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スッタニパータ 第1章『卑賤者』 Vasalasuttaṃ(ヴァサラ・スッタ)第120偈

原文

「Yo have iṇamādāya, cujjamāno palāyati;
Na hi te iṇamatthīti, taṃ jaññā vasalo iti.」

「借金をしながらも、
返済を迫られると逃げる者、
『借金などない』と言い張る者、
その者を、卑賤者と知るべきである。」


話の背景

この偈では、「真に卑賤者(vasalo)とは誰か」を示すものの一つとして、
「借金を踏み倒す者」 が挙げられている。
仏陀は、「他人から金品を借りながらも、それを返済せずに逃げる者は、
生まれではなく行いによって真の卑賤者となる」と説いている。
これは、誠実さと信用の大切さ を強調している。


注釈・補足

「借金をする(Yo have iṇamādāya)」

  • 「Yo」:「誰でも」

  • 「Have」:「まさに、確かに」

  • 「Iṇamādāya」:「借金をして」

これは、お金や財産を借りる行為 を意味する。
当時のインド社会では、借金の返済は道徳的義務であり、
それを怠ることは重大な非行と見なされていた。

「返済を迫られると逃げる(Cujjamāno palāyati)」

  • 「Cujjamāno」:「返済を求められ」

  • 「Palāyati」:「逃げる」

これは、「借りたものを返さず、
責任を放棄して逃亡する者」を意味する。
誠実さの欠如が強く非難されている。

「借金などないと言い張る(Na hi te iṇamatthīti)」

  • 「Na hi」:「決して~ない」

  • 「Te」:「彼にとって」

  • 「Iṇam」:「借金」

  • 「Atthi」:「ある」

  • 「Ti」:「~と言う」

つまり、「借金があるのに『そんなものはない』と
嘘をついてごまかす者」を指す。
当時の社会では、これは最も卑しい行為とされ、
人としての信用を完全に失う原因となった。

「卑賤者(Vasalo)」

  • 「Vasalo」:「卑しい者、徳のない者」

仏陀は、「生まれによって人は卑賤者になるのではなく、
行いによって卑賤者となる」と説いている。
この偈では、「誠実さを欠き、借金を踏み倒す者こそが真の卑賤者である」
ことが強調されている。

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