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「光る君へ」第34回「目覚め」現実世界では叶わないことでも、物語の中なら叶えられる。

1007年、まひろは宮中で源氏物語を書き進めている。
前回、里に下がって書いたのが巻二「帚木」。
今回、公任(町田啓太)や行成(渡辺大知)、斉信(金田哲)、女房たちが読んでいたのは、「人違い」・「方違え」という言葉から「帚木」の後半から巻三「空蝉」だとわかる。

さて、いつもの
【ざっくりあらすじ】
巻二「帚木」の雨夜の品定めの翌日、光源氏(この時17歳)は方違え(陰陽道の方角占いで、目的地の方角の運勢が悪い時、いったん別の方角に行き、そこから目的地に行くこと)で紀伊守の屋敷に行く。そこで出会った空蝉(伊予守の後妻)という女性に心惹かれ、強引に一夜を共にするのだが、空蝉はその後、源氏を拒み続ける。
諦めきれない源氏は、再び紀伊守の家に忍んで行く。
夜、継娘の軒端荻と一緒に寝ていた空蝉は、光源氏の気配を察知し、間一髪でそこから逃げる。
源氏で眠りこけていた軒端荻を空蝉と思い込んで、関係を結ぼうとする。途中で人違いに気づくのだが、そのまま契りを結んでしまう、というお話。

そういえば、まひろとさわさんが石山詣をした時に道綱(上地雄輔)が、まひろと勘違いしてさわさんの寝所に忍び込む場面があった。あれがこの空蝉のモチーフということなのかもしれない。

こういう話を面白いと思えるのは、酸いも甘いも知った大人の男女だけだろう。
もちろん教科書には載るはずもなく。
ここまでの源氏物語のストーリーを考えると、19歳の中宮彰子が源氏物語の面白さがわからない、というのは当然のことだと言える。

曲水の宴の後、まひろは道長から贈られた檜扇を取り出しながら、幼き日のことを思い出す。

小鳥を追って行った先で、出会ったあの人。あの幼い日から、恋しいあの人のそばで、ずっとずっと一緒に生きていられたら、いったいどんな人生だっただろう。

まひろ

まひろは想いは溢れ、筆を走らせる。
有名な巻五「若紫」である。
のちに紫の上と呼ばれる少女、若紫。初登場は10歳くらい。
18歳の光源氏がこの少女と出会う場面は、前回も紹介したが、教科書の定番教材である。

光源氏はのちにこの少女を自邸に引き取り、理想的な女性に育てようとする。
しかも引き取る時はもはや誘拐では、と言いたくなるくらい強引に連れ去る。

この売れさり場面はもちろん教科書には載らないが、授業のフリートークで話をすると、高校生たちは、
ロリコン❓
きもい❗️
ありえん‼️
と散々な反応で盛り上がる。

まあねえ、現代なら高校生と小学生だからね。

でも、まひろが、幼いあの時から三郎とずっとずっと一緒にいられたら、という思いからこの若紫と光源氏の物語が生まれていた、と考えるなら、初恋を貫く物語と読むことができる。この少女は大人になり、紫の上と呼ばれ、一生源氏とともに生きるのだから。

現実世界では叶わないことでも、物語の中なら叶えられる。
そんな、物語作者としてのまひろの願いが見えた第34回だった。




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