進む「学業」の再定義
vol.1327
アメリカを拠点に世論調査を行う「Gallup」が実施した「アメリカ人の高等教育機関への信頼」についての調査によると、「非常に/かなり信頼している」と回答した人の割合が、何と36%にまで低下…
2015年は57%だったので21ポイントも下がったことになります…
〈TABI LABO / 2024年11月7日〉
主な要因となっているのが、高騰する学費。
学生たちは高額な授業料を支払うために、多額のローンを組まざるを得ない状況になっている…
以前はそれでも高給取りになれたのですが、…今は必ずしも高い収入を得られるわけではない世の中になっており、学生ローン返済に苦しむ「高学歴ワーキングプア」が増加。
深刻な社会問題となっています。
こうした流れを受けて、若者たちは多様な選択肢を検討するようになっているのです。
アメリカで広がる#bluecollar
今、アメリカではブルーカラーの仕事を選ぶ方が増えており、特にZ世代の間で関心が高いそうです。
〈Pen / 2024年7月4日〉
高学歴ワーキングプアも、その理由の1つなのですが、AIが特定のホワイトカラーの仕事にもたらす脅威も、ブルーカラー職人気につながっているとしているとのこと。
実際、全米大学情報センターの報告書によれば、職業訓練にフォーカスした2年制カレッジへの2023年の入学者は前年から16%増加。
また、ラジオ局のWWJによると、職人系の仕事は引退する人が増えていることもあり、企業側からの需要が高く、年収20万ドル(約3200万円)の配管工や電気技師もいらっしゃるそうです。
さらに注目したいのが、「ブルーカラー・インフルエンサー」の存在。
「#bluecollar」で検索すると、さまざまな投稿を見ることができます。
その中の1人が、「トラック野郎のアレックス」の名で知られる24歳の男性。
トラック運転手として全米を駆け回り、その日常を複数のSNSに投稿しているのですが、トータルで150万人以上のフォロワーがいるそうです。
ほかにも、電気技師のレキシー・アブルーさんも、2022年から仕事の様子などをTikTokに投稿。
現在では220万人のフォロワーを持つ、女性インフルエンサーに。
多いのはフォロワー数だけではなく、アブルーさんはSNSを通して年間20万ドル(約3200万円)の収入を得ているそうで、彼女の影響で新たなキャリアを目指したいという人も増えているようです。
そして、日本でも大学への期待に変化が生まれていると言われています。
「令和4年度学校基本調査」によると
という結果に。
この数字から、大学院を卒業するほどの知識や学力を持ちながら就職が叶わず、非正規雇用や無職になる方が一定数いる。
…そうなると、やはりシンプルに大学、大学院を目指せば良いという話ではなくなりますよね…(汗)
日本初の「恐竜学部」
タビラボの記事をそのように問い立てをしているのですが、私としては、ここにも昨日話をした「好奇心」と「遊び心」があるのではないかと思っています。
私たちは学業を就活のためのプロセスとしてきましたが、元来、学びとは探究。
好奇心を満たすものです。
そんな中、今年最大のトピックは、福井県立大学の「恐竜学部」新設だと思っています(2025年4月に誕生)。
〈NATIONAL GEOGRAPHIC / 2024年10月31日〉
をコンセプトに、恐竜研究の基礎となる地球科学や古生物学、地質学を中心に学ぶことができる同学部。
従来にない特色としては、主に人的・物的な側面での恐竜博物館との連携、新種恐竜の発掘現場などでのフィールド科学の実践、そしてデジタル技術を活用した新たな研究手法の3つが挙げられます。
個人的には、純粋に “ロマン” をヒシヒシと感じ、好奇心がくすぐられる。
…もちろん、就活のことも含めて考えるということが現実的でしょう。
…確かに、恐竜を生業にした勤め先は、あまりないわけです…
しかし!
恐竜の研究は、古生物学はもちろんのこと(現生の)生物学、地質学、環境学、土木学、コンピューターサイエンスなどの幅広い知識を総動員しながら行われています。
そう考えると、汎用性の高い教養を身につけて社会に出られると言えるわけです。
あとは、受け入れ側の企業が、こうしたことを貴重な「ガクチカ」(学生時代頑張ったこと・力を入れたこと)と捉えていければ、好奇心の強い社員を招き入れることが叶うでしょう。
好奇心のある人は、主体的に成長してくれる。
ここは人財採用に関して非常に重要なポイントです。
「地域づくり」のプロを育てる
この恐竜学部の話でピンポイントで個人的に興味を惹かれたのは、ここで学んだ地学の知見で地域課題解決に貢献できる人財を輩出することも目標の1つにしていることです。
東京一極集中が続く日本において、「地域づくり」というのはキーワードになっています。
そんな中、地域づくりについて、もう1つ興味を持ったのが、岐阜県・飛騨で開校予定の「Co-Innovation Valley」プロジェクト。
こちらは、“真の地域おこし” を実行できる人財を育成していこうとしているのです。
〈coLocal / 2024年10月7日〉
Co-Innovation Valleyは、
という3つの事業が軸になっています。
今回のテーマである(1)の「地域おこし人材を育成する大学」については、地域の循環経済を生むような産業おこしができる人材を育成。
「Co-Innovation University(仮称 CoIU)という名で、まちづくりの共創拠点として、2026年に開学する予定となっております。
この大学の特長は、全国と連携した「共創学」。
1年次は飛騨をメインキャンパスとし、2年次以降は
全国の連携地域から関心のある拠点を選択し、共創学を学べるのです。
地域との共創を大切にし、実際に地域で行われるプロジェクトに参画することで、実践しながらリアルに学ぶことを目指している。
さらに、2027年開業予定の共創拠点にはキャンパスの一部ができるだけでなく、古民家や料亭を改築することでまち全体がキャンパスとなる、地域に根差した大学に進化する予定とのこと。
ここにも “ロマン” を感じるのは、私だけでしょうか🤔
先ほど、学業の本来の目的は「好奇心を満たすこと」と話しましたが、もう1つ重要なのが「夢を育む場」であること。
いずれにせよ、大学は今後大きな転換点を迎えることになりますので、良い意味での遊び心をもった柔軟な発想でアップデートしていってもらいたいものです。
自分もそうですが、大学で学び直しをしたいと思っている人は多い。
そうした人たちが通いやすい環境づくり、テーマづくりをしてもらうことも、きっと新しい大学の姿の1つになるでしょう。
そんな期待を叶えてくれる日を夢見て、本日は話を締め括りたいと思います。
最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました!
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