#12|ムーミンと星新一|2024.10.17
横道誠『なぜスナフキンは旅をし、ミイは他人を気にせず、ムーミン一家は水辺を好むのか』
タイトルで興味もって、よんだ。
タイトルの問いに一言で答えるなら、それは彼らが「ニューロマイノリティ(脳の少数派)」的な特性を持つからだ、ということになるのだろう。自身も「ニューロマイノリティ」(「自閉スペクトラム症」)の当事者だという著者は、そこから「ムーミン・シリーズ」の作者トーベ・ヤンソンもまた「ニューロマイノリティ的特性」を有していたのかもしれない、という仮説を立てる。本書冒頭、著者はこう書く。
正直なところ、この「仮説」がいまいち飲み込めなかった。というか、作品から作家の特性を診断するのって、いま倫理的にどれだけ許されてるんだっけ、という疑問がずっと頭の片隅に残っていた。
もちろん、作者が「自閉スペクトラム症が「病気」や「障害」だという従来の見方は誤解だとする認識が、いま世界的に広まっている」と前置するように、「ニューロマイノリティ」という語に否定的ニュアンスは含まれない。それでもやはり、当事者目線からトーベの「作品」をそう「読む」ことと、それが「作者」の特性「である」とすることには、けっこう隔たりがある気がする。
念の為に言っておくと、自分のムーミン知識は、平成版ムーミンの映画を子どもの頃にビデオで見た程度なので、原作の「作品」解釈については、たくさん学びがあった。
本書を読んでるときに、ちょうど星新一の件が話題になってた。
これは悪質な例だとしても、「作品」から「作者」を勝手に診断するのは、今後ちゃんとアウトなアプローチになっていくような気はしている。雑感。