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頭が良い人の「仲間のつくり方」
column vol.909
私はテレビ東京で放送されている『あちこちオードリー』を毎週観ているのですが、先週【芸能界が生きやすくなる参考書を作ろう!】というテーマで心に刺さった言葉がありました。
それは、元モーニング娘。・藤本美貴さんの
「ガチの文句ほど笑って言え」
というアドバイスです。
これって簡単そうで、なかなかできない…
ガチの文句を言う時は相当腹が立っているので、笑ったとしても顔が引きつってしまいそうです…(笑)
ただ、こちら側の意見を通したいなら、怒っている感情は邪魔になる…
感情的に相手に意見を伝えると、感情的な部分だけが色濃く相手に残って、本来伝えたかったことが心に届いていない可能性が高い…
仮に意見を受け入れてくれたとしても、反省よりも恨みの方が強くなってしまう。
「いつか倍返しだ」なんて意気込まれてしまうかもしれません…
ここはやはり、上手いこと冷静に自分の意見を通したいところです。
「頭が良い人」はニコニコしながら主張する
脳科学者の中野信子さんは「頭が良い人はニコニコしながら主張を通す」と仰っています。
〈@DIME / 2023年1月3日〉
中野さんは、東京大学、フランス国立研究所、MENSA(全人口の上位2%の知能指数を持つ人が入会できる国際グループ)などで、世界のさまざまな「頭が良い人」を見てこられました。
そんな中野さんがお会いした人の中に、20世紀の「技術大国・日本」を牽引してきたと言えるKさんという方がいらっしゃいます。
交渉上手のビジネスパーソンが多い欧米で、当時、バンバン日本の技術を売り込めたそうです。
会う前は、さぞかしエネルギッシュな方なのだろうと想像していたら、実際会うと非常に物腰の柔らかく謙虚な方だったそうです。
そのギャップに驚いたそうですが、Kさんは柔和なキャラクターはそのままに決して主張は曲げなかったそうです。
「主張を曲げない」というと “仏頂面” を想像してしまいますが、その方は決して「友好的な態度」を崩さなかったそうです。
交渉相手によっては、議論を戦わせて、相手のミスを突き、自分の考えを通そうとする攻撃的な姿勢で臨んでくる人もいます。
しかし、Kさんは「和」を第一に交渉し続けたそうです。
「アサーション・トレーニング」で交渉上手に
以和為貴(和を以て貴しとなす)
昨年、話を伺った禅宗の和尚さまから聞いたのですが、仏教は「自分が人にされて嫌なことを人にはしない」ことが根本にあるそうです。
攻撃的な相手に攻撃的にはならず、じっくりと心を通わせていく。
そうすることで欧米のビジネスパーソンも徐々にKさんに引き込まれていったのでしょう。
とはいえ、常に冷静に相手のことを思い遣るというのは至難の業です。
そこで、中野先生は「アサーション・トレーニング」をオススメしています。
これは、自分の意見を冷静に伝え、かつ相手側の立場をも考慮したコミュニケーションを体得するための、心理学を使ったトレーニング。
人間の対応パターンには「攻撃的(逆ギレ)」「受け身的(謝罪)」「アサーティブ(誠実で対等)」という3つのパターンがあります。
ポイントは何があってもアサーティブな心理状態を保つこと。
例えば身に覚えのないことで怒られ、嫌な思いをしたとします。
その時に
私はそのようなことをした覚えがないのですけど、あなたからはそのように思われているので、とっても悲しいです
と返します。
この相手を責めもしなければ、自分を卑屈にすることもしないのがアサーティブ。
ただただ「身に覚えのない」ことだけを伝えているのです。
加えるならば、「悲しい」ということを伝えることで「私はあなたとは争いたくない」という気持ちを伝えています。
相手も「自分と仲違いしたくない」と分かれば、冷静になるでしょう。
そうすることでお互いの心が近づいた状態で話ができるというわけですね。
「相手の話を聞くことが良い」のはなぜ?
さらに、もう一歩踏み込みたいと思います。
単に対等な関係を築くだけではなく、相手が快く自分の主張を受け入れてくれる状態をつくるにはどうしたら良いか?
そのヒントも中野先生からいただくことにします。
先生は@DIMEの別の記事【頭のいい人たちがやっている周りを味方につけるテクニック】で「人の話を聞く」大切さを説いていらっしゃいます。
〈@DIME / 2023年1月13日〉
ここでポイントになるのが「感情報酬」です。
人は金銭、地位と同じぐらい「人から理解されること」を報酬だと感じます。
上記の記事では、人の話をよく聞き、相手が本当に褒めて欲しいことを見つけることで、求心力を強めることができると解説されているのですが、これは自分の主張(要望)を通すにあたっても重要な点となります。
つまり、何と言ったら相手は気持ち良く自分の主張(要望)を聞いてくれるかを聞き出すということです。
例えば、私はちょいちょい人前でスピーチすることを頼まれるのですが、その時によく「池さんは、口が上手いからお願い」と言われます。
…きっと…、その人からすると褒め言葉なのかもしれませんが…、何か「口先だけのヤツ」というニュアンスがして気乗りしません…
口は頭と連動しているので、もう少し頭の方を褒めてくれないかと…(涙)
もちろん、実際はただ口が上手だけなのですが(笑)
ただ、相手は私を上手く乗せてスピーチをさせたいと思っているわけで、それだったら頭を褒めてくれる方が私はやる気が出る。
より私のパフォーマンスを上げたいなら、頭を褒めた方が良いわけです。
相手の言われたいこと言えるかが肝
つまりは、相手が言って欲しいことが言えるかがカギとなります。
その言って欲しいことは普段の会話の中に散りばめられていると思うのです。
よく相手をサプライズプレゼントで喜ばせる時って、会話から上手く聞き出しますよね?
それと同じで、ビジネスで自分に協力してもらいたい時は、いかにどうお願いすれば一番快くやってくれるかを聞き出すことが肝要です。
ちゃんと、相手が評価して欲しい部分を理解できていれば、頼みごとの度に相手にとっては一番聞きたい言葉が聞けるので、頼みごとの度に感情報酬を与えることだってできる。
人の輪の中心にいる人って、そういう部分が長けている人が多いと感じています。
どんな優秀な人でも一人で何かを成し遂げようとするよりも、さまざまな特徴を持った仲間と一緒に取り組んだ方が大きな成果を生み出すことができる。
さまざまな特徴ということは、さまざまな価値観や性格が揃っている状況なわけで、一人一人に向き合い、相手の理解して欲しいことを見つけ出せれば、その人はきっと大きなことを成し遂げるはずです。
冒頭のKさんは、そんな方だったのではないかと思います。
理屈は分かるけど、実践するのは難しい。
そういったものにこそ、成功者の本質が存在しているのでしょうね。