「虎に翼」第25週「いつも心によねさんを」
週も盛りだくさんの「虎に翼」、とはいえ、やはり桂場等一郎weekだったと思う。
このドラマの最初から、桂場等一郎は寅子が乗り越えるべき敵?いや壁として存在してきた。第1週の、はるさん(石田ゆり子)の壁のぶち壊し方は本当に痛快だった。
この壁は、時に寅子を守り、進むべき方向を示してくれる存在。
寅子の父親が巻き込まれた共亜事件の時も、桂場は政治家の脅しに怯むことなく「司法の独立性」を守った。
「司法の独立」
私たちが日頃見ているエンタメのドラマや映画って、基本的に三権分立が守られず、上からの指示とか、そういうものに翻弄されながら戦う人々―刑事・弁護士・ジャーナリストーの物語が多い。きっとこの「司法の独立」が、日々の戦いなしには守り得ないものだと感じているからこういう物語に共感するのだろう。
そして、よく考えたら最高裁判所長官って、ドラマに出てくることあまりないような気がする。背負っている職責の重さは想像もつかない。
桂場は長官として「司法の独立」を守りたいのだ。
やり方は間違えたけれど、そのくらいしなければ押し切られるという危機感があったのだろう。なんたって寒河江という政治家のモデルは田中角栄なのだから。
多岐川に最期に会いに行かなかったのも笹竹に顔を出さなくなったのも、私人としての感情をすべて押し殺して「司法の独立」を守るという覚悟なのではなかったか。
航一さん、血を見るのがダメだったのね。
鼻血からの卒倒、膝枕事件。
でもこのおかげで、寅子は桂場と和解し、頑なだった桂場の心も和らぎ、航一の心も一区切りがつく。
桂場は最後まで寅子の壁であり続けるんだろうな。
そして、寅子が自分を乗り越えて、理想を実現することも願っている。
そんなふうに思えた、鼻血からの膝枕事件だった。
涼子さまも司法試験に合格。しかし司法修習はしないと言う。
境遇からして一番遠いところにいたような二人だったけれど、こうしてつながり合っていたとは。
いつも心によねさんを。
なんて素敵な!
私も、心によねさんを住まわせよう。
最後に美佐江ちゃんのことも語らねば。
美佐江ちゃんが自分を特別な存在だと思っていたということが、今になって明かされる。もしかして寅子に近づいたのも、日本で初の女性弁護士の一人という特別な存在だったからなのか。
とすれば、あの日の、寅子への問いかけ「どうして人を殺しちゃいけないのか」はどういう意味を持っていたのだろう。
純粋な心の叫びかと思っていたのだが、あの手帳に書いてあったのは、特別な存在で居続けることが叶わなくなることへの苦しさ、悲しみ、絶望。
まだ私の中で美佐江ちゃんの思いがどこにあったのか、消化しきれてはいない。
ただ、寅子が優未を抱きしめた時に見せた表情は、寂しさだけではなかったのかもしれない。寅子もまた、普通の母親に過ぎないという失望もあったのではないか。
寅子は、「あの日あと一歩だったのだ」と後悔していた。
でも私は、美佐江には、よねに出会ってほしかったな。
よねさんに
「自分が特別だと。何を思い上がっているんだ、アホか。
東京に来てみろ。もっとすごい奴がいる。東京で、自分で足掻いてどうにもならなくなったら、私のところに来い」
こんなふうに言ってもらえたらよかったのに。
調査官の音羽さんもいい味を出していた今週。
えっ、来週で終わっちゃうって本当ですか?