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100分de名著・中井久夫スペシャル

100分de名著もずいぶんと多くの本を紹介してきた。功績は大きいと思う。2022年12月、取り上げられたのは「こころの医師」中井久夫先生である。一冊の本ではなく、4週にわたり5冊(最後の週は関連する2冊を扱う)の著書を読み解いてゆく。
 
2022年8月、中井久夫先生が亡くなったとの知らせは、多くの人にショックを与えたと思われる。年齢を重ねていたとはいえ、どれほど多くの人の苦しみを解くのに貢献してきたか、計り知れないものがあることを思うと、たいへん惜しまれる。
 
取り上げられたのは『最終講義』『分裂病と人類』『治療文化論』そして『「昭和」を送る』と『戦争と平和 ある観察』である。精神医学界に大きな足跡を遺した著者の魅力を、解説の斎藤環さんが、ふんだんに伝えてくれている。普遍的な精神医学というものはなく、それぞれの文化における接し方があること、つまり一人ひとりを大切にすることを、臨床という患者に寄りそう現場から教えてもらった。番組の視聴も楽しみだが、詳しく記されているテキストを、強くお勧めしたい。
 
最後は、戦争に至る人間の心理を、見事に指摘している。私の見ている景色と重なるものが多いことを、今回知った。これに気づかないでいることの危険性を、今私たちは知るべきだろうと考える。
 
ギリシア語・ラテン語などにも通じ、豊かな教養を以て、さらにエッセイの名手として、そのいくらかの本にも接してきた。今回のテキストで取り上げられたものも、また1冊私のライブラリーにぜひ入れたいと、注文したところである。
 
私は、安克昌先生を通して、中井久夫先生を知った。『心の傷を癒やすということ』は、阪神淡路大震災を通じて神戸の人々のこころを支えた安克昌先生の記録であった。その活動は、PTSDという考えが知られる、大きなきっかけとなった。この本は、テレビ番組や映画にもなった。その脚本は、桑原亮子さん。NHK朝の連続テレビ小説『舞いあがれ!』の、特に好評だった前半部の脚本を手がけた。その安克昌先生の師が中井久夫先生であり、ドラマでも、近藤正臣さんが好演していた。
 
今日は、その安克昌先生が亡くなって、22年目である。

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