読書【鳥と港】”好き”を仕事に。
新聞の書評欄が好き
日曜日に掲載される地元新聞の書評欄が大好きです。
コーヒー飲みながら、鼻歌うたいながら読みます。
この本はそんな書評が導いてくれたもの。
書評家は「大鳥若馬」さん。
誰だか存じ上げず申し訳ないのですが、文体の根底には「人間讃歌」があるのでは? と思わせる暖かみが感じられました。
「ギタリストのピークはギターを初めて弾いて感動した瞬間」
という名言を交え、末尾には
「しんどさを感じたことがあるというあなたへ、この物語を贈りたい」
と殺し文句がピタッとはまってイチコロの書評になりました。
好きを仕事に
過去を振り返ってみますと、大学3回生の終わりごろから始まった就職活動で、突然、まわりの友人達が
「地元に帰るから銀行一択だな」
「給料の高い業界だけ狙っている」
「海外勤務できる会社に行きたいな」
なんて言い出して、「え? いつの間に決めてたの?」と私は置いてけぼり状態(単に私が遅いだけなんですけどね)。
遅れを取り戻そうと、自己分析系の本を買って、目指す業界を決めようとしていました。
そして、
友達からあなたの長所と短所を聞いてみよう
これまででどんな挫折を味わったか書こう
こどものときに夢中になってやったのはなに?
なんてことを深堀りしていった記憶がありますが、分析を重ねてみても、これだ! っていう適職が出てこない。
そんな悩める私に、
「好きなことを仕事にすればいいんだよ」
って言う人もいたり、
「好きなことは余暇にやるのが一番だよ」
って言う人もいたり。
いろんなことを言われましたが、そもそも「好きなこと」がわからない私。。。
幸いにも、この本の主人公たちは自分の「好き」なことがわかっていて、何よりすごいのは、その「好き」を仕事にしてみたこと。
ただ、理想的だったはずの働き方が、どんどんと現実に侵され、苦悩に直面していきます。
「好きなことを仕事にしているはずなのに」、ね。
さて、ここから二人はどうするか?
文通を仕事にするだけあって、言葉を武器にできる主人公たち。心の中に潜む葛藤や悩みを素直な言葉で言語化し、行動に移していきます。この言葉のやり取りが本当に気持ちいい。
そして、小説のベースである「文通屋」というビジネスも、クラウドファンディングをはじめ、プラットフォーム化等いろいろとアイデアが散りばめられていて、小説としての骨格を強固なものにしています。
「会社、燃えてないかな」と毎朝思うほど、会社勤めに疲れ果てていた主人公が、最後に出会えた心境とは?
春でも夏でも秋でも冬でも、この本を読んだその瞬間の最も心地よいだろう風が、ふわっと気持ちよくあなたのそばを横切るような、そんな素敵な読後感をぜひどうぞ。