定規でできるものではないというのが本音です…
ファジーな部分を残さないと組織は硬直化することもあり、その微妙な塩梅にいつも悩まされています…(汗)
その塩梅こそがセンス。
そして、このセンスの獲得こそ難しい…
センスとは「主観的」であり「曖昧」な要素が強い。
楠木さんは具体的なセンスの磨き方として様々な人生経験をすることを勧めているのですが、とりわけ読書をイチオシしています。
偉大なる経営者などと本を通して対話する。
確かに、山口県の地方都市から世界企業まで導いたユニクロの柳井正さんは、定時に帰宅し、夜は読書に時間を費やしたと聞きます。
そうした偉人との対話によってセンスが磨かれていくというのは、私も日々実感しています。
その上でもう1つ掘り下げていくと、やはり「人間を知ること」にあるのだろうと思っています。
ここがセンスの核かと。
人類学が求められているワケ
最近、面白いと思った事例がシンクタンクの「日本総合研究所」が、人類学者でつくる合同会社「メッシュワーク」と手を結んだことです。
〈東京新聞 / 2024年8月25日〉
つまり、人類学の知見を生かしたコンサルティング事業への転換。
人類学とは、人間の多様性と共通性を理解するために、人間の文化、社会、言語、生物学などを研究する学問。
まさに「人間を知る」ことの重要性をコンサルタントの世界でも認識しているというわけです。
ビッグデータやAIが進化する中、人間による洞察をビジネスに生かすことを模索する。
洞察はセンスであり、判断のもと。
まさに、判断にセンスが求められるという楠木さんのお話に通ずるところかと思います。
こうした流れは行動経済学への意識が高まりや、教育の現場でSTEAM教育への注目などと符号します。
一方、楠木さんは多くのビジネスパーソンが直ぐに獲得しやすいスキル偏重型であると指摘しています。
こうした意識がスキルが圧倒的に高いAIが活躍する時代には必要になってきますね。
〜ということで、本日は判断力ということを軸にセンスの重要性についてお話させていただきました。
本日もせっかくの日曜日なのに雨に見舞われていますが、ぜひ良い1日をお過ごしくださいませ!
それでは、また明日もよろしくお願いいたします〜