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スッタニパータ 第1章『卑賤者』 Vasalasuttaṃ(ヴァサラ・スッタ)第117偈

原文

「Ekajaṃ vā dvijaṃ vāpi, yo pāṇe hiṃsatī naro;
Yassa pāṇe dayā natthi, taṃ jaññā vasalo iti.」

「一度生まれる者、または二度生まれる者であっても、
生き物を害する人、
生き物への慈しみを持たない者、
その者は、破滅への道を歩む。」


話の背景

この偈では、「破滅の原因」として「生き物を害すること」が挙げられている。
仏陀は、「どのような生まれの者であろうと、生き物を傷つけ、
慈しみを持たずに生きる者は、自己の破滅を招く」と説いている。
「他者への慈悲と共感を持ち、非暴力の道を歩むこと」の重要性が強調されている。


注釈・補足(Suttanipāta-aṭṭhakathāより)

「一度生まれる者(Ekajaṃ)」

「Ekajaṃ(エカジャṃ)」とは、「一度だけ生まれる存在」を指す。
ここでは、胎生(哺乳類など)の生き物を意味する​

「二度生まれる者(Dvijaṃ)」

「Dvijaṃ(ドゥヴィジャṃ)」とは、「二度生まれる存在」を指す。
鳥などの卵生の生き物が、まず卵として生まれ、
その後孵化して成長することから「二度生まれる」と表現される​

「生き物を害する(Yo pāṇe hiṃsatī)」

「Yo(ヨ)」は「誰でも」
「Pāṇe(パーネ)」は「生き物(命あるもの)」、
「Hiṃsatī(ヒンサティ)」は「傷つける、害する」
このフレーズは、生き物を殺傷し、暴力を振るう者を指す​

「慈しみを持たない(Yassa pāṇe dayā natthi)」

「Dayā(ダヤー)」は「慈悲、憐れみ」、
「Natthi(ナッティ)」は「~がない」
つまり、「他者の命に対する慈しみが欠如している者」を指す​

「破滅への道を歩む(Taṃ jaññā vasalo iti)」

「Taṃ(タṃ)」は「その者」、
「Jaññā(ジャニャー)」は「知るべきである」、
「Vasalo(ヴァサロ)」は「卑しい者(徳のない者)」を意味し、
「Itī(イティ)」は「~と考えよ」という意味。
このフレーズは、「生き物を害する者は卑しく、破滅へ向かう者と見なされるべきである」と解釈される

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