クレームとクレイジーな上司②
クレイジーな上司はずっとクレイジーなわけではなく、普段はただの陽キャで中2で成長が止まったような子どもっぽさを残している、なんとも憎めない人である。
仲の良い人が席を外している隙にメモ帳にふざけた落書きをして何だこれ?誰が書いたの?と反応しているのを遠巻きに見てケラケラ笑い、声がでかいので周りにいる人もどんどん巻き込んでいく。
隣の席の大人しいタイプの後輩にもダル絡みし、最初はクールな反応をしていた後輩もだんだんクレイジー上司の性格が掴めてきたのか馬鹿話に乗っかるようになっていった。
理不尽なことやちょっと会話が通じないタイプには厳しい姿勢を取るが
目の前の仕事はぶつぶつ言いながらもちゃんとやるし偉ぶらない。
元々営業畑出身で机にじっとして事務作業をするよりも営業の方が性に合っているようで、私に向かって平気で「あー、この仕事飽きちゃった。」と大きな声で言ったり、ちょっとサボりグセのある人に面と向かって「◯◯さんすぐサボるからな〜」と本人に向かって平気で言ってしまう無邪気さがある。
最初こそなんだこのデリカシーのない人と思ったが、本当に裏表なく素直に思った事を言っているだけなので、不思議なのだが気に障るような感覚がないのだ。
子どもが自然と遊んでいるおもちゃに飽きて次のことに目移りするようなごく自然な現象が起きているだけと素直に受け止められるのである。
元々の性格もあると思うが、この自然体の根源は「人からどう見えるかを気にしない」ところから来ていると推測している。
以前、クレイジー上司が業務委託の人にとある仕事のマニュアルを研修した事があった。
その後、その業務委託の人が間違ったやり方をしてお客さんに迷惑をかけてしまった。それに対して異常に怒りが湧いたらしく、メールでめちゃくちゃ激怒した内容を送っていた。
それを見た委託の人もめちゃめちゃキレて返信してきて受信BOXがカオスな状態になっていた。
そしてその委託の人から話を聞いた社内の別部署の人から「オタクの上司、どんな人なの?」と質問された。
どんな人と聞かれたら50代の子どもみたいなおじさんとしか答えようがないのでそう言ったら委託の人がいろんな人に愚痴を言いまくっていて、あの人大丈夫なの?って言われてるよ、、と噂されていることを知った。
怒りたくなる気持ちはわからないでもないけどさすがに文章強かったよな、と思い(「前研修しましたよね?何聞いてたんですか?」みたいな責め立てる文章だった)
「あの言い方だと責められてると受け取ってもおかしくないですよ。人によっては重く受け止めすぎて落ち込んで本当に辞めちゃいます。今度から、異常に怒りが湧いて勢いでわーっと文章打ったら、一回下書きに入れて私に見せてください!」と怒ってみた。
すると
「だって、何で間違えるかね?研修受けてるのに。俺にはさっぱりわからんよ。わからないまま話を進めるからこうなる訳でしょ。わからないなら一回案内を止めて、質問するなりわかる人に助けてもらうなり引き継ぐなりできるわけじゃん。
それをさ、確認もしないでできないことをできるってお客さんに言うから後からこうやってクレームになって尻拭いは俺らでしょ。やってらんないよね。」
とまぁ確信をついているのである。
こういう状況でも私はやんわり事を荒立てないようにするがあまり、相手にそれほど響かない感じで伝えてしまうので、ストレートにダイレクトに言えるあたりは良いのか悪いのかわからないが尊敬する。
いや、尊敬するということは本当は私もビシッと言いたいのである。
ただ言った後にあんな言い方しなきゃよかった、、と後悔するタイプであることも知っているので私は私に合った対応を普段からしているのだ。ガツンと言う人もいれば、やんわり言う人もいる。違っていい。
「そうですよね、でも今回のは流石にちょっと文面強すぎですね。もし私がこのメール受け取ったらもうビビっちゃって仕事できないです。
で、この委託の人が他部署の人にクレイジーさんってどんな人?っていろんな人に聞いてるみたいで、このメール広まったらクレイジーさんの見られ方も変わっちゃうかもしれないし、、」
と伝えてみた。ここで驚きの回答が来た。
「あ、そうなの?いいよ、別に、人からどう見られてるかなんて俺気にしないし。何とでも言ってくれ」
あぁ、この人はこの芯の部分があるから良くも悪くもいつも自然体で
言ってることと行動が伴ってて、迷惑かけられても謝ってくれなくてもなんか憎めないのか。
なるほど。とストンと腑に落ちた。
ここまで突き抜けてしまえば嫌われるどころかむしろ好きになるんだな、と自分の感情が物語っていた。
よく「あの人愛想悪いから誤解されやすいんだけど、実はいい人なんだよ」みたいな事を言ったりするがクレイジー上司に関しては「あの人、あのままだよ」と言えるかなり希少な種族ではないかと思う。
良くも悪くも。