
スッタニパータ 第1章『卑賤者』 Vasalasuttaṃ(ヴァサラ・スッタ)第123偈
原文
「Yo ñātīnaṃ sakhīnaṃ vā, dāresu paṭidissati;
Sāhasā sampiyena vā, taṃ jaññā vasalo iti.」
訳
「親族や友人の妻に対し、
強引に、または愛を装って近づく者、
その者を、卑賤者と知るべきである。」
話の背景
この偈では、「真に卑賤者(vasalo)とは誰か」を示すものの一つとして、
「他者の配偶者に不適切な関係を求める者」 が挙げられている。
仏陀は、「親族や友人の配偶者に対し、暴力的あるいは欺瞞的に近づく者は、
生まれではなく行いによって真の卑賤者となる」と説いている。
これは、貞節と信頼関係の尊重 を強調している。
注釈・補足
「親族や友人(Ñātīnaṃ sakhīnaṃ)」
「Ñātīnaṃ(ニャーティーナン)」:「親族」
「Sakhīnaṃ(サキー ナン)」:「友人」
これは、「家族や友人の配偶者に対して不適切な振る舞いをする者」を指す。
当時のインド社会では、家族や友人との信頼関係は特に重視されていたため、
そのような行為は強く非難された。
「配偶者に近づく(Dāresu paṭidissati)」
「Dāresu(ダー レース)」:「妻や夫(配偶者)」
「Paṭidissati(パティディッサティ)」:「目立つ、関わる」
これは、「他人の配偶者に不適切な関心を持ち、
関係を持とうとする行為」を意味する。
「強引に、または愛を装って(Sāhasā sampiyena)」
「Sāhasā(サーハサー)」:「暴力的に、強引に」
「Sampiyena(サンピイェーナ)」:「愛を装って、誘惑して」
これは、「力ずくで関係を迫る者」や
「甘い言葉で相手を誘惑する者」の両方を含む。
どちらの方法でも、他人の信頼を裏切る行為として非難される。
「卑賤者(Vasalo)」
「Vasalo(ヴァサロ)」:「卑しい者、徳のない者」
仏陀は、「生まれによって人は卑賤者になるのではなく、
行いによって卑賤者となる」と説いている。
この偈では、「他者の家庭を壊し、不貞を働く者こそが真の卑賤者である」
ことが強調されている。