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スッタニパータ 第1章『卑賤者』 Vasalasuttaṃ(ヴァサラ・スッタ)第130偈

原文

「Yo brāhmaṇaṃ samaṇaṃ vā, bhattakāle upaṭṭhite;
Roseti vācā na ca deti, taṃ jaññā vasalo iti.」

「バラモンや修行者が、
食事の時間に訪れたとき、
怒りの言葉を向け、施しを与えない者、
その者を、卑賤者と知るべきである。」


話の背景

この偈では、「真に卑賤者(vasalo)とは誰か」を示すものの一つとして、
「聖者に対して怒りを向け、施しを拒む者」 が挙げられている。
仏陀は、「バラモンや修行者が托鉢に訪れた際に、
怒りの言葉を向け、施しを拒む者は、
生まれではなく行いによって真の卑賤者となる」と説いている。
これは、布施(ダーナ)の重要性 を強調している。


注釈・補足

「バラモンや修行者(Brāhmaṇaṃ samaṇaṃ)」

  • 「Brāhmaṇaṃ(ブラーフマナン)」:「バラモン(司祭階級の者)」

  • 「Samaṇaṃ(サマナン)」:「修行者(仏教や他の宗教の出家者)」

これは、「宗教的な立場のある人物、特に修行を積んでいる者」を指す。
仏教では、修行者に施しを行うことが功徳を積む行為とされており、
それを拒絶することは善行の機会を逃すことを意味する。

「食事の時間に訪れる(Bhattakāle upaṭṭhite)」

  • 「Bhattakāle(バッタカー レー)」:「食事の時間」

  • 「Upaṭṭhite(ウパッティテ)」:「訪れる」

これは、「修行者が托鉢に訪れた際」を指している。
仏教では、出家者は自ら食物を調達せず、
在家の人々の施しによって生活することが前提とされている。

「怒りの言葉を向ける(Roseti vācā)」

  • 「Roseti(ロセティ)」:「怒らせる、非難する」

  • 「Vācā(ヴァーチャー)」:「言葉」

これは、「施しを求める修行者に対して、
侮辱的な言葉や怒りの言葉を投げかける行為」を意味する。
仏教では、「優しい言葉を話すこと(Subhāsita)」が重要とされ、
乱暴な言葉は避けるべきとされる。

「施しを与えない(Na ca deti)」

  • 「Na(ナ)」:「~しない」

  • 「Deti(デーティ)」:「与える」

これは、「托鉢に来た修行者に対して、何も施さない行為」を指す。
仏教では、布施の実践が五戒と並んで重要な徳目とされ、
それを怠ることは自らの福徳を損なうと考えられていた。

「卑賤者(Vasalo)」

  • 「Vasalo(ヴァサロ)」:「卑しい者、徳のない者」

仏陀は、「生まれによって人は卑賤者になるのではなく、
行いによって卑賤者となる」と説いている。
この偈では、「怒りの言葉を向け、施しを拒む者こそが真の卑賤者である」
ことが強調されている。

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