テレビのコトバ 〜「虎に翼」第17週〜
第17週の「虎に翼」から。
「婿殿が、ダメならこの際、誰との子でもかまいません。決して、桜川の血を途絶えさせてはなりませんよ」
涼子さまに母親が言う「誰の子でもいいから子を産みなさい」という言葉のおぞましさ。
はたと気づいた。
涼子さまが男であったら、この母親の言葉に、おぞましさを感じただろうか。
きっと、違和感を感じることなく受け流してしまったに違いない。
だって、平安時代の後宮から大奥まで、そういう国に生きてきたのだから。
それをあえて、女性に向かって言わせるあたり、この脚本のすごさを感じる。
もちろん、最後は寂しさということも付け加えて、少し穏やかな味付けをしてしまうあたりがNHK。
でも今までに比べてずいぶん戦っている。いいぞNHK!
そして、寅子が優未に言うこの台詞。
「友達を作った方がいいだなんて言ってごめんなさい」
友達を作らねばならない、たくさんの友達がいることをよしとする世の中で、これを寅子に言わせるのも、素晴らしいぞNHK!
友達が少ない子は不幸だという呪縛に苦しめられてきた人は、実はとても多いのではないだろうか。
これまでの朝ドラだって、典型的パターンとして、故郷の仲間や幼馴染がずっと主人公の理解者として存在していた。こういうドラマが友達幻想を生み出してきたとも言える。
寅子はこうも言う。
「心の拠り所が一人だと、関係が対等から特別になって、いびつになっていく」
「でも拠り所は友達じゃなくたっていいんだわ」
そうだそうだと、快哉を叫ぶ。
若い時は、自分が友達という存在について悩み、親になったらなったで、今度は子どもの友達問題について、勝手に心配してきた。
でも、寅子が言うとおり、拠り所は友達であっても、友達でなくてもいいのだ。
もちろん、寅子にも法律学校時代の仲間がいるが、それぞれが自分の人生を生きながら、寅子の人生と交わったり、離れたりしていくところがとてもリアリティがある。
それにしても、ラスト1分、襖を閉めた後の航一さんの表情は映画のワンシーンのようだった。
岡田将生、いい俳優になったもんだ。
来週も楽しみ。