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続々と“地域愛”起業
column vol.1268
現在、小売業協会・生活者委員会のコーディネーターを務めていて、会員誌に掲載する8月に行われた委員会のレポートを執筆している最中なのですが、原稿を書いていて改めて思うことがあります。
起業が昔に比べて圧倒的に身近になっている。
今年、委員会には将来世代である高校生たちにも参画してもらっているのですが、生徒たちの中には既に起業している子もいる。
これまでニュースでしか触れてこなかったことを、目の当たりにすることで時代の変わり目をより実感いたします。
もちろん、身近になっているのは若者世代だけではありません。
帝国データバンクによると、2023年の「新設法人」は過去最多の15.3万社だったのですが、起業年齢は過去最高の平均48.4歳。
より大人層の起業が増えていることが分かっています。
そして最近、個人的に気になっているのが「地域愛」を抱いて起業している方々です。
地域を愛する心が、モチベーションになっていたり、差異力を生んでいる。
今日はそんな事例をご紹介したいと思います😊
土地のエネルギーに惚れ込んだ酒造り
まずは大人起業の事例から。
最近、ダイヤモンドオンラインで紹介されていた【キリンビールのヒットメーカー3人が脱サラして起業「600万人が飲む酒より顔が見える客へ」】という記事が面白いと思いました。
〈DIAMOND online / 2024年7月26日〉
2022年、キリンビール出身の門田クニヒコさん、小元俊祐さん、鬼頭英明さんが長崎・五島列島の小さな村にクラフトジンの蒸留所を設立。
50歳を機に、その後の人生を考えて起業を決意した門田さんの挑戦心がきっかけとなりました。
キリンビールという名門の看板ではなく、自分たちの看板で世界と渡り合えるお酒を生み出したい。
そこで選んだのがクラフトジンでした。
キリンビールで30年以上に渡り、ウイスキー、スピリッツ、ワインなどの商品開発や広告宣伝など、幅広くマーケティング業務に携わった経験を持つ小元さんは
「当時、“クラフトジン”という酒のカテゴリーが世界市場で認知されてからまだ10年程度で、酒の品質もアップグレードされている最中でした。だからこそ、私たちにしか作れないものができると思ったんです」
と、その理由を語っていらっしゃいます。
クラフトジン造りに最適なのが自然豊かで、水が良い場所。
地元に詳しい知り合いが住んでいる3ヵ所の候補地に絞り込み、最終的には福江島を選択。
福江島には、隠れキリシタンを受け入れた場所、空海が「辞本涯」の言葉を残した場所、遣唐使の風待ちの島といったストーリーがある。
「辞本涯」…日本の最果ての地を去るという意味
門田さんは土地、人、風景に根付いている精神を表現したいと思ったのです。
「地酒とは地方の酒ではなく、土地の酒。土地をどう表現するか。そう考えた時に、土地の持っているパワーってすごく大事なんですよ」
と仰っておりますが、ここから「土地のエネルギーに惚れ込んだ酒造り」が始まりました。
世界に知れ渡るお酒が生み出せれば、島の誇りになる。
今後の展開が非常に楽しみです😊
若手の起業家マインドを育てる一歩
現在、政府が2027年度には希望者全員が原則として副業を行うことができる社会を構築することを計画していますが、そういう社会が到来すれば、今まで以上に副業起業が増えるでしょう。
以前、Z世代に関する企画・マーケティング事業を手掛ける「僕と私と株式会社」代表の今瀧健登さんから聞いた話なのですが、同社の半分の社員は起業されているそうです。
つまり、自分で会社を興しながら、同社の社員として務めている。
私はカルチャーショックを感じたのですが
「価値観の合ったメンバーだから離れ離れにならない。その上、みんな自社の社長だから経営者側の気持ちも分かってくれている」
と、そのメリットを話すのを聞いて、1つの理想郷だと感じたのです。
そうした中、社内起業を促進する会社も増えています。
本日の「地域愛」というテーマでご紹介したい例としては、高知県高知市にあるミタニ建設工業。
入社2年目の小﨑百葉さんは、まさに自分のやりたいことを事業にしているのです。
〈ほっとせなNEWS / 2024年7月12日〉
小﨑さんは大学時代にまちづくりの魅力を知り、自分の理想が叶えられると思った同社に入社。
高知市は「若者の人口流出」という喫緊の課題があります。
そこで、小﨑さんは商店街に目をつけ、「こども編集部プロジェクト」をローンチ。
これは夏休み期間に、小学校5年生から中学校3年生の子どもたち10人が、高知市の中心商店街のガイドブック「トキメクBook」を制作するという内容。
子どもたちが気になるお店や品物について、自ら取材や撮影を行い、PCで編集も行います。
その狙いを小﨑さんは
「このような機会を通して、高知という地域に愛着を持ち、高知で働くことに興味を持つ子どもたちを増やしていきたいと思います。そうして、高知に残りたい、高知に帰ってきたい、高知に貢献したいと思う次世代を育成していきたいと思います」
とコメント。
ガイドブックを無料配布するための資金を集めたクラウドファンディングでは200万円以上が集まり、地域の中で共感の輪が広がっていることを強く感じたそうです。
社会課題を解決する「社内・社会起業家」としての活躍。
こうした働きがいを感じ、お互いのパーパスに共感し合える関係なら、たとえ小﨑さんが独立しても良いパートナーシップが結べるかもしれません。
いずれにせよ、今後は社内・社外という垣根がよりシームレスになる時代に移っていきます。
会社と個人の関係は、より新しい発想が求められるでしょう。
起業を通して「共感の輪」を広げる
「地域の未来」ということでいえば、「地球の未来」にもつながる起業家の取り組みもあります。
例えば、「マイクロプラスチックを出さない店」として神奈川県茅ヶ崎市で2021年2月にオープンした洗剤類量り売りとエシカルグッズの店「meguru -low waste shop-」店主の高沢江里子さん。
〈FRaU the Earth / 2024年7月15日〉
きっかけは2019年に始めたビーチクリーンだったそうです。
湘南の海辺をキレイにしようと旦那さんと一緒に「chigasaki0467」という私設PR局を開設。
ビーチクリーンを通じて、マイクロプラスチックへの意識が高まり、「人生が変わった」とのこと。
そして3児の子を育てながら、起業したのです。
商品の選定基準が面白いのですが
「『おしゃれにエコ』と言う感じの店ではなく、知る人ぞ知る、真面目にエコしている人しか買わなそうなお店が多く、その商品をもっと広めたいと思うものを扱わせてもらっている」
と仰っているところに、高沢さんの哲学を感じますね。
自宅の玄関を利用した3畳ほどのスペースなので完全予約制(来店予約は同SNSのダイレクトメッセージ)で、1人1時間ゆっくり買い物が楽しめます。
3畳ほどのスペースで1時間だと結構時間があると思ったのですが、高沢さんによると
「気付いたらお喋りで1時間過ぎ、次のお客様がいらっしゃり慌ててお買い物をする」
という様子が日常のようです。
このお話を読んで感じたのは、お店は共感の媒介であり、触媒でもあること。
そうして美しい海、美しい地球を叶える仲間の輪を広げていく。
背伸びしない社会起業のロールモデルとして、たくさんのヒントが得られますね😊
〜ということで、本日は「地域愛」をテーマに最近気になった起業のカタチをお届けさせていただきました。
また、興味深い事例を見つけたら、ご紹介したいと思います。
本日も最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました!