
スッタニパータ 第1章『破滅』 Parābhavasuttaṃ(パラーバヴァ・スッタ)第94偈
原文
「Asantassa piyā honti, sante na kurute piyaṃ;
Asataṃ dhammaṃ roceti, taṃ parābhavato mukhaṃ.」
訳
「偽りの者には、偽りの者が親しくなり、
真実の者には親しみを抱かない。
偽りの教えを好む者、
それが破滅への道である。」
話の背景
この偈は、「破滅の原因」として、「偽りの者」と「真実の者」の区別がつかないことを説いている。
仏陀は、「偽りの者」は「真実の教え」を嫌い、「偽りの教え」に心惹かれることを警告している。
真実を見極める智慧がなければ、破滅の道を歩むことになると示している。
注釈・補足(Suttanipāta-aṭṭhakathāより)
「偽りの者には親しみを抱く(Asantassa piyā honti)」
「Asanto(アサント)」とは、偽りの者、不真実な者を意味し、自己中心的で偽善的な行動をする者を指す。
「Piyā honti(ピヤー ホンティ)」とは、親しくなる、好まれるという意味。
この偽りの者は、同じように偽りの者たちと親しくなり、真実の者を嫌う。
「真実の者には親しみを抱かない(Sante na kurute piyaṃ)」
「Sante(サンテ)」とは、真実の者、善なる者を意味し、仏陀や高徳な修行者、真実に従う者を指す。
偽りの者は、真実の者を嫌い、距離を置く。
これは、偽りの者が真実を恐れ、自己の誤りを認めたくないためである。
「偽りの教えを好む(Asataṃ dhammaṃ roceti)」
「Asataṃ dhammaṃ(アサタン ダンマン)」とは、偽りの教え、不善なる教えを意味し、正しい仏法ではなく、邪見や誤った考えに基づく教えを指す。
偽りの者は、このような教えを好み、正しい仏法を嫌う。
これにより、正しき道から逸脱し、破滅へと向かう。