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一流の人は「感謝」が基本
column vol.1095
今年は「人に会える」日常を取り戻せていますが、改めて尊敬する人たちにお会いする中で感じることがあります。
それは、一流の方々は「感謝」が基本ということ。
当たり前のように人の良い所を見定め、周りの人を大事に思っています。
ちなみに、稲盛和夫さんはJAL再生で何よりも重んじたことに「心の改革」を挙げていらっしゃいます。
〈東洋経済オンライン / 2023年8月25日〉
就任当初に行った経営幹部研修でも、経営者人生の中で大切にしてきた考え方、理念であり行動規範でもある「フィロソフィ」を説いたそうです。
そのフィロソフィとは「一生懸命に仕事に打ち込む」「つねに謙虚で素直な心をもつ」など、子どもの頃に教わった教訓や道徳です。
その中には本日のお題である
「感謝の気持ちを忘れない」
ということも含まれています。
あまりにも当たり前の話だったので、最初は反発があったそうですが…
一方で知識として身につけていることと実践できていることは違います。
挨拶が大切なことは小学校で習いますが、みんなが会社で朝から元気よく挨拶できるているかどうか…(汗)
こうして稲盛さんは、心の改革を全社に広げ、再生を果たしたのでした。
感謝する方も実はメリットだらけ
常に相手に対して感謝の念を持っていれば、その空気は伝わり、こちらを好意的に感じてくれます。
そこまでいかなくても相手の警戒感は薄れるはずなので、話しかけた時のリアクションもこちらにとって心地よい雰囲気になるはずです。
それに、誰かから「本当に○○さんのおかげです。ありがとうございます」と言われたら、どんな言葉を返してあげたいでしょうか?
逆に辛辣なことを言われた場合はどうでしょうか…?
つまり、相手への念(想い)や言葉はブーメランとして返ってくる。
…まぁ、そんな話は今さらだと思いますが…、これまで1000人以上の社長・企業幹部の話し方を改善してきたスピーチ&コミュニケーション戦略研究家の岡本純子さんも
感謝を示すことは他者へのポジティブな影響のほかに、本人自身にも無数の効能があることが分かっている
と語ります。
具体的な効能の一例が以下の通りです。
・人間関係の輪を広げることができる
・身体の健康を増進させる
・妬みや恨み、不満や後悔に至るまで、多数の負の感情を軽減させる
・よく眠れるようになる
・自尊心を向上させる
これだけ、人に感謝の念を持ち、その想いを伝えることでの効能があるわけですが、それでも職場にいると、なかなか実践できないこともあります。
それも、そのはずです。
なぜなら「自分こそ感謝されたい」と思ってしまうからです…
一流はなぜ「与えられる」のか?
感謝は「感情報酬」と言われ、お金や地位、名誉と同等の価値を持つと言われています。
お金を相手に与えてばかりいたら損した気持ちになるのと同様に、感謝を与え続けると損した気分になるのは当然です。
そもそも、まずは「自分が感謝を与えられたい」と思うのは自然なこと。
相手のため、周りのために一生懸命尽くしたのに、ちっとも「ありがとう」と思われなかったら、「もう二度と相手(周り)のために何かするのなんてやめよう」と気分を害するはずです…
では、なぜ一流の人は感謝の念を与え続けることができるのでしょうか?
それは、きっと叶えたい理想があるからです。
得たいベネフィットと言い換えることもできます。
例えば、美味しいリンゴの実を食べたいとします。
リンゴの苗を植え、毎日毎日、水をやり、大切に育てることで美味しいリンゴの実が収穫できます。
それまでは、徹底的に与え続けます。
美味しいリンゴを得るためには当然のことですが、もしもリンゴが食べたくなければ、与え続けることはできないはずです。
一流の人は能力以上に「理想(得たいベネフィット)」を明確に持っていると感じます。
その理想が高ければ高いほど、周りの人の力が必要になる。
そのことに気づけば、その人の良い所に自然と目が行きますし、「この人がいるから」という思いにもなっていく。
だから、「与える→得るの循環」が自然にできるというわけですね。
別に高い理想でなくても、自分なりの理想を持っているだけで良いと思います。
例えば、「絶対に残業しないために、周りと良好な関係を築き、時にサポートしてもらいたい」というのも有りかと😊
要は仕事において「理想」を持つことが、「感謝を与える続ける」エンジンになるということです。
「合わない人」との付き合い方
…とはいえ、難しいのが「合わない人」です。
…ついつい負の感情が込み上げてきて、感謝どころの話ではなくなってしまいます…
では、稲盛さん同様「経営の神様」と称された松下幸之助さんにアドバイスを求めたいと思います。
松下幸之助さんも何より「感謝」を大切にされた方。
…実際、「普通の人なら不快になるようなことにも、感謝しなさい」と諭しています。
各人それ〴〵長所もあれば短所もあるのだから、お互に忌憚きたんなき注意をし合ふは勿論、長上からの注意叱責しっせき等は感謝の念を以て享受せなければならない。この場合も稍ややもすれば不愉快な態度を示す者があるが、さやうな人に対しては再び良い事も言へなくなるから、その人の向上は全く行き詰りである。修養の途上にある諸君は、須く長上、先輩の批判注意を愉快に受入れ、進歩向上の実とせられたい。
注意されたり、反対意見を言われると、ムキ!っとなりますよね…
でも、結局そこで不機嫌になってしまうと回り回って自分が損してしまう…
先ほどの好循環の逆、「悪循環」にハマってしまいます…
それよりもポジティブに受け入れ、成長に結びつける。
『生きがいの創造』の著者で、経営学者の飯田史彦さんはビジネスだけではなく人生全てにおいて、このようなお考えを持っていらっしゃいます。
この世は魂を成長させるための学校
〈PRESIDENT Online / 2023年8月25日〉
人間がこの世に生まれてくる理由の1つは「人間関係を学ぶため」ということ。
最近「リスキリング」という言葉をよく耳にしますが、新しいスキルや資格を身につけること以上に「人間と向き合う技術(能力)」こそ磨いた方が良いと思っていただけに、飯田さんのお言葉は心に刺さります。
…とはいえですよね…?(汗)
受け入れるではなく「受け止める」
…しかし、ここはポジティブに考えていきましょう…!
上記、飯田さんの明訓が紹介されていたプレジデントオンラインの記事の中で、管理職・ビジネスリーダー向けのメンタリングやコーチングサポートを提供しているプロコーチの林英利さんが、このような知恵をお話しされています。
合わない相手からの言葉は
「受け入れる」のではなく「受け止める」
賛成でもなく、否定でもなく、中間の精神です。
「なるほど!」
「確かに、そういう考えもありますね」
などなど、1つの意見として受け止める。
そうすれば相手も「とりあえずは聞いてくれたな」と思って心が和らぎます。
この「聞く」ということば非常に大きなポイントで、世界最大のデザインサイト「Houzz」で「Best of Houzz」賞を10年連続で受賞するなど、世界的に高い評価を得ているインテリアデザイナーの吉田恵美さんもこのように仰っています。
相手の心に寄り添うこと。気難しい方でも、真剣に向き合うと心を開いてもらえる瞬間があるんです。
〈Book Bang / 2023年8月31日〉
トコトン話を聞いていけば、どんな人でも心を開いていく。
相手が心を開いていけば、こちらも気分が良くなっていく。
そうして、好循環が生まれていくというわけですね。
人間関係が上手くいかない時ほど、リンゴの木を思い浮かべ、自分の理想に立ち返り、その上で相手の価値を改めて明確にする。
そうすることで、一流の人が育っていくというわけですね〜
私もムキっ!とならず、心の改革を続けたいと思います。