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「光る君へ」第38回「まぶしき闇」「美しき父と子、悲劇の予感」

ききょうとの久々の対面。
というか、ききょうからしてみれば対決しにきたのだった。

ききょう:ところで、まひろさまは何ゆえ源氏の物語をお書きになったのですか
     もしかして、左大臣様にお頼まれになったのですか
     帝のお心から枕草子を消してくれと
     亡き定子様の輝きをなきものとするために
まひろ :帝のお心をとらえるような物語を書きたいとは思いました
ききょう:私は腹を立てておりますのよ、まひろさまに
     源氏の物語を恨んでおりますの

第38回より

さすがききょう。すべてお見通しだった。

道長:実はこれは帝に献上したいと思っておった
枕草子に囚われるあまり、亡き皇后様から解き放たれぬ帝に、枕草子を超える書物を献上し、こちらにお目を向けていただきたかったのだ

第31回「月の下で」

源氏物語を密かに胎内に宿したこの夜、まひろと道長はともに月を見上げていた。

君も見ているだろう
この消えそうな三日月
つながっているからねって
愛しているからねって
三日月に手を伸ばした
君に届け この想い

綾香「三日月」

二人が月を見ている時、私の脳内には綾香のこの曲が流れていた。
ドラマでは、三日月ではなく、満月だったけれど。
月を見上げて離れた人を思うという発想は実は古典の世界に多く見られるのだ。

さて、話が逸れてしまったが、このまひろと道長の秘密の企て、ききょうは勘づいていたということか。
「私はいかなる世となろうとも皇后定子様の灯火ともしびを守り続けて参ります。
私の命はそのためにあると思っております」というききょうの覚悟に、まひろは圧倒されていた。

月を見てもの想いに沈むまひろ。
そこにチャーミング宮の宣旨登場。

宮の宣旨:其方は何のためにここにおる
まひろ :帝の御ため、中宮様の御ためにございます
宮の宣旨:生きるためであろう
     物語を書くなら里でも書ける
     ここで書くのは暮らしのためだと思っておった

第38回

帝のため、中宮さまのためというまひろの言葉に嘘はない。でもそれは道長の願う帝と中宮さまの関係性を築くためということ。そして気がつけば、まひろは宮中でさまざまなことを見聞きしながら源氏の物語を書くことに夢中になっていた。
そう、最初は「暮らしのため」であったはずだけれど、そのことを忘れるくらいに今は夢中で源氏の物語を生み出しているのだ。

なぜ、書くのかという問いは、あかね(和泉式部)との会話の中にも出てくる。
和泉式部にとって、書くことは生きること。

まひろにとっての書くことを「お仕事なのですね」というあかね。
ちょっと目を見開いて笑ったあたり、そういう見方もあったのか、という気づきなのかな。

ちなみに、あかねの前の夫とは、橘道貞。受領階級の中流貴族で和泉守いずみのかみを務めたことがあった。これが和泉式部の「和泉」の由来である。
あかねは夫がありながら、為尊親王と恋に落ちる。為尊親王は三条天皇(木村 達成)の弟で、母親は道長の妹。だから道長にとっては甥っ子ということになる。
だが為尊親王は26歳という若さで亡くなってしまう。
悲しみに暮れる和泉式部のもとに為尊の弟、敦道親王から橘の花の枝に結びつけられた歌が届く。為尊の死からちょうど1年経った頃のことだった。ここから敦道との恋が始まるのだ。
しかし、この敦道もまた、27歳という若さで亡くなる。
この敦道との恋について書いたのが、まひろに見せていた物語、和泉式部日記なのだ。
あかね(和泉式部)については語りたいことがありすぎるので、また別の機会に。

それにしても藤壺での貝合わせのシーンは雅(みやび)。
そして何と魅力的なあかね。頼道のメロメロっぷりも可愛らしい。隣で藤原頼宗(上村 海成)が微妙な視線を送っているのも面白い。


道長は、すっかり政治家の顔になった。

我らがなすことは、敦成さまを次の東宮になし奉ること。そして一刻も早く御即位頂くこと。
家の繁栄のため、ではないぞ。なすべきは揺るぎ亡き力を持って民のために良きまつりごとをおこなうこと。

第38回道長

敦康親王を元服させ、彰子さまから遠ざけようとする。
敦成親王を一刻も早く即位させるということは、一条天皇をとっとと退位させることを意味する。うーん、この台詞の後半部分を信じたいとは思うものの、ちょっと複雑。


巷では「呪詛ちか」などと呼ばれているらしい伊周。
私は以前の記事でも書いたように、伊周に対する悪い印象はあまり持っていない。

だから、登場するたびに呪詛返しにでもあっているかのように自らが弱っていく伊周の姿は本当に痛々しくて哀れであった。演じている三浦翔平さんも、呪詛シーンの撮影中は、風邪を引いたり、怪我をしたり、体調が良くなかったとインタビューで語っていた。なんと恐ろしいこと!


よく考えてみれば、頼道(渡邊 圭祐)と伊周は同じような立場だったわけで。
父である道隆が急死したためにこんなことになってしまったけれど、誰しもが伊周になる可能性はあったのではないだろうか。

伊周が呪詛の紙を撒き散らしながら、道長のもとから追い返されるところに出くわしたまひろの表情。
涙を浮かべながら、じっと道長を見つめていた。
道長とまひろの企て、源氏の物語によって一条天皇の寵愛を彰子に向けさせることに成功した、その結果があの伊周の姿だったのだ。


みずら姿が可愛らしかった渡邉櫂くん演ずる敦康親王も今週で見納めのよう。
彰子さまが「闇を照らす光」だったという敦康親王。

今週のタイトル「まぶしき闇」とは、敦康親王・一条天皇親子のこと?
「まぶしき闇」というより「美しすぎる父子」という感じなのだが。

来週の予告、「のぶなりー」と叫ぶような声。不安である。

追記
コングラボードいただきました。読んでくださった皆様、スキしてくださった皆様、ありがとうございました!

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